2014年2月25日 今日の東電プレスリリース

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2月25日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。本日分は【午後4時現在】の情報とのこと。

 福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日
www.tepco.co.jp  
 東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響について|東京電力
www.tepco.co.jp  

「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。

★ 冷却系にトラブルが続発した一日でした。6機のうち4機に冷却に関するトラブルが発生しています。起きていることの経緯を知るためには、日報だけでは事足らず、報道各位一斉メールや、過去の報道配布資料と照らし合わせることで、出来事のあらましや課題が見えてきます。

★ 4号機の使用済み燃料プールの冷却が、道路工事の作業ミスが原因で停止したというアクシデント。さらに、短い文章で説明されているだけですが、5号機では故意に残留熱除去系(停止原発の冷却系)が全停止されたことが冒頭に記載されています。

冒頭特記事項

◆核燃料の取り出し作業が行われている4号機で、使用済燃料プールの冷却が停止

・午前9時40分頃、所内共通の電源設備など広範な設備で警報が発せられたが、電源が失われたのは4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系のみだった。
・4号機使用済燃料の取り出し作業は10時19分に中断。
・原因は道路掘削工事で誤ってケーブルを損傷したことと考えられるとのこと。
・損傷部分を迂回する電源ラインを確保し、午後1時54分から午後2時16分にかけて4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系を起動。
・電源が1系統になったため、ディーゼル発電機を準備した。

「日報」の更新前に東京電力が随時公開していた「報道関係各位一斉メール」の情報から、経緯を下記のページにピックアップしています。

 【ぽたるページ】2014年2月25日 今日の東電プレスリリース(プール冷却停止)
potaru.com
 福島第一原子力発電所4号機 使用済燃料プール冷却停止について | 東京電力 平成26年2月25日
www.tepco.co.jp  

トラブル発生個所の写真などが掲載された報告です。(PDFファイル)

道路掘削工事で誤ってケーブルを傷つけたという記載から、重機による事故だと早合点していましたが、この報告によると「雑固体廃棄物減容処理建屋(高温焼却炉建屋:HTI)への地下水流入を防止するための、地盤改良に伴うボーリング掘削中に、地盤から約-1m地点のエフレックス管のケーブルが損傷した」ということだったようです。

◆5号機の冷却を停止

冷温停止状態にあるとされる5号機の冷却系が、関連機器の検査のため全停止されたとの記載です。
(2月26日午前9時30分現在、プレスリリース、報道関係各位一斉メール、報道配布資料に、この件について説明したものはありません)

内容を要約します。

▼残留熱除去系(停止している原子炉から発生する熱を冷却するシステム)A,Bの2系統があるが、A系は点検停止中。

▼原子炉格納容器の下にドーナツ型に配置されているサプレッションチェンバーそばにある、液体から固形物を除去するためのストレーナー(濾し器)の健全性確認のため、25日午前10時15分にB系を停止。

▼A系はすでに停止しているため、B系停止により全系停止となる予定。

▼原子炉水温度は33.5℃、原子炉プール水温度は33.6℃。

▼運転上の制限値100℃に対して十分余裕があるので管理上問題はない。

以下、本文を引用します。

※2月25日午前10時15分、5号機サプレッションチェンバー側吸込ストレーナの健全性確認を行うため、残留熱除去系B系については原子炉停止時冷却モードを停止。原子炉水温度は33.5℃。現在、残留熱除去系A系は点検停止中のため、B系停止により全系停止となる予定。2月25日午前5時時点の5号機原子炉プール水温度は33.6℃であり、原子炉停止時冷却モード停止中の原子炉水温度上昇率は0.5℃/hで停止中の炉水温度上昇は約4℃と評価されることから、運転上の制限値100℃に対して十分余裕があり、原子炉水温度の管理上問題ない。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

疑問点をあげます。

◆A系の点検が完了するまで待てないほど、ストレーナーの健全性確認は緊急性を要するものだったのか。

◆同日発生した4号機の燃料プールの冷却停止では、「4号機使用済燃料プール水温度は停止時の13.0℃から13.1℃に上昇しましたが、運転上の制限値65℃に対して十分余裕」との記載があるのに、ここでは「運転上の制限値100℃」とされている。

◆(細かいことですが)A系は停止中、B系は10時15分に停止したと記載されているのに、「全系停止となる予定」と表現されている。停止の事実が述べられた後に「予定」という言葉があり、出来事の時系列が読めない。

★ 冷温停止中の原子炉は、冷却し続けることこそが最も重要です。水温が33.5℃で温度上昇率0.5℃/hということは、冷却が5日半停止し続けると原子炉水は100℃に達することになります。かりに短時間で片付くと見込まれる作業のためであったとしても、冷却を停止することには細心の注意・配慮と、説明が求められるはずです。残留熱除去系を停止した後、何らかのトラブルで再起動できなかった場合に備えて準備されていたであろうバックアップ体制も含め、より詳細な情報が求められます。

1号機(平成24年4月19日廃止)

新規事項なし。

・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

2号機(平成24年4月19日廃止)

1号機と同じ4項目に加え、2号機タービン建屋→3号機タービン建屋へ高濃度滞留水を移送(平成26年2月22日午前10時37分~)を記載。

新規事項としてシルトフェンスの除去を報告。

・2月25日、海側遮水壁工事(港湾内)における遮水壁内側の埋め立てにより、2号機スクリーン室前面に設置したシルトフェンスを撤去。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

スクリーン室とは、冷却用の海水を取水するポンプ前に設置された「ふるい」のスペースと思われます。港湾内の埋め立てを進めているため、取水口前に設置されていたシルトフェンスを撤去したという意味です。

シルトフェンスは海中にカーテンのように吊るされた幕で、海水そのものを遮蔽するのではなく、水の動きを抑えることで固形物の沈下を期待して設置されていたものです。

 福島第一原子力発電所 海側遮水壁工事の進捗状況について | 東京電力 平成26年1月27日
www.tepco.co.jp  
 1.海側トレンチについて | 東京電力 平成25年7月18日(PDF)
www.nsr.go.jp  

スクリーンの位置が示されています。

3号機(平成24年4月19日廃止)

1号機と同じ4項目に加え、3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)への高濃度滞留水移送(平成26年1月24日午後2時37分~)を記載。

新規事項として、使用済燃料プール冷却に使う水の冷却方法を変更する計画の遅滞が伝えられた。

・2月24日、使用済燃料プール代替冷却系の二次系冷却塔のろ過水による散布水停止について、現在使用している冷却塔B系をA系に切り替えて行う予定であったが、冷却塔A系のファンベルトに緩みが確認されたため中止。二次系冷却塔の散布水停止については、冷却塔A系のファンベルト調整が整い次第実施予定。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

これだけでは、何が何だかわかりませんね。2月21日の報道配布資料「福島第一原子力発電所の状況」には、次のような説明があります。

3 号機使用済燃料プール循環冷却設備二次系冷却塔は、ろ過水による散水とファンによる送風で冷却を実施しているが、冬季の凍結防止対策として、ろ過水による散水を停止し、冷却塔のファンのみで冷却する対策の検討のため、散布水を停止した際の影響調査を実施予定(使用済燃料プールの冷却は継続)。

なお、当該の散布水停止期間の約10 日が経過した時点で、改めて評価を行い、温度上昇率が想定内であり安定していると判断された場合、更に10 日間程度、散布水の停止を実施予定。

また、使用済燃料プール循環冷却設備による冷却が全て停止したと保守的に仮定した場合でも、当該期間において、実施計画で定めている65℃以下を満足することを確認している。

福島第一原子力発電所の状況 | 東京電力 平成26 年2月21 日

使用済燃料プールを循環している水を間接的に冷却する二次冷却水を冷やすためのクーリングタワーで、これまでファンによる冷却と、シャワーのように水を散布する冷却を併用してきたが、凍結防止のために散布による冷却を停止する方向で作業を進めてきたが、冷却塔A系のファンベルトが緩んでいてファンによる冷却がうまくいかない恐れがあるため、調整することになった。
――ということらしいです。

4号機(平成24年4月19日廃止)

・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中

新規事項として、下記の記載あり

・使用済燃料プール循環冷却システム二次系停止中

※ 報道各位一斉メールには、「午後1時54分から午後2時16分にかけて4号機使用済燃料プール代替冷却系二次系を起動しました」とありますが?

 福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール冷却停止について(続報3)|東京電力 平成26年2月25日
www.tepco.co.jp  

5号機(平成26年1月31日廃止)

新規事項なし。

・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

※ 冒頭には、残留熱除去系が全系停止と記載されています。

6号機(平成26年1月31日廃止)

・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

新規事項として「報道関係各位一斉メール」で配信された内容が報告されている。

▼タービン補機冷却水系熱交換機(C)海水出入口弁他の点検を行うため、プール冷却に使ってきた6号機補機冷却海水系を停止。

▼停止中は残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)で冷却を行う予定どおり、A系で冷却していた。

▼しかし、A系から圧力抑制室へ水が流れ込んでいたのが確認されたので、B系統への切り替え準備を進めた。

▼よく調べてみると、水が漏れているのはAB二系統が共用しているポンプ吸込ラインの安全弁から漏れている可能性が高いことがわかった。

▼B系に切り替えることはせず、A系を再稼働した。25日の午前中に補機冷却海水系の復旧作業を始めて、午後5時までに補機冷却海水系によるプール冷却再開の予定。

――といった内容。
記載を以下に引用します。

 午前10時33分、6号機補機冷却海水系の全台停止に伴い、6号機使用済燃料プール冷却系を停止。使用済燃料プール冷却系停止時の使用済燃料プール水温度は16.7℃。同日午後0時41分、残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を開始。午後1時10分の使用済燃料プール水温度は17.3℃。その後、6号機残留熱除去系A系(非常時熱負荷運転中)の系統水の一部が圧力抑制室に流れていることを確認したことから、午後7時8分に残留熱除去系A系を停止し、B系の起動準備。残留熱除去系A系からB系への切り替えに伴い、漏えい箇所を調査したところ、残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)にある安全弁から系統水の一部が圧力抑制室に流れている可能性が高いことから、B系の起動は実施せず。その後、2月25日午前1時28分、残留熱除去系A系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を再開。再開時の使用済燃料プール水温度は19.5℃。同日午後3時52分、補機冷却海水系の復旧が終了し、使用済燃料プール冷却系の運転に切り替える準備が整ったため、残留熱除去系A系による非常時熱負荷運転を停止。残留熱除去系A系による非常時熱負荷運転停止時の使用済燃料プール水温度は19.0℃。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

 (参考)福島第一原子力発電所の状況 | 東京電力 平成26 年2月21 日(PDF)
www.tepco.co.jp  
 【ぽたるページ】2014年2月25日 今日の東電プレスリリース(プール冷却停止)
potaru.com

共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況

新規事項なし。

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況

引き続きタンクの監視と、タンク周辺のサンプリングを実施していると記載。新規事項はパトロール結果とサンプリング実績。

<最新のパトロール結果>
平成26年2月24日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

1~4号機タービン建屋東側の状況

原子力発電所で海に面したエリア。地下水のくみ上げとサンプリングによる監視が行われるが、新規事項としての記載は最新のサンプリング実績のみ。

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

タービン建屋東側も含む1~4号機建屋周辺地下水の詳細分析結果のリリースを下記にリンクします。

 福島第一原子力発電所1~4号機建屋周辺地下水の詳細分析結果 | 東京電力 平成26年2月25日
www.tepco.co.jp  

地下貯水槽の状況

止水の不備から貯水槽として利用できなくなった地下貯水槽。新規事項としては最新のサンプリング実績を記載。

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日

 福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年2月25日
www.tepco.co.jp  

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月25日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太

 【ぽたるページ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
potaru.com

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