新事務所棟の電気工事で感電事故。その影響で遠く離れた共用プールの電源に警報発生
9月30日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
共用プールの変電設備で電流が大地に流れる「地絡」警報と電源の異常警報。同時刻には遠く離れた新事務棟で作業員の感電事故が発生
「日報」では共用プールでの地絡警報・低圧電源系異常警報の報告に続いて、作業員の感電事故とその後の対応が報告されているが、参考資料によると、感電事故が原因で、遠く離れた共用プールの変電設備に警報が発生したようだ。
※9月30日午前8時26分頃、所内の電源設備(共用プールM/C*)において、地絡警報(共用プールM/C(B)母線地絡、共用プール低圧電源系(B)異常)が発生。
同日午前8時38分頃、共用プール電源系の電圧が正常であること、共用プール冷却に異常がないことを確認。また、1~4号機主要パラメータおよび、モニタリングポスト指示値に有意な変動は確認されていない。
同日8時59分、共用プール電源設備に異常が無いことを確認し、「共用プールM/C(B)母線地絡」、「共用プール低圧電源系(B)異常」の警報をリセット。また、1~4号機のプラント設備においても異常は確認されていない。
*M/C(メタクラ):所内高電圧回路に使用する動力用電源盤
※9月30日午前8時30分頃、新事務棟において、電気関係作業を行っていた協力企業作業員が感電したとの連絡が緊急時対策本部に入ったことから、同日午前8時32分に救急車を要請。
感電した協力企業作業員は意識があり、構内の救急医療室にて心電図検査を実施して異常がないことを確認。
同日午前9時22分に救急車にていわき市立総合磐城共立病院に搬送。
参考資料によると、事故の概要は「新事務棟電源(6.9kV)の本設電源ケーブルを受電キュービクル内で端末処理作業中、充電部に誤って接触し感電した」ということで、被災した作業員は40歳代男性。作業服、ヘルメット、一般靴、一般作業手袋、サージカルマスクという装備だったことからも、共用プールや原子炉からは遠く離れた空間線量が低い場所での作業だったことがわかる。
地絡警報発生の推定原因
■新事務棟高圧受電盤内で受電ケーブル(常用側)のケーブル端末作業中に、予備側より充電されている箇所へ接触したため、地絡が発生したと想定。
■当該地絡の発生により、新事務棟高圧受電盤の受電遮断器がトリップし、新事務棟が停電にいたった。地絡検出警報が瞬時に発生するように設定されている「共用プールM/C(B)」のみに警報が発生した。
「(参考資料)福島第一原子力発電所における作業員の感電災害および地絡警報の発生について」 | 東京電力 平成26年9月30日
6.9kVの所内共通M/C(メタクラ・メタルクラッド)に結線されていた施設のうち、共用プールのM/Cのみが、電源が大地に流れる地絡発生時に警報が発生するように設定されていたため、共用プールの電源だけが警報によって落ちたということらしい。
「同日午前8時38分頃、共用プール電源系の電圧が正常であること、共用プール冷却に異常がないことを確認」とあるのは、共用プールのB系電源が落ちた時、バックアップとしてA系(?)が稼働したためプール冷却には異常なしということだろうか。
1号機~2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月27日午後2時41分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機 ~タービン建屋滞留水の高温焼却炉建屋への移送を停止
1号機と同じ4項目に加え、高濃度滞留水の移送停止を発表
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移実施(平成26年9月24日午後1時33分~9月30日午前9時58分)
※滞留水移送を停止
4号機 ~使用済み燃料プールは冷却停止中
新規事項なし
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※9月29日午前5時17分、使用済燃料プール代替冷却系について、当該系の循環冷却設備電源切替盤の点検を行うため、冷却を停止(停止時プール水温度:21.6℃)。停止期間は約39時間を予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.263℃/hであることから、停止中のプール水温上昇は最大で約34℃と評価しており、運転上の制限値65℃に対して余裕があるため、使用済燃料プール水温管理上問題はない。
5号機 ~原子炉冷却を停止か
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
合わせて、以下の新規事項が発表された。
※9月30日午前10時11分、5号機残留熱除去系(以下、「RHR」という。)(A系)については、原子炉停止時冷却モードにて運転中だが、
点検停止中のRHR(B系)の(B)(D)ポンプの運転確認を行うため停止(停止時原子炉水温度:28.9℃)。
また、(D)ポンプについては、モーターの振動が大きかったことから、点検を実施していたが、モーター軸受(ベアリング)に傷が確認され、新品に交換したことから、交換後の運転確認も合わせて実施。
なお、冷却停止時の原子炉水温度上昇率評価値は0.369℃/hで、停止中の原子炉水温度上昇は約3℃と評価されることから、運転上の制限値100℃に対して余裕があり、原子炉水温度の管理上問題はない。
原子炉がスクラムによって停止し、タービンへの蒸気供給が弁によって止めらた後、原子炉内の冷却を行うのがRHR(残留熱除去系)。A系は運転中という記載が非常に分かりにくいが、B系のポンプ確認のため、A・B系とも停止し、原子炉の冷却がすべて止まっているということらしい。
6号機
新規事項なし
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~9月28日海洋排出時のサンプリング結果
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
同日、この際の南放水口付近の海水についてサンプリングを実施し、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
注:同日とは海洋排出が行われた9月28日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
9月29日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年9月30日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: