迫り来る次の難問「汚染がれき保管」

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特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会(第1回)に関連して、事故原発構内のがれきや、汚染水処理によって発生する吸着塔や沈殿物などの保管や焼却、減容に関する資料が公開されている。いま原発では汚染水の問題が注目を集めているが、固体の廃棄物の処理や保管が、廃炉に向けて大きな課題となることが改めて明らかになった。

事故原発構内がれき等の汚染物質の分析

まずは事故原発構内の状況を知るため、「瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況」を見ていこう。

 瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
www.tepco.co.jp  
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日

この資料では固体の廃棄物として発生するがれき等を、フォールアウトの影響を受けたもの、水処理二次廃棄物、解体廃棄物に分けて調べている。フォールアウトとは原発の爆発などで放出・降下した放射性物質のこと。日本語では「死の灰」と呼ばれることもある。土壌やがれき、立木など、多くのものが汚染された。水処理二次廃棄物は、汚染水処理で発生するスラリーやスラッジ(泥状の沈殿物)、フィルターなど。「検出できない核種の評価が課題」と、今さらながら恐ろしいテーマが掲げられている。解体廃棄物は文字通り建屋などを解体した際に出る廃棄物。当然のことながら極めて高い濃度で汚染されている。

瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日

フォールアウトの影響は原発構内を20カ所に分けて、立木や落ち葉、土壌などを対象に測定されている。

瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日

セシウム-137もストロンチウム-90も、建屋周辺では極めて高い濃度だ。この資料で見る限り、建屋周辺以外、正門や関連企業の施設などが建設されている西側高台は、かなり低い結果となっている。しかし、タンクが立ち並ぶ「K」のエリアはストロンチウム-90の値が、1kgあたりに換算すると1,000ベクレルを超える高さだ。フォールアウトの他に高濃度汚染水が漏洩した影響も考えられるかもしれない。

立木の枝葉より落ち葉や土壌の方が濃度が高いというのは、原発事故で汚染された周辺地域の農地や山林などで確認されているのと同様の結果。立木から地表へ移行した放射性物質がその後どのように動くのか、先進的な分析・研究を期待したい。

また、以前から懸念されていたプルトニウムの放出に関しては、あっさりと認定。Dエリアの落ち葉から検出されたものが事故によるものだと推定されている。しかし、原子炉内にしかないはずのプルトニウムがなぜ建屋外に存在するのか、その理由についての考察は見られなかった。

汚染水の水処理によって発生する廃棄物は、処理を行うほぼすべての施設から排出されるだけに、膨大な量になる。この廃棄物は汚染水に含まれる放射性核種が凝縮されているため濃度も高い。資料に掲載された数値を1kgあたりに換算すると、10万ベクレルオーダー(セシウム-137など)から100億ベクレルオーダー(ストロンチウム-90)ととてつもない数値だ。

しかも施設によって処理する核種が異なるため、保管などの対応も複雑になることが予想される。

瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日

建屋などの解体によって発生する廃棄物は、今後どんどん増加していく。東京電力ではコンクリートがれきなどの一部、汚染度が低いものは再利用も検討しているが、線量管理を厳格に行わなければ、二次被曝、三次被曝が継続するリスクもある。

放射線量の高いがれきは当然、しっかりした管理が求められる。固体廃棄物を保管するためには、膨大な面積の敷地が必要とされるだろう。ただでさけ汚染水等のタンクが林立する原発敷地内では、用地確保も難しいかもしれない。しかし、だからといって減容を追求するあまり、再利用するがれきの線量管理が疎かになることは許されない。

がれき等はどのように分別・保管されるのか

続いて、がれき等の管理がどのように行われているのか、「瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況」を中心に見てみよう。

 瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
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瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

がれきも水処理によって発生する廃棄物も、「一時保管」→「保管」の流れで貯蔵されることになる。ただしいずれも本格的な保管はまだ行われていない。がれきの場合は、発生場所から一時保管場所へ運ぶ前に、仮設集積される場合がある。また、先にも触れたがコンクリートなどのがれきは再利用されることもあり、こちらはすでに一部で実施されている。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

がれきはその発生元により「がれき」と「伐採木」、「使用済み保護衣等」に分けられる。がれきは線量によってエリアと保管形態を分けて管理される。

ここで注目したいのは、ひとつ前の画像で示されていた「仮設集積」だ。一時保管施設に運び込まれる前のがれきに対しては、保管のための分別が行われているのかどうか。わざわざ仮設集積と別記していることから、少なくとも一時保管施設よりはラフな形で保管されているものと考えられる。

仮設集積されたがれきは今後、土壌と土壌以外の物、コンクリートと鉄筋など、物の種類による分別と合わせて線量による分別が行われることになるのだろ。

事故原発構内で発生する固体の廃棄物は汚染されているので、通常のがれき処理のようにまとめて粉砕したり焼却することはできない。極めて面倒な作業が今後待ち構えていると言っていい。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

がれきの一時保管エリアは原発敷地内の広い範囲に点在している。10月31日の時点では、まだ保管の容量には余裕があるように見える。続いて下は仮設集積場所と保管量を示す資料。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

集積されている量は、一時保管にくらべてはるかに少ないが、原発敷地内のさまざまなな場所に点在していることがわかる。一時保管エリアに運び出すことができず、とりあえず集積しているという形だろうか。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

次に保管形態と分別について見てみよう。保管形態は線量に応じて分別されていたが、この分類ではがれきの種類別に表示されている。「被曝を考慮して可能な範囲で」という但し書きが恐ろしい。

この分類から現場での作業を推測してみる。まずがれき表面の空間線量を測定し、毎時0.1ミリシーベルト以下(100マイクロシーベルト)であれば、金属やコンクリート、土砂、可燃物などに分別。0.1ミリシーベルトから1ミリシーベルトまでのものは、「土砂以外は混載」とあるので、実質的にはスケルトン(ふるい状のバケット)を装着した重機等で土砂だけを分けるといった作業になるのだろう。1ミリシーベルトから10ミリシーベルト(100分の1シーベルト)のがれきは、ほぼ分別は行わないのではないだろうか。作業員の被曝限度が累積で100ミリシーベルトであることを考えると、1ミリシーベルトを超えるようながれきの人力による分別は現実的ではないと思われる。

がれきの一時保管エリアの状況

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

線量による分別でもっとも低いレベルの廃棄物。左上の写真ではトン袋(フレコンバック)に入れられたがれきが積み上げられている。内容物が何なのかは分からない。右上は重機にハサミ状のアタッチメントが着けられているように見えるので、この場所でコンクリートがれき等の破砕や鉄筋との分別が行われているのかもしれない。

説明文にある「バックグラウンド線量」とは、建屋や施設、地表等から放射されている線量。原発敷地内で特別な汚染源がなくても通常検出される空間線量と考えていい。そのレベルのがれきであれば、特別に保管する意味が薄いため、破砕して路盤材(道路等の基礎として、アスファルトやセメントの舗装の下に入れる砕石類)として再利用しているということ。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

0.1ミリシーベルトから1ミリシーベルトまでのがれき保管は様相が一変する。屋外集積は文字通り廃棄物を野積みしている状態だったが、ここでは飛散を防ぐため養生が施されている。進捗は示されていないが容器保管を進めるとも記されている。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

1ミリシーベルトから10ミリシーベルトのがれきは、金属製容器による保管が必須となる。それでも腐食による漏洩などの恐れもあるので、定期的な点検が不可欠だろう。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

毎時30ミリシーベルト以下のがれきは覆土式で一時保管される。仮設保管設備は屋根シートが破損する事故が発生しているため、覆土式が主流になるような書き方だ。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

覆土式は地面を掘り下げ、遮水シートやベントナイト(止水のための粘土)で遮水した上にがれきを保管。さらに保護シートや放射線を遮蔽するための土などを盛る構造になっている。当然のことながら、雨水等が汚染して流出したり、地下水が汚染されたりすることがないよう、周辺地下水のサンプリングも実施するとしている。

2013年3月に完成し、現在利用されている第1槽、第2槽では溜り水の発生が報告されている。溜り水の量は合計60トンほどで、セシウム-137が1リットル中1,000ベクレル程度含まれているという。溜り水は槽内観測孔から汲み上げ、汚染水処理設備等で処理するとしている。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

毎時30ミリシーベルトを超える汚染度の高いがれきは、金属容器に入れた上、鉄筋コンクリート造の固体廃棄物貯蔵庫で保管される。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

現在3棟で貯蔵されているが、新規の貯蔵庫建設も進められている。

伐採木や保護衣等の一時保管

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

伐採木の保管には火災のリスクがつきまとう。被災地のがれき集積場でも、火の気がないのに湯気やガスが発生したり、実際に発火する事例も起きている。木材が発酵する時の熱で自然発火してしまうのだという。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

ガス抜き管や温度計、さらに酸素を遮断する構造で対処とのことだが、火災発生時の対応については記されていない。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

タイベック(カバーオール)などの保護衣は、現場で作業を行う都度発生する厄介な廃棄物だ。現在は分別後、ドラム缶や金属容器で保管されているが、新設の雑固体廃棄物焼却設備の完成後は順次焼却を進め、廃棄物の減容を進めるとのこと。

 【参考ページ】雑固体廃棄物焼却設備設置工事の進捗状況
potaru.com

水処理で生じる廃棄物の保管

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

吸着塔で回収された放射性物質は、吸着塔ユニットのまま保管。その際、吸着塔の種類によってラック、ボックスカルバート(コンクリート製の箱)、HIC(高性能容器)対応のボックスカルバートで保管される。廃スラッジはコンクリート製、あるいは鋼製のタンクで、また濃縮廃液は溶接タンクに移送して保管するとしている。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

保管容量には余裕があるようだ。廃スラッジや「追加発生する予定なし」とされているのは、セシウム吸着装置やモバイル型ストロンチウム除去装置で放射能を低減した後、多核種除去設備等で処理するという方向に処理方法が変わったためだと菅がえられる。また濃縮廃液も多核種除去設備等で処理するため追加発生なしとされたのだろう。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

ラックによる保管とは、鋼製の囲みに立てて入れておくということらしい。SARRYや高性能ALPSで放射能を凝縮した吸着塔を野ざらしで保管して大丈夫なのかと不安になる。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

ボックスカルバートとは暗渠などに使われるコンクリート製の箱で、コンクリートの遮蔽効果を利用する保管方法。当然、野積みに比べて線量の高い吸着塔等が保管される。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

廃スラッジは汚染水中のセシウムを薬剤で沈殿させたもので、現在はコンクリート製タンクで保管されている。図にあるように、冷却したり、撹拌したり、喚起をしたりと、扱いは難しいようだ。10m盤よりも津波に対するリスクが軽減できる34m盤の鋼製タンクへの移送を実現してほしいものだ。その他、濃縮廃液は新たに設置された円筒縦型溶接タンク(漏洩が頻発したボルト止めのフランジタンクではない)に移送中とある。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

ここで分析状況の資料にあった「検出できない核種の評価が課題」について紹介する。

瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等および水処理二次廃棄物の分析状況|東京電力 平成27年12月4日

評価対象としてピックアップされた38核種のうち、上の資料で緑色表示された6核種は分析法すら確立していないとの記述だ。今後の対応が記されているわけではないので、分析法が確立するのを待つということなのだろうか。

ちなみに、分析法未確立はいずれもベータ核種で、
Zr:ジルコニウム-93(153万年)
Mo:モリブデン-93(4,000年)
Pd:パラジウム-107(650万年)
Sn:スズ-126(23万年)
Cs:セシウム-135(230万年)
Sm:サマリウム-151(90年)

一時保管エリアの逼迫度は?

分別作業時の被曝の問題と並んで重要度が高いのが、一時保管エリアを将来にわたって確保できるのか、その充足度だ。今回の資料によると、0.1ミリシーベルトから1ミリシーベルトまでのがれきの保管容量が来年度以降逼迫しそうだ。ただでさえ発生量が多い上に、容器に入れた上での屋外保管なので、容器の調達と用地確保に困難があるのだろうか。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

2014年度に使用済みの保護衣が一時的に逼迫したがその後、保管容量が増設されている。今年度末からは雑固体廃棄物焼却設備の運用が始まるので、使用済み保護衣等の保管量は減少していく見込みとなっている。

瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日
瓦礫等及び水処理二次廃棄物の保管・管理状況|東京電力 平成27年12月4日

今後、長期的にがれき等の保管ヴォリュームがどのように推移するかを示す予想図も発表された。

 福島第一原子力発電所の瓦礫等保管のイメージ|東京電力
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福島第一原子力発電所の瓦礫等保管のイメージ|東京電力
福島第一原子力発電所の瓦礫等保管のイメージ|東京電力

建屋内保管の増強が説明されているが、ペーパー全体で強調されているのは、廃棄物の容積をいかに減らすかであるように見受けられる。

上が現状のままでの累積予測、下が減容などの処理を行った際の保管容積予測。2027年度には70万立方メートルになりそうなものが、20万立方メートルに抑えられる見込みだ。東京ドームの56%、戦艦大和10隻分になりそうながれきが、大和3隻分に減らせる算段だ。

しかし、最も厳重な管理が求められ、また高濃度のため減容も困難な30ミリシーベルト超の建屋内保管が2027年で約20万立方メートルまで増加する。合計すると40万立方メートル。現在の保管量とほぼ同じ規模だ。

さらに、事故原発の廃炉までに30~40年を要するという計画を東京電力は堅持しているので、廃炉措置の完了は2040年~2050年頃ということになる。予想図に示されているのは2027年度までだから、その後、建屋解体による大量のがれきが発生するものと考えて間違いないだろう。

なにしろ1号機でさえ原子炉建屋の総重量が6万6千トン、タービン建屋は7万トン、2~4号機は原子炉建屋・タービン建屋がそれぞれ約10万トンもあるのだ。そこから出てくるがれきの中には、30ミリシーベルト超の保管基準よりもはるかに厳重かつ慎重な扱いが求められる、限りなく危ないがれきも相当量含まれるはずだ。

建屋や原子炉の解体は、燃料デブリの取り出しと同様に、廃炉への道に立ちふさがる大きな課題だ。安全を再優先にした慎重な対応がとられることを期待したい。

あとがき:ほんとうに40年で廃炉できるのか?

排出した量が多く、かつ半減期が比較的長いセシウム-137やストロンチウム-90は、放射能が半減するのにおよそ30年かかる。60年で4分の1、100年経ってようやく約1割に減少する。1割になるとは、測定される数値の「0」が1つだけ減るということだ。たとえば現在1億ベクレルの汚染物がやっと1000万ベクレル、1000ベクレルがようやく100ベクレルになる。

放射能は自ら崩壊していかない限り減らせない。放射能汚染が減っていくことを本当の意味での「除染」と呼ぶとしたら、その方法は時間の手に委ねる他なく、人間に出来ることはない。(通常除染と呼ばれている行為は、汚染物質の場所を移動するだけの移染でしかない)

廃炉と、本当の意味での除染に要する時間を考えると気が遠くなってしまう。そしてまた、ひと度シビアな事故を起こしてしまうと、想像をはるかに超える被害をもたらすばかりでなく、復旧のためにも人智が及ばぬほどの時間と金銭と技術開発が必要になる原子力発電所という存在の底知れぬ恐ろしさを思わずにはいられない。

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