4月10日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
建屋周囲の地下水位の続報。地下水位を上回っていた1号機所内ボイラー室の滞留水を移送
1号機タービン建屋所内ボイラー室の滞留水の移送は、4月9日午後2時16分に停止し、漏えい等の異常がないことを確認。
1号機所内ボイラー室の滞留水移送前後の水位は以下のとおり。
<移送前>
実測値:OP 4,900mm(4月9日午前11時)
補正値:OP 4,980mm
<移送後>
実測値:OP 4,520mm(4月9日午後4時5分)
補正値:OP 4,593mm
なお、午後4時5分時点の1号機所内ボイラー室近傍のサブドレン(N1)の水位は、OP4,881mm
今後、さらに水位を低下させるため、水質の状態を確認しながら滞留水の処理方針を検討し、計画的に移送を実施していく。
1号機タービン建屋所内ボイラー室近傍のサブドレン水(N1)、および1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン水(No.1)の放射能濃度の測定結果は以下のとおり。
・1号機所内ボイラー室近傍のサブドレン水(N1) (採取日4月9日)
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.9×10-2Bq/cm3)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:2.5×10-2Bq/cm3)
・1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン水(No.1)(採取日4月9日)
セシウム134:2.9×10-2Bq/cm3
セシウム137:1.0×10-1Bq/cm3
測定結果については、特定原子力施設に係る実施計画 III特定原子力施設の保安第1編第26条表26-3の運転上の制限値(セシウム134とセシウム137の放射能濃度の合計値が1.0×102Bq/cm3)以下であることを確認。
建屋内の他の部分との連通性がないと説明されている「1号機所内ボイラー室」の滞留水を移送。この水位の今後の水位に注目だ。
実測値:OP 4,520mm(4月9日午後4時5分)
補正値:OP 4,593mm
この数字を覚えておかなければ。
高性能容器(HIC)の蓋付近で高濃度のたまり水の続報。新たに3基のHICにたまり水。全ベータが390万ベクレルの「AJ8」について蓋開放調査を実施
原因調査のため、引き続き、他のHICについても継続して現場調査を実施していく。また、水溜まりを確認したAJ8については、4月8日以降に増設多核種除去設備建屋内のHIC保管エリアへ移送し、準備が整い次第、HICの上蓋を解放して内部の調査を実施していく。(既出)
4月9日26基のHICの現場調査を実施した結果、以下のとおり3基のHICの上蓋に水溜まりが確認された。また、当該3基のHICのうち1基については、床面ゴムマット上にも水溜まりが確認された。
なお、ボックスカルバート外への漏えいはない。
・AN6ボックスカルバート内1基(HICの蓋外周部)
・AO7ボックスカルバート内1基(HICの蓋外周部および床面ゴムマット上)
・AP6ボックスカルバート内1基(HICの蓋外周部)
また、AJ8ボックスカルバート内1基のHICについては、4月8日に増設多核種除去設備建屋内のHIC保管エリアへ輸送し、本日、HIC上蓋を開放し調査を行った結果、以下のことが確認された。
・HIC内包水の液位はHIC上蓋下面より低い位置にあること
・HIC上蓋内空間部には液体が溜まっていること
・HIC上蓋開放前に上蓋と本体の隙間にろ過水を注入したところ、ろ過水がHIC内に流入すること 等
引き続き、AJ8ボックスカルバート内1基のHIC上蓋開放調査を継続。
なお、当該HICは輸送時の振動等の影響で状態変化が発生してしまったことも想定されるため、AJ5ボックスカルバート内1基のHICを対象に、第二保管施設でHIC上蓋開放調査を実施することを計画する。
1号機原子炉格納容器内のロボット(クローラ調査装置)調査のリリース発表
構内排水路のサンプリングデータ(4月2日採取)
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
2号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水、移送を再開(移送先は3号機タービン建屋)
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月10日午前10時35分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機~6号機
新規事項なし
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月8日午前10時8分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~第二セシウム吸着装置(サリー)「運転中」
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
その他の項目に新規事項なし
・セシウム吸着装置運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~通算58回目となる海洋排出の準備が進む
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ1の当社および第三者機関による分析結果[採取日3月31日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月9日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、測定箇所の上部で高所作業を行っていたことから、パトロール員の安全確保のために70μm線量当量率の測定を一部実施しなかった箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<E-1の全ベータ値>
3月20日採取 16,000Bq/L ※漸減傾向から再上昇
3月21日採取 11,000Bq/L ※再び減少に転ず
(中略)
3月29日採取 7,400Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 7,000Bq/L
3月31日採取 7,800Bq/L
4月1日採取 8,100Bq/L
4月2日採取 7,300Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 5,600Bq/L
4月5日採取 6,300Bq/L
4月6日採取 5,600Bq/L
4月7日採取 4,100Bq/L
4月8日採取 4,900Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<G-1のトリチウム値>
3月25日採取 2,400Bq/L
3月26日採取 600Bq/L ※大幅に減少
(中略)
4月2日採取 330Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 210Bq/L
4月5日採取 160Bq/L
4月6日採取 200Bq/L
4月7日採取 120Bq/L
4月8日採取 180Bq/L
※ 3月10日以前の最高値:480 Bq/L(平成26年6月18日)
<G-2のトリチウム値>
3月29日採取 290Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 220Bq/L
3月31日採取 270Bq/L
4月1日採取 300Bq/L
4月2日採取 290Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 260Bq/L
4月6日採取 320Bq/L
4月7日採取 310Bq/L
4月8日採取 240Bq/L
<G-3のトリチウム値>漏洩タンクから最も遠いG-3もトリチウム値が上昇
3月30日採取 310Bq/L
3月31日採取 390Bq/L
4月1日採取 360Bq/L
4月2日採取 480Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 420Bq/L
4月6日採取 470Bq/L
4月7日採取 460Bq/L
4月8日採取 520Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新たに1~4号機建屋周辺に設置された観測井について新規事項なし。従来のサブドレンからの再取水のデータは公開されているが、ヨウ素-131、セシウム-134、セシウム-137のデータのみで、全ベータ、トリチウム(H-3)、ストロンチウム-90のデータは公表されていない。
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆採取日(3月30日)→ (4月1日)→ (4月6日)→ 最新(4月8日)
<1号機放水路立坑水(上流側)>
セシウム134:17,000 Bq/L → 16,000 Bq/L → 13,000 Bq/L → 11,000 Bq/L
セシウム137:59,000 Bq/L → 57,000 Bq/L → 46,000 Bq/L → 40,000 Bq/L
全ベータ: 78,000 Bq/L → 70,000 Bq/L → 60,000 Bq/L → 55,000 Bq/L
トリチウム: 480Bq/L → 430Bq/L → 460Bq/L → 600Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)>
セシウム134:1,600 Bq/L → 1,600 Bq/L → 1,500 Bq/L → 1,300 Bq/L
セシウム137:5,600 Bq/L → 5,600 Bq/L → 5,200 Bq/L → 4,600 Bq/L
全ベータ: 9,000 Bq/L → 8,700 Bq/L → 8,600 Bq/L → 8,300 Bq/L
トリチウム: 1,400 Bq/L → 1,300 Bq/L → 1,300 Bq/L → 1,300 Bq/L
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年4月10日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: