世界で最初の地震計は日本で作られた!
古くは秦の始皇帝の時代の中国には、地震の揺れで龍の口から落ちた鉄球がガマの口で音を立てるといった単純な仕組みの地震計もありますが、揺れの大きさを記録するための近代的な地震計が作られたのは、明治時代の日本でのこと。作ったのは鉱山技師としてイギリスから招かれていたジョン・ミルンです。
ほとんど地震のないイギリス育ちのミルンは、日本で経験した地震に大きな衝撃を受け、明治13年に日本地震学会を設立します。これは世界初の地震学会でもあるのですよ。明治28年にトネ夫人を伴ってイギリスに帰還するまでの間、ミルンは地震や鉱山学、地質学などの研究を続けます。そんな研究生活の中で明治25年(1892年)頃に完成させたのが「ミルン水平振子地震計」なのです。基本的な構造は、地震の揺れの動きを、宙に浮かせた振動子によって相対的に記録する、機械式地震計としての基本構造をほぼ満たすものです。ただし地震動を検出した後に揺れを減衰させる制振器を備えていなかったので、実用性についてはやや疑問が残ります。
関東大震災の揺れを記録した今村式地震計
ミルンが制作した地震計が元になって、大森式地震計、田中館式地震計、今村式三成分簡単地動計(今村式2倍地震計)などの地震計が次々に開発されます。なかでも今村式三成分簡単地動計は関東大震災の揺れを記録した地震計として有名です(P波はしっかり記録していますが、S波が到達したところで針がふり切れています)。今村式は大きな揺れを記録する地震計として制作されたものですが、それでも関東大震災のS波を完全に記録することはできませんでした。このことからも想像できる通り、地震計には大きな揺れを感知するものと、微細な揺れを記録するものなど、検知したい地震波のタイプに合わせたものが必要です。
現在では、防災科学技術研究所が全国に配置している強震観測網(KiK-net)や高感度地震観測網(Hi-net)が、大地震や地球の裏側からやってくる微弱な地震波などを日々正確に測定しています。地震観測や研究に不可欠なものに思える地震計ですが、わずが100年ほどの歴史しかないのは驚きです。しかも関東大震災の頃には完全には機能していなかったなんて、地球の長い営みに比べて、地震研究の歴史がいかに浅いものなのか考えさせられますね。
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