流されるたびに再生されてきた松日橋

iRyota25

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陸前高田から太平洋へ注ぐ気仙川。鮎釣りで賑わうこの川の上流に、なんとも絵になる松日橋がある。

松日橋は見るからに古風な木造の橋。それも、枝のような細い橋脚で支えられた、本当に人が渡ることができるのだろうかと不安になるような橋だ。

実際に橋に乗って渡ってみると、思いのほかしっかりしている。吊り橋のようにゆらゆら揺れることもないから、手すりに掴まることなく最後まで渡り通すことができた。

橋のたもとに掲げられた案内板によると、この橋は元禄時代にはすでにこの場所に掛けられていて、集落と川向の水田をつなぐ橋として利用されていたとのこと。橋の特徴としてとくに重要なのは、クルミやクリの太い枝が二股になっている部分を使った橋脚「ザマザ」で、橋板の重みとザマザに掛かる水圧とで普段の流れでは水に流されることはない。しかし、洪水の際に流れが橋板に達すると、橋板は浮き上がり、ザマザは流れに逆らうことなく流される。浮き上がった橋板は両岸からそれぞれ半分までがワイヤーなどで繋がれているため、真ん中から2つに分かれて両岸から流出することはない。

水圧を受けて川底に固定されることで橋を支えるザマザ。
水圧を受けて川底に固定されることで橋を支えるザマザ。
ザマザと橋板の取り付け部分
ザマザと橋板の取り付け部分
橋板は真ん中からそれぞれ両岸にワイヤーで固定されている
橋板は真ん中からそれぞれ両岸にワイヤーで固定されている

つまり、洪水の際に橋がなくなってしまうことで、上流から流されてきた物が橋に引っかかって水を堰き止め、周辺に洪水の被害を拡大することを防いでいるわけだ。

自然と生きていくための絶妙な知恵の結晶。そう思うと、少し危うげな存在にも思えた松日橋が用の美の粹に見えてくる。

洪水がおさまった後には、集落の人たちが集まり、流されなかった橋板と新たなザマザとで橋を新たに架け替える。集落の人たちが総出で橋の修復を行うということだ。

今日では松日橋は必ずしも生活に不可欠な橋ではないが、地域の人たちのつながりを持てる共同作業の場として、自治体の「みんなでできる町づくり事業」にも採択され、橋を守る伝統が受け継がれている。それは、自然の脅威からの復活を集落の人々みんなが支えてきた歴史がこの土地に息づいていることを意味している。

観光名所になっても不思議ではないほどいい雰囲気の松日橋。この橋はその美しさや風情ばかりでなく、流されたら造り直すという伝統によって今日に伝えられてきた大切な生き様の遺産でもあるのだ。

 【東北の風の道】まつり・つどい・いのり(第2号)
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