10月29日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
高性能容器(HIC)からの水漏れ検査の途中経過(3巡目)
※吸着塔保管施設第二施設のHICについては、9月14日より3巡目の点検を実施しており、10月27日時点で553基の点検を実施。その中で新たに吸水ブロックに水がしみ込んでいるHICは確認されなかった。
また、吸着塔保管施設第三施設のHICについては、10月27日時点で230基の点検を実施しているが、その中で1基のHICについて、吸水ブロックに水がしみ込んでいることを確認。
引き続き、原因調査を行うとともに、HICの点検を行う。
【解説】不親切な表記である。ただ「HIC」とだけ言われて、それが何だか分かる人がどれほどいるだろうか。HICとは高性能容器(High Integrity Container)のことで、薬剤耐性の高いポリエチレン製の容器。セシウム吸着装置や多核種除去設備で出た高濃度廃棄物が収められ、放射能が減少するまでの間の長期保管に使われるものだ。米国基準では寿命300年とされているのに、事故原発で使用されるようになってわずか数年で水漏れや滲みが発生した。滲みでた水の量は少量ながら、2015年4月3日の日報によると1リットルあたりに換算して390万ベクレルの全ベータが検出されている。
その後、HICの製品そのものに不備があることが発覚し、東京電力では全数の検査を続けている。
協力企業作業員が鋼矢板に指を挟み負傷。救急車要請
※10月29日午後0時48分頃、構内において、固体廃棄物貯蔵庫第9棟設置工事に従事している協力企業作業員が、鋼矢板に右手の指を挟み負傷。入退域管理棟救急医療室にて医師の診察を受け、病院への搬送が必要と判断されたことから、10月29日午後1時43分に救急車を要請した。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◎日報に新規事項の記載なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置RO-2は停止、RO-3は運転中。
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクBからの排水準備が進む
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクBの当社および第三者機関による分析結果[採取日10月19日]については同等の値であり、運用目標値を満足していたことから、10月30日に海洋への排水を開始する。
サブドレン・地下水ドレン 29日発表資料には2ページ目(集水タンクの分析結果)なし
【解説】「ブドレン・地下水ドレン浄化水の分析結果」は、海洋への排水を行う直前の処理済みの水の分析結果。10月26日発表の同様の資料には、2ページ目として「集水タンクの分析結果」が掲載されていたが、今回発表では見られなかった。集水タンクはサブドレンや地下水ドレンから汲み上げた水を集めて一時貯蔵するもの。汲み上げた状態で含まれる放射性物質が示されてきた。
サブドレン・地下水ドレン浄化水の詳細分析結果(9月11日採取分)
「詳細」分析結果では、全アルファ核種、ストロンチウム-90の分析結果が発表されている。ストロンチウム-90の分析に約1カ月の時間を要するため、すでに排水が終了した後になって発表される。(地下水バイパスでも同様の情報開示が行われている)
地下水バイパス 通算87回目の海洋排水を終了。排出量は1,825トン
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月15日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、10月28日午前10時9分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、10月28日午前10時13分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、10月28日午後5時25分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は1,825m3。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月28日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
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