もうすぐクリスマス。街はイルミネーションに輝き、恋人たちが冷えた手を温め合う、そんなロマンチックな季節ですが、もしも「恋人」という言葉が発明されていなかったら? きっとクリスマスのイメージもちょっと違っていたかもしれませんね。
恋人という言葉、実はそんなに昔からあった言葉ではないのだそうです。
砂の上にわが恋人の名をかけば 波のよせきて かげもとどめず
落合直文が明治33年に文芸誌「明星」創刊号に寄稿した歌
「恋人」という言葉が初めて登場したのは上の和歌。この歌を詠んだ落合直文さんこそが恋人という言葉の発明者というわけです。
落合さんは宮城県気仙沼市の出身で、実家の鮎貝家は伊達家の直轄領だった気仙沼一帯を治めていた名家。落合さんは伊勢神宮で国学や漢籍を学んだ後、現在の東京大学や早稲田大学で教鞭をとった国文学者で、和歌にもたいへん秀でていて、与謝野鉄幹は彼の弟子なんだとか。鉄幹や与謝野晶子、北原白秋、石川啄木たちが活躍した雑誌「明星」の創刊も応援したそうです。
言うなれば、気仙沼は「恋人」という言葉を生んだ町、なのです。
落合さんの実家、鮎貝家の館は市指定の名勝「煙雲館」として残されています。とくに寛文年間に作庭されたと伝えられる庭園は、気仙沼大島と岩井崎を借景した回遊式池泉庭園で、県内を代表する日本庭園です。
震災後には、観光で気仙沼を盛り上げたいと考えた地元の高校生グループが、「恋人発祥の地・気仙沼」をPRするために、この庭園をにちなんだ物語を作ったり、庭を左回りすると恋が成就するなんてジンクスを提唱したり、そんな素敵な活動の舞台にもなっているそうですよ。
寒~い冬、都会でイルミネーションもいいけれど、恋人発祥の地で物語を紡いでみるのもいいかもです。(あ、もちろん気仙沼のクリスマスイルミネーションもお忘れなく! 港がぐるっと光のアートで彩られて、これまたロマンチックなんですから♪ 今年はすでに開催中。年明け1月9日までですよ~)
煙雲館庭園
気仙沼市松崎片浜197 電話0226-22-1318(見学の際は事前にご連絡を)
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