まさか、揚げ足を取ろうなんてことではありません。ありがたい平泉の参道にあるお寺さんが掲げた看板がたいへんなのであります。まずはとにかく見てみて。
中尊寺金色堂へ向かう参道の途中、北に衣川方面に開けた斜面にある積善院さん。中尊寺の十七箇院の子院のひとつで、山道を登って参詣する人たちのためのお休み処として親しまれております。松尾芭蕉の奥の細道に関する資料類の展示も行われているそうです。それにしても、お休み処の看板には細かい書き込みがいっぱい。
手前の看板の「特製」のキャッチに添えられた「←」を見ると、「抹茶」の文字の上に明らかに後から書き加えられた「菓子付」のサブキャッチ。これは効きそうです。ついふらっと立ち寄ってしまいたくなります。その下の「ぜんざい」には「栗」の一文字も追記されています。栗は古くから滋養強壮の妙薬としても活用されてきました。「参道の急坂を上ってきてお疲れでしょう。特別なぜんざいで一息つかれては」との親切な心遣いがうれしいですね。
もちろん赤文字で記された一押しメニューの「あまざけ」の左隣にも参拝客へのやさしさが感じられる一言。曰く、「アルコール分なし」。お酒が苦手な方やお子さんでも安心です。和風甘味で押し切るのかと思いきや、「ホットコーヒーあります」の一文まで添えられているではありませんか。きっと海外からのお客さんのことも考えて追加されたメニューなのでしょう。なにしろ世界遺産ですから。
参拝客のお目当ての金色堂までの参道には、飲食が出来るお店はそれほど多くはありません。しかも、参道にはけっこう急な坂道が続くので、積善院さんの懇切丁寧な看板は参拝客のこころにきっと響くものでしょう。
だけど、
あれ、え~っと?
なんて読めばいいのでしょうか?
あの、その緑色のポップな書体で描かれたお飲み物……。
グリーン■イ…。テキストでは表示することができません。
「特製 ひやし グリーン■イ」――。日差しがかなり強い日だったので相当惹かれるものはあったのですが、近づきがたい圧力のようなものをひしひしと感じてしまいます。
しかも積善院さんに下っていく小道につながる少なくとも3箇所に同じ表記の看板。いえ看板の文字の感じとか、細かい説明書きの有無など小さな違いはあるのですが、「特製 ひやし グリーン■イ」の表記だけは3箇所とも共通。よほど重要な言葉に違いありません。
「この文字が読めぬ者は入るべからず」なんていう謎掛け? あるいは禅問答みたいなもの? まさかスフィンクスのなぞなぞじゃないんだから、答えられなければ食い殺されてしまうなんてことはないのでしょうが、「まだまだ修行が足りんわ!」と御坊様に叱咤されたような敗北感……
どなたか読める方はいませんか。次回中尊寺に行った時には、ぜひとも敷居を跨がせていただいて経験したいと思っておりますので。「特製 ひやし グリーン■イ」……
(…ダメですね、もっと修業せねば。はい、修業します…)
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