トレンチの閉塞材充填作業が始まった翌日、2号機タービン建屋からの滞留水移送先が変更される。狙いは不明
11月26日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を考えます。
燃料取出しに向けてガレキ撤去作業が行われる3号機で、重量物が転落した使用済み燃料プール水の分析結果(11月26日採取)
※8月29日午後0時45分頃、3号機使用済燃料プール内瓦礫撤去作業において、燃料交換機の操作卓が当該プール東側中央付近に落下したことを受け、当該プール水のサンプリングを継続実施中。放射能分析結果が前回と比較して有意な変動がないことから、燃料破損等の兆候は確認されていない。
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:11月26日)
・セシウム134:2.5×10^2 Bq/cm3
・セシウム137:8.3×10^2 Bq/cm3
・コバルト 60:1.5×10^0 Bq/cm3
3号機使用済み燃料プール水のサンプリング測定は、前回から月に1回の頻度に変更になっている。
リットル当たりの線量に換算
(11月26日採取分)
・セシウム134:250,000 Bq/L
・セシウム137:830,000 Bq/L
・コバルト 60:1,500 Bq/L
前回(10月29日採取分)
・セシウム134:170,000 Bq/L
・セシウム137:510,000 Bq/L
・コバルト 60:1,300Bq/L
前々回(10月22日採取分)
・セシウム134:220,000 Bq/L
・セシウム137:700,000 Bq/L
・コバルト 60:990Bq/L
コバルト-60は、コバルト-59やニッケル-60が中性子を取り込むことで作られる代表的な人工放射能。原子炉では、一次冷却水の配管や冷却水の中に含まれるコバルト-59から生成される。半減期は5.27年。(参照:原子力資料情報室)
1号機 ~使用済み燃料プールの冷却を停止。循環冷却設備点検のため
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・11月26日午前6時10分、循環冷却設備電気品の点検を行うため、使用済燃料プール代替冷却系を停止。なお、冷却停止時の使用済燃料プール水温度は 17.0℃。
福島県のHPによると、1号機の燃料プールには使用済み燃料292体と新燃料100体の合計392体が格納されているとされる。
※滞留水移送は停止状態
2号機 ~トレンチの閉塞材充填作業が始まった翌日、タービン建屋からの滞留水移送先が遠方に
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年11月13日午後3時7分~11月26日午前9時25分)
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月26日午前10時23分~)
※滞留水移送を変更
2号機タービン建屋地下に溜まった高濃度滞留水の移送先を、隣にある3号機タービン建屋から、はるかに離れたプロセス主建屋へ変更したと発表している。
滞留水の移送先変更はこれまでも繰り返し行われてきたが、2014年6月16日の会見では、滞留水の移送先を遠くすると配管内での圧力損失が大きくなるので、結果として「流量が減らせる」、つまり移送する流量をコントロールするために移送先を変更しているという説明が行われていた。
ところが昨日25日には、トレンチの閉塞材充填作業で、トレンチ内の水位上昇が見込まれるため、トレンチから2号機タービン建屋への滞留水移送を断続的に行うとしていた。
トレンチ内の水位とタービン建屋地下水位変化によるとも考えられるが、水位データには大きな変動があるようには見られない。
3号機~4号機
新規事項なし
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送は実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
5号機 ~使用済み燃料プールの冷却を再開
・冷温停止中
・11月25日午前10時28分、原子炉圧力容器および原子炉ウェル水張りを行うため、使用済燃料プール冷却浄化系を停止。(既出)
作業が終了したことから、同日午後4時42分に使用済燃料プール冷却浄化系を起動。運転状態について異常はなく、使用済燃料プール水温度は18.9℃であり(停止時18.3℃)、運転上の制限値(65℃)に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題はなかった。
6号機
新規事項なし
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~セシウム吸着装置を運転
・セシウム吸着装置運転中
以下の装置・設備について新規事項なし
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
セシウムの吸着については、第二セシウム吸着装置(サリー)を主とする処理運転が続けられてきたが、両系統ともに運転していることになっている。「福島第一原子力発電所の状況」には「フィルタの洗浄、ベッセル交換を適宜実施」とある。
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月25日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~1号機海側の過去最高値が赤字で加筆される(地下水観測孔No.0-3-2でマンガン-54が170.00Bq/L)
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
タービン建屋東側(海に直面した敷地が低いエリア)の地下水分析が公開されている上記資料の「前回公表までの最高値」の項目で、前日発表にはなかった地下水観測孔No.0-3-2で、マンガン-54が170.00Bq/Lという数値が赤字で追記されている。前日付けの発表では同じ観測孔のマンガン-54の最高値は、2014年2月20日採取分の0.64Bq/Lだった。
なお、資料の注釈によると「カッコ内は、各値の採取日を示す。〔 〕は平成25年、〈 〉は平成26」とのこと。赤字のマンガン-54は今年2014年11月24日採取分ということになるが、同じ採取日・採取場所のデータはまだ公表されていない。
地下水観測孔No.0-3-2は1号機タービン建屋の海側に位置し、水の出入りを完全に遮断しているわけではないシルトフェンスにも近い。
詳しい説明を待ちたい。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
降雨によってフォールアウト(放射性物質を含む降下物)の影響で井戸などの線量が高まるという推定が事故原発では頻繁に見かけられるが、降雨のあった11月25日には、ドレン孔水も地下貯水槽漏洩検知孔水も最大値に若干の減少が見られた。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月26日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: