4月11日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
1号機原子炉格納容器内のロボット(クローラ調査装置)調査を実施
※「原子炉格納容器内部調査技術の開発」における1号機原子炉格納容器内部調査の実証試験として、1号機原子炉格納容器の地下アクセス開口部からの燃料デブリの広がり状況を確認するための事前調査として、1号機原子炉格納容器の中へ初めてロボット(クローラ調査装置)を投入する調査を実施している。
1号機原子炉格納容器内部へのロボットの投入は、初めての試みであり、今回の実証試験で得られた貴重なデータについては、今後に活かしていく。
2015年4月10日午前9時25分頃、1号機原子炉格納容器内調査装置の投入作業を開始。同日午前10時45分、調査装置が原子炉格納容器グレーチング上に着き、同日午前11時20分、グレーチング上において調査のための走行を開始。4月10日の調査では、グレーチング上において、約3分の2の調査範囲を走行し、調査ポイントである18箇所のうち、地下アクセス開口部を含んだ14箇所までの調査を実施することができた。同日午後2時9分、調査装置が走行停止状態となったため、同日午後5時30分頃まで復旧作業および原因調査などを行った。
本日(4月11日)も、復旧作業や原因調査の検討を実施するとともに、停止状態での調査装置による周囲状況の確認を行った。
1号機原子炉建屋の格納容器内に小型のロボットを入れて、溶け落ちた核燃料の状況を調査する試みが4月10日に始まった。第一回目は反時計回りに格納容器の周辺を約半周する予定だったが…
建屋周囲の地下水位の続報。1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を移送
1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水については、4月11日午後2時31分~午後3時29分まで1号機タービン建屋へ移送を実施。なお滞留水の移送については、水位が低下するまで断続的に実施する。
滞留水移送前の水位は以下のとおりです。
〈移送前〉実測値:OP 4720mm(4月11日午後2時30分)
補正値:OP 4846mm
〈移送後〉実測値:OP 4610mm(4月11日午後3時50分)
補正値:OP 4733mm
また、4月11日午後3時50分頃時点の1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン(No.1)の水位は、OP4817mmです。
1号機ディーゼル発電機(B)室の水位については、4月9日午前11時時点の水位(実測値:OP4650mm)より上昇しているが、これは1号機ディーゼル発電機(B)室の屋上に開けた水位確認用の観測孔より雨水が浸入した影響によるもの。
なお、1号機ディーゼル発電機(B)室の屋上に開けた水位確認用の観測孔からの雨水の浸入については、観測孔の周りに土嚢を設置するとともに養生シートによる雨水浸入防止対策を実施。
他の施設と繋がっていないと東京電力が主張する1号機ディーゼル発電機(B)室だが、天井に開けられた観測孔から雨水が入るので水位は変わるとのこと。これでは水位変動を正確に把握することができない。雨水浸入防止対策を実施するというが、これ以前の判断の根拠が揺らぐ。
・1号機所内ボイラー室近傍のサブドレン水(N1) (採取日4月10日)
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.6×10-2Bq/cm3)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:2.5×10-2Bq/cm3)
・1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン水(No.1)(採取日4月10日)
セシウム134:2.0×10-2Bq/cm3
セシウム137:5.6×10-2Bq/cm3
測定結果については、特定原子力施設に係る実施計画 III特定原子力施設の保安第1編第26条表26-3の運転上の制限値(セシウム134とセシウム137の放射能濃度の合計値が1.0×10^2Bq/cm3)以下であることを確認。
リットルあたりに換算する
<1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン水(No.1)>
(採取日4月10日)
セシウム134:20 Bq/L
セシウム137:56 Bq/L
特定原子力施設に係る実施計画 III特定原子力施設の保安第1編第26条表26-3の運転上の制限値(セシウム134とセシウム137の放射能濃度の合計値が1.0×10^2Bq/cm3)がどういう数字かというと、
1リット当たりでは、セシウム134とセシウム137の放射能濃度の合計値が100,000ベクレルということになる。
もちろん、この数値の汚染水を海などに流していいという話ではなく、地下水バイパスの運用目標は、セシウム134、セシウム137それぞれ1リットル当たり1ベクレルとされている。
つまり、1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン水はかなりの程度汚染されていると考えなければならない。
高性能容器(HIC)の蓋付近で高濃度のたまり水の続報。HICに蓄えた汚染水や、蓋の内側の汚染水の濃度が発表される
AJ8ボックスカルバート内で水溜まりが確認されたHICの内包水および蓋内部の水についての分析結果は以下のとおり。
【HIC内包水】
・セシウム134 2.4×10^0Bq/cm3
・セシウム137 8.7×10^0Bq/cm3
・全ベータ 1.9×10^4Bq/cm3
・トリチウム 1.9×10^3Bq/cm3
【HIC蓋内水】
・セシウム134 2.1×10^0Bq/cm3
・セシウム137 7.0×10^0Bq/cm3
・全ベータ 4.5×10^3Bq/cm3
・トリチウム 1.7×10^3Bq/cm3
HIC内に貯蔵されている汚染水、蓋内水、蓋の外側に溜まっていた汚染水の濃度をそれぞれリットルあたりに換算する
<HIC内包水>
・セシウム134 2,400 Bq/L
・セシウム137 8,700 Bq/L
・全ベータ 1900万 Bq/L
・トリチウム 190万 Bq/L
<HIC蓋内水>
・セシウム134 2,100 Bq/L
・セシウム137 7,000 Bq/L
・全ベータ 450万 Bq/L
・トリチウム 170万 Bq/L
<AJ8の蓋周辺たまり水>
・セシウム134 1,900 Bq/L
・セシウム137 7,100 Bq/L
・全ベータ 390万 Bq/L
・トリチウム 150万 Bq/L
※ 蓋内部の汚染水とAJ8のたまり水の放射能濃度は極めて近い。しかしそもそも「蓋内水」がどのようなものなのか説明はない。
AO7およびAP6ボックスカルバート内のHIC蓋外周部に溜まった水の分析結果は以下のとおり。
【AO7】
・セシウム134 1.7×10-1Bq/cm3
・セシウム137 6.2×10^0Bq/cm3
・全ベータ 7.5×10^2Bq/cm3
・トリチウム 分析中
【AP6】
・セシウム134 6.1×10-1Bq/cm3
・セシウム137 2.0×10^0Bq/cm3
・全ベータ 7.6×10^2Bq/cm3
・トリチウム 分析中
AN6ボックスカルバート内のHIC蓋外周部に溜まった水の分析結果については、採取できた試料が少量であったことから、分析を実施していない。
なお、4月11日は降雨の影響により他のHICについて現場調査は実施しておりません。
これまで、水溜まりを確認したHICについては、ボックスカルバートの番号でお知らせしておりましたが、ボックスカルバート内には2基のHICを収納していることから、識別化を図るために、今後はHIC製造番号にてお知らせすることとしました。
これまで水溜まりを確認しているHICの製造番号は以下の通りです。
【水溜まりを確認したHIC】 【製造番号】
・AJ5ボックスカルバート内HIC → PO646393-172
・AJ8ボックスカルバート内HIC → PO646393-182
・AK8ボックスカルバート内HIC → PO646393-194
・A1ボックスカルバート内HIC → PO641180-229
・AN6ボックスカルバート内HIC → PO646393-181
・AO7ボックスカルバート内HIC → PO641180-240
・AP6ボックスカルバート内HIC → PO641180-242
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
2号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水、移送先を切り替え(移送先は高温焼却炉建屋)
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送実施(2015年4月10日午前10時35分~4月11日午前9時32分)
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月11日午前11時00分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水、移送先を切り替え(移送先は高温焼却炉建屋)
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(2015年4月8日午前10時8分~4月11日午前11時15分)
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月11日午前11時39分~)
※滞留水移送は稼働中
2・3号機とも、タービン建屋地下の高濃度滞留水を高温焼却炉建屋へ移送。集中廃棄物処理施設の3つの建屋(プロセス主建屋・高温焼却炉建屋・サイトバンカ建屋)のうち、高温焼却炉建屋のみが水位がO.P.+1,400台で低かった。
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~第二セシウム吸着装置(サリー)「運転中」
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
その他の項目に新規事項なし
・セシウム吸着装置運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~海洋への排水を開始(通算58回目)
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ1の当社および第三者機関による分析結果[採取日3月31日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
4月11日午前10時19分、海洋への排水を開始。同日午前10時41分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月10日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、測定箇所の上部で高所作業を行っていたことから、パトロール員の安全確保のために70μm線量当量率の測定を一部実施しなかった箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<E-1の全ベータ値>
3月20日採取 16,000Bq/L ※漸減傾向から再上昇
3月21日採取 11,000Bq/L ※再び減少に転ず
(中略)
3月29日採取 7,400Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 7,000Bq/L
3月31日採取 7,800Bq/L
4月1日採取 8,100Bq/L
4月2日採取 7,300Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 5,600Bq/L
4月5日採取 6,300Bq/L
4月6日採取 5,600Bq/L
4月7日採取 4,100Bq/L
4月8日採取 4,900Bq/L
4月9日採取 5,100Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<G-1のトリチウム値>
3月25日採取 2,400Bq/L
3月26日採取 600Bq/L ※大幅に減少
(中略)
4月2日採取 330Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 210Bq/L
4月5日採取 160Bq/L
4月6日採取 200Bq/L
4月7日採取 120Bq/L
4月8日採取 180Bq/L
4月9日採取 ND(検出限界値:110Bq/L)
※ 検出限界値:110Bq/Lとは!!
※ 3月10日以前の最高値:480 Bq/L(平成26年6月18日)
<G-2のトリチウム値>
3月29日採取 290Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 220Bq/L
3月31日採取 270Bq/L
4月1日採取 300Bq/L
4月2日採取 290Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 260Bq/L
4月6日採取 320Bq/L
4月7日採取 310Bq/L
4月8日採取 240Bq/L
4月9日採取 380Bq/L
<G-3のトリチウム値>漏洩タンクから最も遠いG-3もトリチウム値が上昇
3月30日採取 310Bq/L
3月31日採取 390Bq/L
4月1日採取 360Bq/L
4月2日採取 480Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 420Bq/L
4月6日採取 470Bq/L
4月7日採取 460Bq/L
4月8日採取 520Bq/L
4月9日採取 390Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
4月8日に採取した地下水観測孔No.3のトリチウム濃度が1,900Bq/Lと、前回値(4月1日採取分:検出限界値110 Bq/L未満)と比較し10倍以上の上昇を確認。
また、4月8日にお知らせしたとおり、地下水観測孔No.3の全ベータ放射能の値について10倍を超える変動が見られたため、4月9日に試料を採取し分析した結果、全ベータ放射能の値が410Bq/L、トリチウム濃度の値が2,000Bq/Lと前回値(4月8日採取分:全ベータ390Bq/L、トリチウム濃度1,900Bq/L)と同等であることを確認した。
今回の変動要因は、4月1日から3・4号機間ウェルポイントの汲み上げを実施したため、地下水の流動が変わったものと推定。
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新たに1~4号機建屋周辺に設置された観測井について新規事項なし。従来のサブドレンからの再取水のデータは公開されているが、ヨウ素-131、セシウム-134、セシウム-137のデータのみで、全ベータ、トリチウム(H-3)、ストロンチウム-90のデータは公表されていない。
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
新規事項なし
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年4月11日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: