北風と太陽が、どちらが強いかで言い争っていました。議論ばかりしていても決まらないので、力だめしをして、
旅人の服を脱がせた方が勝ちと決めよう、ということになりました。
まずはじめに北風がやりました。北風は思いきり強くビューッ!
と、吹きつけました。旅人は震えあがって、服をしっかり押さえました。
そこで北風は、一段と力を入れて、
ビュビューッ!と、吹きつけました。すると旅人は、
旅人「うーっ、寒い!これはたまらん。もう1枚着よう」
と、いままで着ていた服の上に、もう1枚かさねて着てしまいました。
がっかりした北風は、「君にまかせるよ」と、太陽にいいました。
太陽ははじめに、ぽかぽかと暖かく照らしました。そして、旅人がさっき1枚よけいに着た上着を脱ぐのを見ると、
今度はもっと暑い、強い日差しをおくりました。ジリジリと照りつける暑さに、
旅人はたまらなくなって、服を全部脱ぎすてると、近くの川へ水浴びにいきました。それを見ていた北風はプライドをひどく傷つけられ、腹いせにこう言いました。
北風「もう一度、旅人の服を着せた方を、真のチャンピオンとしよう」
太陽「なに?既に勝負は決まってるじゃないか、無駄な争いはやめろ」北風「う、うるさいっ!」
逆上した北風は、巨大な低気圧に姿を変えると嵐を呼び起こしました。
ゴロゴロ・・・ゴロロ・・・辺りに雷鳴がとどろき、豪雨が降り注ぎます。
旅人「わー、すごい雨と雷だ、早く岸にあがらないと!」
ビックリした旅人は岸に上がり、服を全部着ると、その場を立ち去ろうしました。
北風「グワハハハ!最後は実力行使がものをいうのだ、この世は金よ、そして力よ!」
北風は訳の分からないことを口走りながら、太陽をにらんで勝ち誇りました。
太陽「まだだ、まだ終わってないぞ!」今度は太陽が巨大な高気圧を呼び寄せると、嵐の中に突っ込んでいきました。
北風「や、やめろぉーーーっ!」
バチバチバチッ!高気圧と低気圧は空中で激しくぶつかり合い、火花を散らしました。
冷たい空気と暖かい空気が急激に接近したことで、上昇気流が発生して竜巻になります。
ゴォォォォー!!竜巻は、辺りを蹴散らしながら凄まじい勢いで旅人に向かっていきます。
太陽「わははは!もう一度旅人の服を脱ぎ散らかしてくれるわー!」
旅人「う、うわぁー!ま、巻き込まれる~~!」
旅人はあっという間に竜巻に巻き込まれると、衣服を引き剥されながら舞い上がります。そして生まれたままの姿になると、天高く放り上げられてしまいました。
太陽「そら見ろ、旅人はスッポンポンだ!勝負は私の勝ちだ!わははっ!」
高笑いしながら、ギラギラと体を輝かせる太陽。
北風「お前、そこまでして・・・人を、人を殺してまで勝ちたいのか・・・?」太陽「なぬ?嵐を作って旅人を危険にさらしたお前に言われたくないわっ!」
北風「俺は・・・俺の心はそこまで腐っちゃいない!」
北風は大地へ落下していく旅人を見つけると、猛スピードで突っ込んでいきました。
北風「あがれーっ!!」
旅人が大地にぶつかる寸前、北風は旅人に体当たりして川に吹き飛ばしました。
バシャーンッ!衝撃のショックを水面に吸収されたことで、旅人は一命を取りとめました。
しかし、意識不明まま川底に沈んでいきます。
北風「俺の役目はここまでだ・・・次は太陽、お前の番だぞ!」太陽「・・・・・・」
北風「いいのか?勝負のために人を犠牲にしてもいいのかって聞いてんだよ!」太陽「くっ・・・」
その言葉に心を揺さぶられる太陽。
太陽「くそっ・・・やってやるよ!」
太陽はエネルギーを最大まで上げると、ジワジワと川の水を蒸発させていきました。
しかし、川の水を全て蒸発させるほどのパワーをどうしても出せません。その間にも、旅人の命は尽き果てようとしています。
北風「旅人の命は貴様にかかってるんだ!このまま終わってもいいのか!」
太陽「ぐぉぉおおおっ!」
太陽の体は真っ赤に腫れ上がり、血管をピクつかせながら高熱を発します。それでも、川の水を全て蒸発させることはできません。
太陽「くそったれー!」
なんと太陽は、昼の12時だというのに沈み始めました。しかも西の空でなく、旅人のいる川に向かって沈み始めたのです。
太陽「はじけてまざれーーっ!!」
太陽が川に飛び込んだ瞬間、川の水は完全に蒸発しました。そして、川底に沈んでいる旅人も、息を吹き返して助かりました。
これ以来、太陽は二分の一まで質量が縮小され、地球温暖化も食い止めましたとさ。
おしまい
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