熊本の大地震で被災した地域では住宅などの建物の入口に、緑・黄・赤の紙が張り出されている。
[熊本大地震]応急危険度判定の意味
紙の色によって書かれている文面は違っている。
赤は「危険」
◆この建築物に立ち入ることは危険です
◆立ち入る場合は専門家に相談し、応急措置を行った後にして下さい
応急危険度判定結果の文面
黄は「要注意」
◆この建築物に立ち入る場合は十分注意して下さい
◆応急的に補強する場合には専門家にご相談下さい
応急危険度判定結果の文面
緑は「調査済」
◆この建築物の被災程度は小さいと考えられます
◆建築物は使用可能です
応急危険度判定結果の文面
危険、要注意、とくれば緑は「安全」かと思いきや「調査済」。あくまでも調査時点では使用可能と判断されたということで、その後の余震などで危険度が増していることも考えなければならない。
応急危険度判定の用紙に、判定した日にちだけでなく時間まで、それも誤解を防ぐために午前午後まで書き込まれているのはそういうわけだ。
緑の紙の文面が「安全」ではなく「調査済」である意味をしっかり理解したい。
外見上は大きな被害に見えないのに「赤」
著しく被害が大きかった益城町を歩くと、完全に潰れたり倒れたりした建物ばかりではなく、外見上はそれほど大きな被害に見えないのに赤い紙が貼られた建物を数多く見かける。写真の住宅は屋根瓦が落ち、敷地周囲のブロック塀が崩壊した程度にしか見えなかったが、応急判定は赤だった。外側からはわからない構造に重大な被害が及んでいるのかもしれない。
古い木造住宅の被害が大きかったとの報道もあったが、築年数の古い家屋だけでなく、建てたばかりの新築で、かつ外見上は傾きも亀裂もないのに赤という住居も多い。新築の家に住めなくなってしまった方の気持ちを考えると辛い。
※ 熊本地震の被害を伝えるため、個人の住宅の写真を掲載させていただきました
応急危険度判定は罹災証明のための調査ではない
応急危険度判定は、余震などによる二次災害を防止するために、都道府県に登録された応急危険度判定士(講習を受けて建築士等の民間の人たち)によるボランティア的活動だ。赤黄緑の紙は、余震による倒壊や壁や瓦などの崩落で、住民のみならず通行人に被害が及ばないように、建物の危険性について情報提供するのが目的。
以下、応急危険度判定協議会のWebから抜粋して引用する。
○応急危険度判定とは
応急危険度判定は、大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。
その判定結果は、建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。
また、これらの判定は建築の専門家が個々の建築物を直接見て回るため、被災建築物に対する不安を抱いている被災者の精神的安定にもつながるといわれています。
○応急危険度判定士とは
応急危険度判定は、市町村が地震発生後の様々な応急対策の一つとして行うべきものですが、阪神・淡路大震災のような大規模災害の場合には、判定を必要とする建築物の量的な問題や被災地域の広域性から行政職員だけでは対応が難しいと考えられます。
そこで、ボランティアとして協力していただける民間の建築士等の方々に、応急危険度判定に関する講習を受講していただくことなどにより、「応急危険度判定士」として都道府県が養成、登録を行っています。
(※ (独)都市再生機構及び(社)高層住宅管理業協会においては、判定士の養成、登録を行っています。)
平成27年3月末現在の全国の応急危険度判定士数 106,123名
○応急危険度判定の性格と役割
応急危険度判定は、行政が民間判定士のボランティアによる協力のもとに、地震により被災した建築物による二次的災害を防止する目的で実施されるものです。
罹災証明の為の調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではありません。
また、「応急」の語が示す意味には、地震直後の短期間に多くの建物の判定を行わなければならない「緊急性」と、限られた調査項目で判定を行うことから、後に十分な時間をかけて被害調査を行った場合には、判定結果が異なる場合もあるという「暫定性」の二つの側面があるということも忘れてはなりません。
以上のような応急危険度判定の性格をよく理解し、平常時から住民等に対して周知を行うとともに、いざという時の体制整備を進めることで、応急危険度判定が震災直後の住民の安全を確保するという大切な役割を果たすこととなります。
※ 西日本新聞が4月29日の紙面で、応急危険度判定と罹災証明の指標となる被害認定調査の違いについて報じている。
最終更新: