地震発生の3日後の2011年3月14日、激しい爆発で建屋が大きく破壊された福島第一原子力発電所3号機。その格納容器内部への調査が進められている。
格納容器は放射能を閉じ込める重要な第四番目の壁(※注)と呼ばれているが、たとえば制御棒を駆動するためのメンテナンス機器のように、格納容器内での作業に必要な物品を搬入するための貫通孔がいくつか設置されている。もちろん作業員が入るための通路もある。しかし、格納容器内部は極めて高い線量であるため、放射性物質が大量に漏れ出ることを防ぐため、小さな貫通孔を使ってパンチルトカメラ(視野を動かせるカメラ)、CCDカメラ、線量計、温度計を格納容器内に挿入し、内部環境を調査しようというのだ。
※注:第一の壁は燃料を焼き固めたペレットそのもの
第二の壁はペレットを詰めた被覆管
第三の壁は燃料で水を熱する圧力容器
第四の壁が圧力容器を覆う格納容器
第五の壁は原子炉建屋
10月20日実施分の調査方法
調査装置は、「パンチルトカメラ+線量計」「CCDカメラ+温度計」の2種類。いずれもX-53ペネと名付けられた格納容器貫通部から格納容器内部に挿入。
「パンチルトカメラ+線量計」は格納容器の水に浸かっていない部分(気相部)の線量測定と格納容器内部の状況確認、今後の調査のための偵察活動を目的として調査が実施された。
「CCDカメラ+温度計」はX-53ペネから挿入後、格納容器の壁沿いに吊り下げるようにして、水位確認、温度分布、壁面や底面の観察を目指した。
20日実施の調査内容
詳しい調査内容は上記のPDFに記されているが、3号機の内部状況が明らかになるという画期的な調査でもあるので、資料のキャプチャを紙芝居的に紹介する。
このページのポイントは格納容器内部の気相部の線量。格納容器の壁面近傍で約1シーベルト時。X-53ペネの出口から55センチの場所で約0.75シーベルト時だった。
被爆した半数の人が死に至る「亜致死線量」は4.0シーベルト、9割以上の人が2週間以内に死亡するとされる「致死線量」は6.0シーベルトされるので、格納容器内の線量は極めて高いということになる。とても人間が入って作業できる環境にはない。
格納容器内の映像が公開された。D/Wスプレイスパージャとは、格納容器を冷却するためのスプレイ装置の配管部、RHRは残留熱除去系(原子炉を停止した際に炉心を冷やすための配管系)、PCVは格納容器のこと。
現在水に浸かっている点検架台やグレーチング(金網状の足場板)などが映っている。
こちらはX-53ペネから吊り下げて、格納容器の底深くを探査する予定の「CCDカメラ+温度計」の調査内容。CCDカメラは格納容器の壁面にそって下方向を写している。
残念ながらこの日の調査では、1階のグレーチングが邪魔になって、「CCDカメラ+温度計」を格納容器底部まで下ろすことには失敗した。しかし、この失敗こそが成果ともいえる。グレーチングと格納容器壁面の間に探査装置を通すことが困難であることが実証されたわけだ。
そして今回の調査の「まとめ」として掲げられたのが上記のページ。
たったこれだけか、という印象は否めないが、それでも探査装置を格納容器内に挿入して調査を実施できたということ自体が大きな成果だと考える。実際に人が入っていけない場所だけに、今後もトライ・アンド・エラーを続けるほかないだろう。できる限り作業員の被曝を抑えつつ、今後の調査結果を元に無理なく安全な廃炉工程を立案してほしい。
10月22日調査の動画ページ
10月20日に格納容器内に入れられたパンチルトカメラとCCDカメラの映像が紹介されている。現在水に浸かっていない部分も、かなり腐食が進んでいるのが見て取れる。過去には滞留水に浸かっていたのかもしれない。またパンチルトカメラの映像には、高線量によるものか、かなりのノイズが入っている。
滞留水の中に吊り下げられたCCDカメラの映像は、カメラの動きによって沈殿物が巻き上げられる様子も映っている。映像がぶつ切りに編集されている点も要注意だろう。
22日の調査では格納容器内の水を採取
20日に続いて実施された22日の調査では、格納容器内の滞留水の採取を行い、格納容器内の環境、とくに腐食状況についての分析が行われている。
写真を見るとグレーチングが埋もれるほどの堆積物が見て取れる。腐食した物質が沈殿しているのかどうなのか。今後の検証が待たれる。
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