ついに出陣!
陸前高田の夏祭り「うごく七夕」大石七夕祭組の山車です。何カ月も前から用意してきた飾り付けを施されて(和紙に色を染めるのも、祭組のみんなの手作業です)、陸前高田の町へと向かいます。
陸前高田の山車は、有名な気仙大工の名工の手になるもの。大勢の人たちが二本の綱で重たい山車を曳き回します。太鼓が据えられた段は太鼓と笛のお囃子が乗る場所。10人以上が乗り込みます。そのさらに上(上の写真でピンクの外向きの飾りが付けられているところ)にも階があり、笹振りという担当が乗り込みます。
なんと初参加なのに、その笹振りとして最上階に上らせてもらったのです。まあ、電線なんかに引っかからないように見張りをするんだろうなと思っていたら「いやいや」。山車の美しさ、お囃子の音曲はもちろん祭りの花。それぞれの祭組が競い合うところですが、実は最上階の笹振りもまた、祭りの中で重要な使命を帯びた場所だとのこと。どんな使命なんだろう・・
最上階からの景色は二階建ての家の屋根に乗ってるような感じ。しかも車道を進むという普段は目にしない風景です。電線が近い……、大型道路標識に当たりそう……。
いろいろヒヤヒヤしながらも、高みの見物を楽しんでいたのですが、町に近づくにつれて、当たり前といえば当たり前、しかしどう考えても当たり前ではないという現実が迫ってきます。陸前高田の町はいま、かさ上げ工事の真っ最中。かつての駅前通りなどすでにかさ上げによって埋められた通りもたくさんあります。昔ながらの道路を使って七夕ができるのは今年が最後だろうと言われています。だから、目の前にかさ上げの工事現場が見えていても、不思議ではないはずなのです。
でもここは、津波の前には町があった場所。七夕の山車は商店や民家が立ち並ぶ通りを進んでいくものだったのです。祭りの日には沿道にたくさんの人が集まって、声をかけたりご祝儀(お花といいます)を届けてくれたりしていたことでしょう。最上階に乗る笹振りも、昔は電線をよけるのに大忙しだったに違いありません。
でも、その町がない。当たり前だったものの代わりに、土の壁がある。そりゃあ新しい町をつくるための工事だから大切なのは納得できる。でもやはり違う。
笹振りの重要な役目とは、山車と山車がすれ違う時、笹を振り合って競い合うこと。他の町の山車が近づくと、もちろん囃しの勢いも増し、空気を破るほどの音が響きます。その上の階では笹振りの競演。
短冊の一枚一枚に願い事が書かれた笹で競い合う。それが七夕の笹振り。
太鼓と笛の音、町に響け、天まで届け。笹の短冊に書かれた願い事もひとつ残らず天まで届け。
陸前高田うごく七夕「大石七夕祭組」。私たちの感じていることが少しでも伝わってくれたらいいと思います。
陸前高田うごく七夕 大石七夕祭組 笹振り
YouTube
最終更新: