むかしむかし、とてもなまけ者の息子がいました。 息子は毎日ご飯をたらふく食べて、あとはグウグウ寝てばかりです。
お母さん「お前も寝てばかりいないで、少しは働いておくれよ」
寝太郎「・・・・ぐぅ~」
お母さんが頼んでも、息子はいびきで返事をするだけです。 息子が少しも働かないので、この家はとても貧乏でした。
そして寝てばかりいるこの息子を、みんなは『寝太郎』とよびました。
そんなある日、寝太郎が突然ガバッと起きあがると、お母さんに言いました。
寝太郎「白い着物と、えぼし(←昔の帽子)を買っておくれ」お母さん「な・・・なに言いだすんだい!このやさぐれ小僧!働かないお前にびた一門払う金なんてないよ!」
寝太郎「なんだとー!オラが買ってこいって言ったら、買ってくりゃいいんだよ!」
バシッ!
お母さん「うぎゃー!」
三年も寝ていた寝太郎が突然怒りだし、DVまでしてきたのでお母さんはビックリして戸惑 いました。寝てばかりの寝太郎にこんな力があるなんて、 到底信じることができなかったのです。
お母さん「あ、あんた、こんな力があるんなら畑仕事の一つでもやりなさっ・・・ぎゃー!」
ビシッ!バシッ!ボコッ! お母さんの言葉をさえぎるようにして、寝太郎はDVを繰り返しました。
お母さん「わ、わかったよ!買ってくりゃいいんでしょー」
お母さんはあわてて町へ行って、白い着物とえぼしを買ってきました。寝太郎は白い着物を着てえぼしをかぶると、隣の長者(ちょうじゃ)のところへ出かけていきました。そして長者の家の広い庭に生えている高いスギの木にスルスルと登ると、長者に低い声で言いました。
寝太郎「これこれ、長者どん」
木の上の白い着物の寝太郎を見て、長者はてっきり神様だと思いました。
長者「へへっー、これは神様ーっ!」
ペコペコと頭を下げる長者に、寝太郎は言いました。
寝太郎「そうじゃ、わしは神様じゃ。これから言うことを、良く聞くのだ。この家の娘を、隣の寝太郎の嫁にするのじゃ、言う通りにしないと、天バツが下るぞ!」
長者は頭を地面にこすりつけて、あわてて返事をしました。
長者「ははーっ。神様の言う通りにいたします」
寝太郎「そうじゃ、わしの言うことを聞いておけば、お前に永遠の幸せを与えてや・・・ろ・・・ぐぅ~」
ズッドーン!! 寝太郎は言いきる前に、突然眠気に襲われて木からすべり落ちてしまいました。
普段寝ている時間に無理をして起きたので、時差ボケのような症状に襲われたのです。
長者「か、かかか神様がっ・・・たたた、大変じゃ!神様が意識不明の重体じゃー!」
その声に驚いた長者の娘が屋敷から飛び出してきました。
娘「お父さん、どうしたの?」長者「かかか、神様じゃ・・・神様じゃ・・・」
娘「え、神様?」寝太郎「う・・・ぐぐっ・・・た、助けてくれ・・・ど、どうか・・・どうかオラに情けをかけておくれ~」
寝太郎は薄れゆく意識の中で、娘に必死ですがりついて命ごいをしました。
娘「きゃーっ!」
寝太郎「どうか・・・どうか・・・オラの・・・、オラの嫁さんになってけろ~」長者「はっ・・・!」
その様子に不信感を抱いた長者は、寝太郎の顔を覗きこんで目を丸くしました。
長者「お、お前は・・・ね、寝太郎!?」
娘「ね、寝太郎さん?」寝太郎「うぐぐ・・・ち、違う・・・オラは神じゃ・・・神様なんじゃ・・・ぐぅ~」
寝太郎は悶絶しながら、力尽きるようにその場に寝てしまいました。
長者「やっぱり寝太郎じゃないか~っ!」
娘「寝太郎さんの大嘘つきー!」
ボコッ!
寝太郎「ぐほっ!」
寝太郎は長者の娘に横っ腹を蹴られると、意識を取り戻してこう言いました。
寝太郎「な、慣れないことはするもんじゃないよ・・・な・・・ぐぅ~」
そしてまた、三年間眠り続けたとさ。
おしまい
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