報道機関に対して望遠レンズ等での撮影を自主規制してほしいと要請する。地下水バイパスの海洋排出は、3回目にしてほぼタンク1基分を排出
6月2日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
報道関係への要請「福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い」
地下水バイパスや凍土壁工事着工を受けて、マスコミ各社がヘリコプターなどで事故原発敷地内の空撮を行ったことに関して、東京電力が次のようなコメントを発表。建屋の出入口、フェンス、センサー、カメラなどの核物質防護設備の望遠カメラによる撮影をしないように依頼した。原子炉等規制法で定められている核物質防護の観点からの依頼だという。
福島第一原子力発電所における核物質防護に関するご留意のお願い
平成26年6月2日
東京電力株式会社
福島第一原子力発電所における地下水バイパスの排水作業ならびに凍土遮水壁の設置作業について、一部の報道機関より空撮映像が放映・掲載されております。
これらの放映された映像の中には、規制当局から情報管理の徹底を指導されている、原子炉等規制法に定められる「特定核燃料物質の防護のために講ずべき措置」に抵触する事項が含まれております。
再三お願いをしているところですが、今後も、核物質防護上、建屋の出入口、フェンス、センサー、カメラなどの核物質防護設備を望遠カメラ等で撮影をすることはご遠慮いただきますようお願いいたします。
*核物質防護:核物質の盗取又は不法移転、及び個人又は集団による原子力施設の妨害破壊行為に対し、核物質や原子力施設を守ること。
以 上
センサーやカメラといった小さな設備はともかく、建屋入口や外周フェンスなどは、すでに東京電力が発表している写真や資料からどのような状況かはかなりオープンになっている。防護を行う義務を負うている電力事業会社が報道機関に自主規制を要請するのは、筋違いの感が否めない。
地下水バイパス、3回目の海洋排出
タンクグループ2のタンクから3回目となる地下水バイパス水の海洋排出が実施されたことを記載。写真は昨年3月に地下水バイパス設備の設置が進められていた頃のもの。
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備の地下水バイパス揚水井から一時貯留タンクに汲み上げていた地下水について、5月22日に一時貯留タンクグループ2から採取した水の水質確認を行っていたが、5月30日、当社および第三者機関による分析結果において、運用目標値を満足していたことから、(ここまで既出)
6月2日午前10時19分、海洋への排水を開始。同日午後1時42分、排水を終了。排水終了後、漏えい等の異常がないことを確認。なお、排水量は833m3。
地下水バイパスの貯留タンクは汚染水漏れが問題になったのと同じノッチタンクと呼ばれる構造。タンク1基の容量は約1000m3(トン)。配管の関係から1基当たり160m3(トン)の残水が生じるということなので、今回の833m3(トン)という排水量は、ほぼタンク1基分かと思ったら、必ずしもそうではないらしい。
貯留タンクはグループ1,2,3の3系統で各3基ずつの合計9基。排出前の詳細分析はかくグループごとに行われ、基準を満たしていることが確認された上で海洋への排出が行われることになっている。
1回目の排出となった5月21日は、グループ1の3基のうちの1基から排出。
2回目の5月27日はグループ3の3基のうちの1基から排出。
今回はグループ2の3基あるタンク(Gr2-1,Gr2-2,Gr2-3)から排出したと報道一斉メールには記載されていた。今後排出量が増加していくことも予想される。
本日(6月2日)午前10時19分、福島第一原子力発電所における地下水バイパス一時貯留タンク(Gr2-1,Gr2-2,Gr2-3)に貯留してある水の海洋への排水を開始いたしました。
排水状況については、同日午前10時22分に漏えい等の異常がないことを確認しております。
なお、当該タンクにおける分析結果については、当社ホームページに掲載しておりますので、ご参照願います。
URL:http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2014/images/bypastank_140530_01-j.pdf
以 上
4号機プールから共用プールへの核燃料移送は968本
1週間での移送量は44体。使用済み核燃料のみを共用プールに移送したとのこと。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月29日午前10時35分~)
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月19日午前10時6分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
※地下水バイパス揚水井No.1~12のサンプリングを継続実施中。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
高濃度滞留水の誤移送があった集中廃棄物処理施設の、建屋周辺の地下水の水質を検査するためのサンプリングについて記載。
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
6月1日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規記載なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年6月2日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: