千里の道も一歩から。4号機プール使用済み核燃料の搬出完了

iRyota25

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4号機原子炉建屋からのキャスク移動
4号機原子炉建屋からのキャスク移動

photo.tepco.co.jp

廃炉、そして事故原発の安全に向けての大きな一歩

原発事故が最悪の方向に進む時、最も重大な被害をもたらす要因のひとつと考えられてきた4号機の使用済み燃料プール。昨年の11月18日に開始された燃料取出し作業のうち、変形した燃料も含む1331体の使用済み燃料の取り出しが、2014年11月5日に完了しました。

4号機の燃料プールは、原発事故の発生直後、使用済み燃料プールとして最も懸念されていた施設でした。オペレーションフロアにあるプールには、他の号機よりも一桁多い1331体もの使用済み燃料が保管されており、発生する崩壊熱も群を抜いていました。プール冷却がうまく行かなければ、3月末には燃料が露出し、高熱による燃料の溶融、プールや建屋の破壊、さらには燃料の集まり方によっては再臨界までもが心配されていたのです。

さらに、外壁が破壊された4号機の原子炉建屋は、建物の健全性そのものにも不安があり、とくに建物の中上層に位置する燃料プールは、大規模余震による崩壊も懸念されました。健全性は大丈夫と強調した東京電力が、耐震余裕度を向上させるためとして、燃料プール底部を補強したのも危機感の表れだったと見ることができるでしょう。

共用プール搬入後のキャスク
共用プール搬入後のキャスク

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万が一の事態が発生し、冷却がうまく行かなくなった時、破滅的な被害をもたらす危険をはらんでいた4号機から、使用済み燃料が取り除かれ、共用プールへ移送されたのは、廃炉に向けての長い作業を進めていく上で大きな一歩です。

もちろん、これで危険が去ったわけではありません。使用済み燃料が移送され保管されている共用プールの健全な運用や、他の号機のプールに残されている燃料の取り出し、そして溶融して落下したと考えられている原子炉内からの核物質の取り出しなど難問が山積しています。さらに、単純計算で共用プールにおさまりきれない数の燃料を冷やすため、比較的線量が下がった燃料について、乾式キャスクとよばれる設備による燃料冷却も行われています。このプロセスが健全に運用されるかどうかも、今後の核廃棄物管理の在り方を左右する重大問題です。

最終的に、人手に頼って成し遂げられた事業

東京電力が公開した写真には、簡単なキャプションによる説明が付いている程度で状況が分かりにくいのですが、写真そのものから重要なことがいくつか見えてきます。

使用済燃料(変形燃料)取り出し作業(東京電力:平成26年10月31日撮影)
使用済燃料(変形燃料)取り出し作業(東京電力:平成26年10月31日撮影)

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上の写真には変形した燃料の取出し作業といった程度の説明しかありませんが、燃料取出し作業を開始するにあたって、昨年の11月15日に行われた「た燃料取扱機の最終確認」と比べると、違いがはっきりします。

模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(1)
模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(1)

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模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(3)
模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(3)

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模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(4)
模擬燃料を用いた燃料取扱機の最終確認(4)

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おそらく本来の手順と思われる上の3点の写真では、燃料取扱機と呼ばれる装置は機械式です。プールをまたぐように設置されたプラットホームの上に設置されたゴンドラのような場所から操作されています。

しかし、10月31日撮影の写真では様子がずいぶん違います。

防護服を着た人たちは、プールをまたぐプラットホームの反対側で作業しています。写真を拡大するとよく分かりますが、右から2番目、青い腰袋のような物を付けた人が操作している金属棒が、たぶん燃料体を掴むための「手動式燃料取扱機」と言うべき装置なのでしょう。左側のワイヤーは、水中カメラで操作の様子を確認しているのかもしれません。

線量の高い場所での作業になるため、被曝量を抑えるため燃料取扱機などの機器類は、自動化や操作のアシスト機構などが整えられたものだとは思いますが、変形した燃料体などでは、結局は人の手に頼らざるを得なかったことを、この写真は示しています。

福島第一原子力発電所4号機使用済燃料のキャスクへの移動の様子(東京電力:平成26年10月31日撮影)
福島第一原子力発電所4号機使用済燃料のキャスクへの移動の様子(東京電力:平成26年10月31日撮影)

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さらに、ある意味で恐ろしいほどなのが上の写真です。仮設の柵で囲われた四角いスペースに、防護服を着た人が立っています。彼が立っているのはキャスクピット、つまり燃料をプールの外に持ち出すための巨大な容器を納める場所です。

キャスクは四角いスペースの水中に縦に置かれていて、燃料取扱機で引き上げられた燃料体は、この場所まで移動して、ピットの脇のスリットを使って、燃料を空気中に引き出すことなく、水中で作業を完了させます。

本来なら、燃料取扱機で引き上げられた燃料体は、コンピュータのアシストでキャスクピットまで運ばれて、キャスクに納められるべきものです。しかし、キャスクへ入れる最後の難関の部分に、サポートのためなのか、近くで確認するためなのか、仮設の柵しかない場所に生身の人間が立って作業していたということなのです。

使用済み燃料プールとして、最も心配されていた4号機から使用済み燃料が取り出されたのは廃炉に向けての大きな一歩だと言いました。しかし今後、3号機、1号機、2号機で同様の作業を進めていくことになります。4号機よりもはるかに放射線量が高い場所での作業になります。

そんな場所でもやはり最終的には作業員の手に頼らざるをえないとしたら――。

事故原発の廃炉という作業が、想像を絶する困難を伴っていることを、この燃料取出し完了の出来事は物語っています。

【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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