【突発的な事象】2号機燃料プールで冷却停止

iRyota25

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福島第一原発では、事故が発生した後にもメンテナンスなどの目的で計画的に原子炉やプール冷却を停止することがあった。しかし、同じ冷却停止でも計画されたものと突発的に発生したものでは切迫感がまったく違う。

 福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年11月28日
www.tepco.co.jp  

水温が制限温度を超えるまで13.8日という事態に

本日(11月27日)午後4時43分頃、2号機使用済燃料プール代替冷却系の一次系ポンプ(B系)が自動停止し、当該プール冷却が停止しました。

現在、原因・現場状況等の調査を行っております。

冷却停止時の当該プール水温度は16.7℃であり、冷却停止時の温度上昇率は0.146℃/hであることから、運転上の制限値(65℃)に到達するまでには、約13.8日と評価しております。

また、プラントデータ(原子炉への注水流量等)の異常、モニタリングポスト指示値の有意な変動は確認されておりません。

福島第一原子力発電所における2号機使用済燃料プール代替冷却系の停止について(続報)|東京電力 平成26年11月27日

原子炉ではウラン-235の核分裂で発生する熱を利用して発電を行っているといわれるが、実際にはウラン-235の分裂で発生する100種類近い核分裂生成物(セシウム-134や137、ストロンチウム-90など)も、安定した状態になるまで放射線を出しながら「崩壊」を続ける。

この時に出される熱が崩壊熱で、福島第一原発の事故はウラン-235の核分裂を止めることはできたが、崩壊熱を冷ますことができなかったことが直接の原因だった。

崩壊熱の熱量は想像以上に大きなもので、原子炉が通常運転している時で10%近くもあるという。崩壊熱は核分裂生成物が崩壊して行くにつれて、時間経過とともに小さくなっていくが、使用済み燃料プールに収められた核燃料であっても、現在も継続的に発熱している。

この熱を冷ますために継続して行われているのが使用済み燃料プールの冷却で、東京電力の説明は、1時間あたり0.146℃の温度上昇が見込まれる現在の状況だと、運転管理上定められている65℃という限界水温までプール水温度が上昇するまで13.8日と評価されているということ。

プール冷却を再開することができずに温度上昇が続き、プールの中の燃料が水から露出してしまうと、2011年の事故直後と同様の状況に陥る恐れがある。

「続報」は次のように続ける。

福島第一原子力発電所における2号機使用済燃料プール代替冷却系の停止に関する続報です。

現場を確認したところ、以下のことがわかりました。

・使用済燃料プール代替冷却系一次系ポンプ(B)に漏えい等の異常は確認されませんでした。

・使用済燃料プール代替冷却系の空気作動弁に、作動用空気を供給している空気圧縮機が停止していました。(空気圧縮機は2台設置されており、通常は1台運転、1台は待機状態)

・警報は「系統入口流量低」が発生しましたが、他に異常を示す警報は発生していません。

使用済燃料プール代替冷却系が自動停止した経緯については、何らかの要因により運転中の空気圧縮機が停止したため、空気作動弁が閉動作し、使用済燃料プール代替冷却系一次系ポンプ(B)が自動停止したものと推定しております。

今後、以下の対応を行います。

・空気圧縮機の健全性を確認した上で、待機状態にあった空気圧縮機を起動し、空気作動弁の開閉試験を行います。

・その後、自動停止した使用済燃料プール代替冷却系一次系ポンプ(B)を起動させます。

なお、使用済燃料プール代替冷却系一次系ポンプ(B)の起動に要する時間は、2時間程度と見ております。また、空気圧縮機が停止した原因について、今後調査してまいります。

福島第一原子力発電所における2号機使用済燃料プール代替冷却系の停止について(続報)|東京電力 平成26年11月27日

「一斉メール」を読むと、原因の絞り込みは比較的順調に行われたようにも思える。発生したのが27日夕方で、その日のうちに一斉メールを2本発信しているのだから、現場からの情報を広報部門がしっかり検討するだけの時間的余裕もあったのだろう。

しかし、次の第3報が発せられたのと同じ11月28日付で東京電力が公開した写真からは、広報のメールとは違った切迫感が伝わってくる。

福島第一原子力発電所における2号機使用済燃料プール代替冷却系の停止に関する続報です。

待機状態であった空気圧縮機(B)の健全性を確認後、空気圧縮機を起動し、空気作動弁の開閉試験を行い問題がないことを確認しました。
・空気圧縮機(B)  午後8時40分起動
・空気作動弁開閉試験 午後9時5分~午後9時6分

その後、午後9時26分に使用済燃料プール代替冷却系一次系ポンプ(B)を起動し、使用済燃料プールの冷却を再開しました。

午後11時現在、使用済燃料プール水温度は17.3℃であり、停止時の16.7℃からの上昇は、運転上の制限値(65℃)に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題ありませんでした。

なお、続報にてお知らせした自動停止した経緯については、調査したところ、使用済燃料プール代替冷却系一次系システムの出入口弁(空気作動弁)に空気を供給している空気圧縮機の操作スイッチが「停止」になっていたことにより、空気貯槽の圧力が低下し、その後、空気作動弁への供給圧力が低下して出口弁が閉動作したことにより、一次系ポンプが停止したことが分かりました。空気圧縮機の操作スイッチが「停止」になっていた原因については、今後調査してまいります。

また、モニタリングポスト指示値の有意な変動は確認されておりません。

福島第一原子力発電所における2号機使用済燃料プール代替冷却系の停止について(続報2) 平成26年11月28日|東京電力

コンプレッサー
コンプレッサー

photo.tepco.co.jp

運転スイッチ
運転スイッチ

photo.tepco.co.jp

事故後に仮設されたと考えられるコンプレッサー。ピントがボケた電源スイッチ。スイッチの下には毎日、と毎週の点検項目がプリントされている。やはり線量が高いのだろうか。十分な保守点検が困難な状況なのではないかと危惧したくなるような写真だ。

小さな不具合でもシステムダウンにつながりかねない

冷却材(水)が失われることで燃料が発熱する事故を起こさないようにする大切な使用済燃料プール代替冷却系は、主要なエレメントと考えられるポンプが健在であっても、配管の弁の異常によっても停止し得る。弁の駆動は圧縮空気で行われていて(ほかに電磁弁もある)、圧縮空気を作るためのコンプレッサーの異常によっても、冷却システム全体が停止する事態になってしまう――。

原発事故当初、格納容器の圧力を下げるためにベント(弁を開いて内部のガスを放出する操作)を行おうとしても、弁を動かすための電気や十分なパワーのあるコンプレッサーがなかったために非常に難航した出来事と極めて類似性が高い。

2系統あるコンプレッサーの片方が生きていたため事無きを得たが、事故の原因はコンプレッサーの操作スイッチがオフになっていたためと東京電力はいう。さらにその原因が人為的ミスであれ、機械的不具合であれ、複雑なシステムの一部がストップしただけで、重大な事故につながりかねないことが改めて明らかになった意味は大きいと言わざるを得ない。

 崩壊熱発生率 databox | 京都大学原子炉実験所 小出裕章さん作成
www.rri.kyoto-u.ac.jp  
【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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