【熊本地震点景】なぜ箱ティッシュがあっという間になくなるの?

iRyota25

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熊本地震の最初の大きな地震から約4週間が経過した。5月5日のこどもの日には、震災後ずっと封印されてきた「くまモン」が西原村の避難所で活動を再開したと伝えられた。被災した町では少しずつ復旧の歩みが進んでいる。しかし、テレビなどのマスコミが伝える現状は、本当に被災地の実状を反映しているのか。少なからず疑問に感じる。

最初の地震から9日目、益城町の仮設トイレの外壁で出会った手書きの「くまモン」。こどもも大人も元気になれるくまモンだが、震災直後の活躍の場は限られていた
最初の地震から9日目、益城町の仮設トイレの外壁で出会った手書きの「くまモン」。こどもも大人も元気になれるくまモンだが、震災直後の活躍の場は限られていた

県を代表する人気キャラがどうして地震から20日も封印されていたのかも気になるところだ。こんな時だからこそ、被災した人たちを元気づける活動をしても良かったのではないかとも思う。

最初の地震から6日後から10日後まで現地で見聞きしたことを中心に伝えたい。日本中で大きな災害が発生した後、ほぼ1週間後にどんな状況になるのかの参考になるはずだ。

[熊本大地震]地元の消防団員たちは寝ずに頑張って荷下ろし

真っ暗な熊本の大地。月の明かりよりも明るく元気な声が響いていたのが、益城町の緊急救援物資の仮集積場。最初の地震の翌日早朝から夜中まで荷下ろしの作業をずっと続けてきた地元の若い消防隊員たちが、自らの元気を鼓舞するように叫び声を上げる。「バッチコーイ」「ヨッシャコーイ」「オラオラ、イックゾーィ」
何日間も徹夜に近い状況で肉体労働を続けてきた彼らの元気はカラ元気でしかない。それでも、カラであろうがなんであろうが元気を出さなければ続けられないし、不意の事故を起こさぬためにも、体を動かす作業の間だけは大きな声をあげなきゃならん。だから「いっくぞー」「それ来た」「よっしゃこりゃ軽いぞ」「重たいぞ、気をつけろ」と荷物をやり取りするラインにたくさんの声が連なって行く。声は気持ち。届けられた物資をしっかり受け取って、必要とされる場所へと届けたい。そんな気持ちそのものだった。

何がどんだけ要るんかわからん

とある避難所となっている小学校。その体育館には救援物資が山のように積み上げられていてた。ボランティアとして入って最初に感じたのは、「ありがたい。これだけあれば」ということ。でも、山のような段ボール箱で届けられている品物と、避難されている人たちのニーズは別物だった。

最初の地震からちょうど1週間目のことだ。

避難されている人たちに対して、集積してる体育館で直接物資を提供すると、あれもこれもと持って行かれて、本当に必要な人に必要な物が行き渡らない事態が問題になっていた。体育館の床の真ん中当たりがでろ~んと下がっているような、そんな危険な場所でのことだ。体育館で物資の受け入れや仕分けを担当されていた地元小学校のPTAの人たちを中心とする地元のボランティアさんたちは、本当に必要な人に必要な物を届けるために、汎用性の高い物と個別対応が必要な物を分けていた。何でもかんでも持って行かれないため「物資の見えない化」に腐心されていた。

見えない化なんて言っても理解されにくいだろうと思う。

日用品が何もない状況で避難されている人たちには根深い不安がある。だから今すぐ自分や家族で使わないかもしれなくても、用立ちそうな物は確保しておきたいという気持ちが働く。それが悪いということではなく、それゆえに、本当に必要としている人に必要な物が届かなくなることが問題なのだ。だからこそ、「これはご自由にお持ちください。それ以外で必要な物があったらお声をかけて下さいね」という対応になるわけだ。

益城町でボランティアセンターが開設された初日にお手伝いに入った小学校の避難所では、物資ができるだけ公平に届けられるための方法として、学校入口近くの支援本部の脇に支援物資を持って行ってもらうための場所を設置していた。

届けられた物資が集積される場所とは別に、配布のためのステーションが開設されていたわけだ。

そこにやってくるのはほとんどがおばあちゃんたちで、その方々からのニーズ聴取がボランティアの主要な仕事のひとつになった。

要るもんなんですか、ティッシュ??

仮の物資配布ステーションからポケットティッシュを何個も持って行こうとするおばあちゃんに、箱ティッシュの方がいいんじゃないのと聞いたら、「だってここにはないんだもの」

体育館まで走って5個パックが20くらい入った段ボール箱を持って帰ると、あっという間に人だかりができる。5個パックまるごとはいらんだろうと思って別のボランティさんに1箱ずつ配るようにお願いしたが、みなさん3箱4箱ずつもっていく。

物資が比較的足りていると言われていたこの避難所でさえ、ティッシュに対するニーズが潜在的にはこれほど大きかったこと、そしてさらには、どれだけ長引くか分からない不安があることを教えられた。

ティッシュはたしかにいろいろと使いでのある日用品だ。しかし、たかがティッシュともいえる。震災のような特別な時でなければ、ドラッグストアやスーパーの値引き商品の目玉だったり、ガソリンスタンドのノベルティとしてサービスで貰えるくらい身近な消耗品。そんなティッシュに人が殺到する。

ティッシュ以外にもっと大切な物、どれだけ足りてるのだろう。

私たち、熊本や大分の被災地のニュース映像で見ただけでは、分からないことがいっぱいあるということを考えなければならないと思うのです。引き続きお伝えします。

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