6月30日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
※ 情報を追加して更新します
3号機使用済み燃料プール冷却を再開
※3号機使用済燃料プール(以下SFP)代替冷却系について、一次冷却系の弁点検作業を行うため、6月21日午後1時38分に停止。冷却停止時のSFP水温度は22.9℃。(既出)
作業が終了したことから、6月29日午後1時46分、SFP代替冷却系を起動。同日午後2時10分、運転状態について異常がないことを確認。なお、同日午後6時時点のSFP水温度は、35.5℃であり、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、SFP水温度の管理上問題はない。
再開時の燃料プールの水温は35.5℃。8日と8分間の停止中に12.6℃の温度上昇があったことになる。見込みの温度上昇は1時間約0.103℃だったが、実際は0.066℃程度だった。また停止時間も予定の223時間に対して約192時間と短縮されている。
高性能容器(HIC)のベント孔再確認の続報。7基のHICにベント孔の過不足が判明
※蓋にベント孔がない高性能容器(HIC)1基が確認されたことから、蓋ベント孔の検査記録がないHICについて確認を行い、第二施設に保管されているベント孔数の検査記録がないHICについて確認が完了、全478基のうち17基のHICに設計上のベント孔数と不整合があることを確認。(既出)
17基のHICの蓋を取り外し、再度ベント孔数の確認を行った結果、孔数に過不足のあったHICは7基(孔不足6基、孔過多1基)であることを確認。今後、ベント孔不足の6基については、設計上の孔数まで追加穿孔を実施。
また、第三施設に保管中のベント孔数の検査記録がないHIC(28基)については、設計上のベント孔数があることを確認。
なお、蓋に遮蔽ゴムマットを取り付けていたHIC(1基)については、設計上のベント孔数があることを確認し、ベント機能を確保するための対策として、遮蔽ゴムマットを蓋の形状に合わせて切断した。
高性能容器(HIC)とは、放射性物質の吸着装置や多核種除去設備で発生する放射性廃棄物を長期間保管するための容器で、厚さ1センチ以上のポリエチレン製。米国サウスカロライナ州健康環境局の認定による容器で、内容物を含めた最大重量は約4.9トン。東京電力ではコンクリート製のボックスカルバート(工場で製造される箱型コンクリート)にHICを2基ずつ収めて保管している。
HICは規格の上では300年の使用に耐えることになっており、長期間の保管中に容器内の圧力が上がった際にガスだけを外に逃すベント孔を設けたスクリュー蓋(フィルター付き)が装着されていた。その構造のどこかから、汚染された水が漏れたことが発覚したため調査を進める過程で、ベント孔が足りなかったり多すぎたりするものが発見されたことを伝えている。
放射性物質が濃縮された沈殿物等を保管する重要な製品で、しかも300年ももつことになっていることから「高性能容器」と呼ばれているはずなのに。なんと規格に外れた不具合製品が1.5%近くも見つかるとは、唖然とするほかないだろう。
福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
※ タービン建屋地下滞留水の移送は停止中
2号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水の移送を停止
1号機の冒頭4項目に加え、
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(2015年6月28日午前11時17分~6月30日午前10時25分)
※ タービン建屋地下滞留水の移送は停止中
3号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水の移送を停止
1号機の冒頭4項目に加え、
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
※ 上記の通り、使用済燃料プール循環冷却系は6月29日午後1時46分に冷却を再開したと報告されている。
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(2015年6月28日午前11時22分~6月30日午前10時14分)
※ タービン建屋地下滞留水の移送は停止中
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
※ 6月26日付の日報によると、冷却浄化系を停止し、残留熱除去系(RHR系)による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)で冷却していることになっている。
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・RO濃縮水処理設備停止中
地下水バイパス ~地下水の海洋への排水を開始(通算71回目)
6月30日午前10時22分より海洋への排水を開始。同日午前10時24分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
6月29日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
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