大きな勿来火力発電所と小さなわたし

iRyota25

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渋滞しがちな国道6号線バイパスを、小浜漁港入口の交差点で南東方向に向かう。ファッションホテルや資材置き場があったり、途中で舗装道路がでこぼこ道になったり、本当に海の方へ出られるのかと不安に思いながらも、県道239号線を走っていくと、小さな集落の先の下り坂の向こうに突如別世界が広がる。

広々とした砂浜の向こうには巨大な火力発電所。写真では迫力が伝わらないのが残念だが、とにかく大きい。雑木林に覆われた田舎道からこの景色が飛び出してきた時には、ほんとうにド肝を抜かれた。空に高くそびえる煙突も、煙突の高さの半分以上ありそうな建屋も圧倒的なスケール感。「勇姿」という言葉を思い浮かべたくらい。

ちなみに煙突のうち低い方の2本は赤白のツートンカラーに塗られているが、これは高さ60メートル超の建造物に適用される航空法上のルールなのだとか。明らかにもっと高いシルバーの煙突の方には、東京スカイツリーと同様、ところどころでフラッシュランプが光っていた。

赤白の煙突の方でも高さ60メートル超だと思って見てもらえば、この発電所の大きさが少し理解してもらえるだろうか。

この施設の名前は勿来(なこそ)発電所。東北電力と東京電力、地元炭鉱会社の共同出資による常磐共同火力株式会社が建設した発電所だ。現在稼働している発電設備の主力といえる8号機、9号機はそれぞれ出力60万kW。原発災害を引き起こした福島第一原子力発電所の1号機(46万kW)を上回り、2号機~5号機の1基あたりの出力(78.4万kW)に迫る。どうりで発電所全体が巨大なわけだ。

発電所前の広大な砂浜の内側では、津波で被害を受けた防潮堤を再建する工事が進められていた。発電所の建物が巨大すぎるせいで、こちらもスケール感が混乱してしまいそうだが、作業している重機や車両がミニチュアのように見えてしまうくらいに防潮堤もデカい。いわき市の計画によると防潮堤の内側には防災緑地が造られることになっていて、さらに内陸側には防災に考慮した住宅地の造成工事が進められているという。

写真には撮っていないが、発電所の北隣の県道沿いには墓地があって、ずっと以前からここが生活の場だったことを物語っていた。

常磐共同火力のホームページによると、発電所の南側には創立50周年記念に河津桜50本が植えられているそうだ。早咲きで知られる河津桜は、今年もすでに何輪かが花を開かせているとか。

 河津桜情報を更新しました(画像クリックで拡大表示)|常磐共同火力株式会社
www.joban-power.co.jp  

田舎道から突然現れる巨大な発電所。その発電所が事故原発にも匹敵する出力を持っているという情報。津波にのみ込まれた土地を再生するために進められている大規模な工事。工事現場の片隅に取り残された墓地。そして川津桜の開花。

どう整理したらいいのか分からなくなる。

ひとつ確かなのは、そのいずれもが、人間の営みによるものであること。巨大な発電所は言うまでもなく人間が造ったものだし、そもそもこんな巨大な施設で造られる電気を使う人間がいるわけだし、宅地造成工事も墓所があるのも人間の営みそのものだ。川津桜も人が植えなければ原産地の伊豆半島からこの土地に移ってくることはなかったろう。

あまりにも原発事故の被害が甚大だったせいで意識されにくくなってはいるが、巨大な建造物そのものが自然環境に対する負荷であることも忘れてはならないだろう。

大きかったり、切実だったり、ささやかだけど大切なことだったり、忘れがちになってしまっていたり…。ここで起きていることそのもののスケール感が混乱しているように感じるばかり。人間って何なんだろう。この景色を前に何を語ればいいのかよく分からなくなった。ただ、この混乱にはきっと何か意味があるという確信だけが残った。理解するために解きほぐしていかなければならない大切な何かがあると。

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