2月13日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
使用済み燃料プールの冷却システムが自動停止。プール内に燃料はないとの説明はあるものの、報告の最後まで読まなければ「4号機でのトラブル」だったことが分からないお粗末さ
※2月9日午前 6時25分頃、使用済燃料プール代替冷却系(SFP)の漏えいを示す警報※1が発生し、ポンプが自動停止。現場を確認し、同日午前6時39分に漏えい等の異常が無いことを確認。なお、使用済燃料プール内には燃料は保管されていない。その後の現場調査においても、SFP系に漏えい等の異常は確認されていない。
*1:SFP系の入口/出口流量の差が一定以上になった場合、系統漏えいの可能性があることから警報を発生させるとともに、一次系ポンプを自動停止して系統を隔離させる。
当該警報が発生した原因を調査するため、SFP系のトレンドデータを確認したところ、電気品点検に伴って計装配管の凍結防止ヒーター用電源を「切」にした際に、SFP系出口流量の指示が低下していることを確認した。
計装配管の凍結防止ヒーター用電源「切」とSFP系出口流量の指示低下との因果関係については、計装配管内に空気が残留していた状況において、凍結防止ヒーター用電源を「切」にしたことで、当該計装配管内に温度変化が生じ、出口流量計(差圧伝送器)に影響※2を与えたため、SFP出口流量の指示が低下した可能性が高いと考えております。
*2:温度変化による水と空気の膨張率の差により、差圧伝送器の高圧側と低圧側の計装配管で一時的な差圧変動が発生したものと推測した。
4号機SFP系については、当該計装配管内の空気抜きを実施した上で、2月13日4時28分よりSFP一次系ポンプを起動して確認運転を行っていたが、運転状態に異常はなく、入口/出口流量も安定していることから、継続して運転を行うことと致した。なお、計装配管の凍結防止ヒーター用電源については、電気品点検が終了した後(2月9日)に電源を「入」にしている。
使用済燃料プール代替冷却系(SFP)とは、使用済み核燃料が崩壊熱によって熱暴走を起こさないように冷却するシステム。このポンプが自動停止するのは極めて重大なトラブルで、「事故・トラブル等発生時の通報基準・公表方法(2016年2月1日更新)」にも「発生確認後30分以内を目安に通報」と定められ、一斉メール等で公表されることになっている。しかし、今回のトラブルは「報道各位一斉メール」での通報は行われていない上、発生から4日以上経過してからの発表となった。
非常に文字が小さくて読みづらい「事故・トラブル等発生時の通報基準・公表方法」をよく読んでみると、使用済燃料プール代替冷却系(SFP)のポンプ等のトラブルが通報対象となる条件としてこんな記載があった。「ただし4号機は除く」。
この発表の問題点のひとつは、たとえ事故・トラブル等発生時の通報基準・公表方法から除外されている号機でのトラブルだったとしても、まず何号機で起きたのかを明示すべきということだ。
また、今回のトラブルの原因について「可能性が高いと考えております」「一時的な差圧変動が発生したものと推測した」と現時点で確定できていないことも指摘したい。4号機の使用済み燃料プールからはすでに燃料の運び出しが完了しているが、他の号機・共用プールには大量の使用済み・使用前核燃料が保管されている。同様なトラブルが他の号機や共用プールで発生しないことをしっかり確認してほしい。
雑固体廃棄物焼却設備のホット試験で停止操作。冷却器から水が滴下
※雑固体廃棄物焼却設備については、2月8日より焼却試験を行っていたが、A系排ガス冷却器の点検口から水が滴下していることを確認したことから、2月13日12時38分に停止操作を行った。なお、モニタリングポスト等の指示値については、有意な変動は確認されていない。
ホット試験とは実際の汚染廃棄物をプラントで処理する試験のこと。具体的には、タイベック(保護衣)、下着類、ゴム手袋類などの装備品、ウエスや木、梱包材や紙等の工事廃材、廃油や使用済み樹脂、伐採木などを燃やしていると考えられる。
燃焼に用いられているロータリーキルンという焼却炉は、じっくり時間をかけて燃やすことで完全燃焼させられるのが特徴。排ガス冷却器は炉で燃やした焼却灰や燃焼ガスをフィルターなどに掛ける前に冷却するプロセスと見られる。実際にどのような状況なのか、詳しい情報は発表されていない。雑固体廃棄物焼却設備のホット試験は11月時点の予定からは若干ずれこんで2月8日から始まっている。スケジュール表によると運用開始が2月末・3月初との予定。
1号機 原子炉格納容器ガス管理設備の制御サーバ多重化等の改造工事、2月12日午後2時41分作業を終了。当該設備の改造工事に伴う停止作業は終了か
・1号機使用済燃料プール(以下、「SFP」という。)代替冷却系については、当該系統の弁点検のため、2月5日午後2時37分停止(2月17日午後6時までの約292時間停止予定)。冷却停止時のSFP水温度は、11.1℃であり、冷却停止時間におけるSFP水温度上昇率は0.055℃/hで、停止中のSFP水温度上昇は最大で約16.1℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、SFP水温度の管理上問題ない。
(中略)
2月11日午前9時30分より同項を適用して当該作業を開始。午後3時3分に同日分の作業が終了。当該設備の動作確認において異常がないこと、また放射線モニタの指示値に有意な変動がないことから、午後5時23分に同項の適用を解除。なお、当該設備の停止期間における関連監視パラメータに異常なし。
2月12日午前9時43分より同項を適用して当該作業を開始。(ここまで既出)
午後2時41分に同日分の作業が終了。当該設備の動作確認において異常がないこと、また放射線モニタの指示値に有意な変動がないことから、午後4時55分に同項の適用を解除。なお、 当該設備の停止期間における関連監視パラメータに異常なし。なお、当該設備の改造工事に伴う停止作業については終了。
その他の項目に新規事項の記載なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム停止中
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
・1号機使用済燃料プール(以下、「SFP」という。)代替冷却系については、当該系統の弁点検のため、2月5日午後2時37分停止(2月17日午後6時までの約292時間停止予定)。冷却停止時のSFP水温度は、11.1℃であり、冷却停止時間におけるSFP水温度上昇率は0.055℃/hで、停止中のSFP水温度上昇は最大で約16.1℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、SFP水温度の管理上問題ない。
2~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
◎日報に新規事項の記載なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備の状況 セシウム吸着装置を「運転」
・セシウム吸着装置運転中
前日に続きセシウム吸着装置の運転が新規事項としてアンダーライン表記された。前日分の「福島第一原子力発電所の状況」に、セシウム吸着装置、第二セシウム吸着装置(サリー)の運転については、「フィルタの洗浄、ベッセル交換を適宜実施」とある。適宜交換作業による中断を経て再稼働したのか、記載ミスなのか分からない。
その他の項目に新規事項の記載なし
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)運転中
・増設多核種除去設備停止中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクDから海洋排水を実施。排出量は678トン
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクDの分析結果[採取日2月7日]については、運用目標値を満足していることを確認。2月12日午前9時57分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、同日午前10時12分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、午後2時42分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は678m3。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクEからの排水準備が進む
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクEの分析結果[採取日2月8日]については、運用目標値を満足していることを確認。
※ 一時貯水タンクは浄化後のサブドレン・地下水ドレン水を海洋排出前に一時貯水するもので「サンプルタンク」とも呼ばれる。
サブドレン・地下水ドレン 集水タンクの分析結果(2月5日採取分)
※ 集水タンクはサブドレン・地下水ドレンから汲み上げた水を浄化施設に送る前に貯えておくタンクのこと。
地下水バイパス
◎日報に新規事項の記載なし
※ 9日海洋排出分の記事が記載された状態
地下水バイパス揚水井 2月11日サンプル採取の分析結果は、地下水揚水井No.9,10,11でトリチウムが高いレベルのまま
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
2月12日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
◆H4エリア
◎日報に新規事項の記載なし
H4エリア周辺地下水【E-1】全ベータ濃度(単位:Bq/L)
採取日 2/4 2/5 2/6 2/7 2/8 2/9 2/10 2/11
E-1 7,600 8,100 6,900 7,600 8,900 8,100 8,000 7,100
浪江雨量(mm)0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
◆H6エリア
◎日報に新規事項の記載なし
H6エリア周辺地下水【G-1】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 2/4 2/5 2/6 2/7 2/8 2/9 2/10 2/11
G-1 ND(110) 150 180 150 120 150 150 130
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
H6エリア周辺地下水【G-2】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 2/4 2/5 2/6 2/7 2/8 2/9 2/10 2/11
G-2 1,300 1,900 300 280 260 270 170 250
浪江雨量(mm)0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
H6エリア周辺地下水【G-3】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 2/4 2/5 2/6 2/7 2/8 2/9 2/10 2/11
G-3 650 640 620 610 550 600 560 560
浪江雨量(mm) 0.0 0.0 1.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
NDは検出限界値未満、( )内に検出限界値を記載
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
地下貯水槽
◎日報に新規事項の記載なし
1~3号機放水路
◎日報に新規事項の記載なし
K排水路
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
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