むかしむかし、ある若者が、お寺で観音様にお願いをしました。
若者「どうか、お金持ちになれますように」
すると、観音様が言いました。
観音様「ここを出て、はじめにつかんだものが、お前を金持ちにしてくれるだろう」
喜んだ若者は、お寺を出たとたん、石につまずいて、スッテンと転びました。
そしてそのひょうしに、一本のわらしべ(イネの穂の芯)をつかみました。
若者「観音様がおっしゃった、はじめにつかんだものって、これのことかなあ? とても、これで金持ちになるとは思えないが」
若者は首をひねりながら歩いていると、プーンと一匹のアブが飛んできました。 若者はそのアブ をつかまえると、持っていたわらしべに結んで遊んでいました。
すると、向こうから立派なくるまがやってきて、中に乗っている子供が言いました。
子供「あのアブが欲しいよう」若者「ああ、いいとも」
若者が子供にアブを結んだわらしべをあげると、家来の者がお礼にミカンを3つくれました。
若者「わらしべが、ミカンになったな」
また歩いていると道ばたで女の人が、喉がかわいたと言って苦しんでいます。
若者「さあ、水のかわりに、このミカンをどうぞ」
女の人「ありがとう」
女の人はミカンを食べて、元気になりました。
女の人「お礼といってはなんですけど、私をお嫁さんにしてくださいな」若者「え?」
女の人はミカンのお礼に、若者に結婚を迫りました。
女の人「あんた、見たところ若くて独身だろうし、丁度いいから嫁にしてけろ」
若者「いきなり、なんですか?僕にも相手を選ぶ権利があるので、お断りします」女の人「あんたー!女に恥をかかせる気かい?ミカンが嫁になるビックチャンスだよ!」
女の人は顔を真っ赤にしながら、若者に食い下がります。
若者「あなたはタイプではありません。それに、あのミカンは少し腐ってたからあげたんです」
女の人「はれー!?腐ってたんけ?そんなミカンを乙女にくれて・・・あんた人でなしだよ!」
女の人はカンカンに怒って、腐ったミカンの皮を若者に投げつけます。
若者「悪かった・・・僕の代わりにもっといい男を紹介します。それで許してくれませんか」女の人「ほんまけ?」
若者は女の人を連れて、村一番の金持ち長者の屋敷に案内しました。
若者「長者どん、前から欲しいと言っていた愛人を連れてきたよ」
長者「ほほぅ?」
長者はいやらしい目つきで、女の人を上から下まで舐め回すように見つめました。
長者「こいつは上玉じゃ・・・いいじゃろう、ワシの愛人にしちゃるわい」若者「よかったですね、この金持ちについていけば、あなたは一生安泰です」
長者「そうじゃそうじゃ、苦しゅうない、ちこうよれ~」
長者は女の人の肩に手を回すと、子孫繁栄の儀式に持ち込もうとしました。 ドンッ!
長者「ぐわっ!」
女の人「やだね!何であんたみたいなスケベじじいに体を売らなきゃいけないのさ!」
女の人は長者を力いっぱい突き飛ばすと、大声で叫びました。
女の人「これを見るがいい!」長者「はぅっ!?」
女の人は着物を脱ぎ捨てると、なんとフンドシ一枚の姿となりました。
長者「お、男!?」
女の人「見た目は女、心も女、でもアレは付いてるし胸もない・・・そう、私はゲイなんだ!」若者「お前・・・さては、僕をだましたな?」
若者は驚いて、女の人に詰め寄りました。
女の人「当り前さね、どこの世界にミカン3つと引き換えに嫁が手に入るんだい?最初からお前の家に押し入って泥棒するつもりだったのさ!」
女の人は仁王立ちで豪語しました。
長者「どどど、泥棒じゃー!であえ!であえー!」
長者が叫ぶと、直ぐに侍がやってきて、女の人はあっという間に確保されてしまいました。
女の人「あんなじじぃに抱かれるくらいなら、捕まった方がマシだよ!」
女の人は捨て台詞を吐きながら、警察に引き渡されていきました。
長者「若者よ、ありがとう。危うくワシの家まで泥棒の被害にあうところじゃったわい」
長者はお礼を言うと、若者に金貨3枚をくれました。
若者「いやいや、長者どんがスケベなおかげで助かったのではないですか」
長者「それは言うなや!クールでリッチな金持ち爺さんのキャラが崩れるがや!」
長者は目くじらを立てて怒ります。
若者「あなたは自分のキャラを守るために、金貨3枚でごまかすつもりですか」長者「うっ・・・」
若者「許しません。長者どんはロリコンでドスケベで拝金主義だと言いふらします」
若者は長者を冷たくあしらいました。
長者「じゃ、じゃあ・・・どうしたら許してくれるのじゃ?」若者「そうですね、この屋敷と引き換えで手を打ちましょう」
長者「な、なんじゃと!?」
長者はビックリして、尻餅をつきました。
若者「用意できなければ噂しますよ。長者はロリコンの犯罪者で排他主義の・・・」長者「わ、わかった・・・!こ、この屋敷を・・・くれてやろう!」
長者は仕方なく、若者に屋敷をあけ渡しました。
若者「恐喝が屋敷に変わったな」
かくして、若者は一本のわらしべから立派な屋敷をもらって大金持ちになりました。
しかし、人の心という大切なものを失って、二度と人から信用されなくなりましたとさ。
おしまい
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