ボランティアに参加したら、蛤浜の夢が自分の中に入ってきた

iRyota25

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渡波から万石橋を渡り鮎川浜へ向かう県道の上り坂を走っていく。風越トンネルを抜けて約600m。右に分岐して海岸へ下る道に入る。下り終えたらそこが蛤浜。石巻の駅前から車で約30分。牡鹿半島でいちばん小さな浜。まるで秘密の隠れ家のような浜だ。

きれいな海が魅力なのは勿論だが、今日はあえて回れ右。海を背にして山に向かう。

海岸から三角形の小さな平地が山に向かって伸びている頂点の辺りが今日の作業場だ。
右側、美しく積み上げられた石垣の上にはCafeはまぐり堂がたっている。
左側、津波の被害地を整地した場所から緑の緩斜面が気持ちよさそうな広がっている。
でも、今日の作業場は三角形の頂点の辺り。
植林された杉の木の枝打ち作業だ。

本日の作業は枝打ち!

基本的に毎日ボランティアを受け入れている蛤浜再生プロジェクトだが、この日は参加者が割れた。当初予定では東京からの5~6名と静岡からの2名の合同で作業の予定だったが、東京組の参加がお昼近くにずれ込んだ。静岡組は午前中だけで引き上げることになった。

蛤浜再生プロジェクトの島田暢(とおる)さん
蛤浜再生プロジェクトの島田暢(とおる)さん

「朝のうちは2人だけなんで、杉林の枝打ちをやりましょう!」

朝のミーティング、明るく爽やかな笑顔で元気な声を発したのは、蛤浜プロジェクトの島田暢(とおる)さん。前回会ったのは石巻の川開き祭りにCafeはまぐり堂が出店したテントだった。その時の島田さんは浴衣がキリッと似合っていたけど、頭に手拭いを巻いた仕事人スタイルも様になっている。

この日の作業はこんな感じ。
高枝伐り鋏の先に20cmくらいのノコギリのアタッチメントを装着して、できるだけ高いところまで枝を切り落とす。ロープを使ってお猿さんのように木の幹を登って、鉈で枝をバシバシ落としていくというイメージとはまるっきり別物の作業。数メートル先の頼りないノコギリアタッチメントが枝から外れないように注意しながら、ギーギーと少しずつ枝を切っていく。足元が悪いところでずっと上を見上げながらの作業だ。

こんなに柄の長いノコギリ見たことない!

こんなに柄の長いノコギリ見たことない!

島田さんはと見てみると、
「えへへ、秘密兵器。これ、林業用のプロの道具なんです」
と、6メートルもある大きな枝打ちノコギリを持ち出してきた。ノコ刃部分の先端と付け根が、三日月みたいに飛び出していて、ノコが枝から外れにくくできている。
「いいなー、よく考えられた道具ですね」というと、
「でもこれ、すごく重たいんですよ」と笑いながら、太っとい枝にノコギリを引っ掛けて、グイグイグイと力強く挽き始める。

笑顔だけど、そうとう重労働です

笑顔だけど、そうとう重労働です

島田さんの額から汗が流れる。ぽたぽたと音を立てるほど大粒の汗だ。
やがて、軋むような音を立てて、太い横枝が落ちる。
1本伐り落とすと、すぐに次の枝にノコギリを掛けて、またグイグイグイ。
朝方ザザーッと雨が降った後、真夏のような日差しが戻ってきて、しかも風がほとんどない日だったから、森の中はむんむん。全員汗だらけ。

暑さでフラフラになりながらも、なんとか予定していた範囲の枝打ちがお昼前には終了した。大きな枝のほとんどは島田さんが切り落としていたようなものだったが。

Cafeの高台からう撮った写真を強引にパノラマ風に加工してみた。右の奥の方が枝打ちした現場
Cafeの高台からう撮った写真を強引にパノラマ風に加工してみた。右の奥の方が枝打ちした現場

自分にも見つかった「蛤浜で○○しよう!」

一番太い枝の年輪を数えてみたら、軽く30以上!
「うっそー!」とか「すげー!」とか、そんな作業がらみの話も楽しかったけど、もっと面白かったのが島田さんが話してくれた蛤浜の夢。

島田さんは鹿児島県の種子島出身。高校卒業後、名古屋方面でクレーンオペレーターや鳶の仕事で経験を積み、そろそろ独立を考えようと島に戻っていた時に震災が起きた。石巻でボランティアをしながら、起業するなら被災地で建設関係の仕事と決心する。

けれど、被災地でいろいろなことを経験する中で、建物は外側じゃなくて、中身こそが大切なんだと考えるようになる。そんな時、蛤浜の亀山先生に出会った。

「今年の3月11日、ようやくカフェはオープンできたけど、蛤浜全体をいろいろ楽しめる場所にしていきたいんです。ここの海はカヤックとかSUP(スタンドアップパドルボード)とか海の上のマリンスポーツをするのにぴったりの場所だし、シュノーケリングやダイビングも楽しめる。漁業体験もできる。山ではバーベキューしたり、キャンプしたり。枝打ちをしてもらったこの辺りにも、テーブルを並べて森のカフェにするのもいいですね。飲み物や食べ物はワイヤーに籠を付けて上のカフェからロープウェイみたいにして運んで来たりしてね」

「うわぁ、それいい!」

「いろいろなことができると思うんです。やってきた人が思い思いに楽しめるような場所にして行きたい。自分はプロジェクトのスタッフとして勤務しているので、実は休日もあるんですよ。でも、休みの日に家にいてもやることはあまりない。でも、ここに来れば何かやることがある。だから休日にもつい来てしまうんですよね」

亀山先生の思いからスタートしたプロジェクトが、出会った人たちの夢と融合して、小さな浜を変えていく。島田さんの夢、ヒロ兄の夢、きょんちゃんの夢…。(固有名詞ばかりですみません)
ボランティアやカフェのお客さんとしてやってきて、この浜の海と山と人々の美しさに心を掴まれてしまったたくさんの人たちの夢も加わって、牡鹿半島でいちばん小さな浜が育っていく。

石巻で「鹿児島ナイト」を仕掛けたり、将来の蛤浜の姿の研究のため中越地方を訪ねたり、まだまだたくさんいろんなこと!
石巻で「鹿児島ナイト」を仕掛けたり、将来の蛤浜の姿の研究のため中越地方を訪ねたり、まだまだたくさんいろんなこと!

その晩、こんな夢を見た。
「カフェから森までロープウェイみたいにつないで」という話がどんどん展開していって、この浜の思いがぎゅっと凝縮しているCafeはまぐり堂と、蛤浜の海や山、いろんなアトラクションや施設がワイヤーやターザンロープやカーペットでつながって、いろいろな場所で、いろんな人が夢見たことが、ぱたぱたと不思議な細工が開いていくみたいに実現していく。

遊びに来たこどもたちが、次はこんなのがあればいいな、とわいわい言い合って、ツリーハウスみたいな、秘密基地みたいなのをつくり始める。

海で遊んでた子は、海で泳いだ後、ビーチでゴミを拾ってくる。拾ってきたゴミの中からガラスのかけらとかキレイな貝殻とかを取り出して、これでランプシェード作れないかな、なんて相談している。

そして自分はというと、「この沢の水、うまい!」と森の奥の小さな沢で力説してる。
(震災の時、避難した浜の人たちが実際にその沢の水を飲んでいたと聞いて、試しに飲んでみたら、ほんとに甘くて美味しかったという体験がしっかり夢になっていた。現実世界でも島田さんときょんちゃんに力説していたもんなぁ)

きっと夢は正夢だ。
蛤浜で夢見たことは、きっと叶うような気がする。

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きっとあなた自身の夢もこの場所に刻まれて、
将来が楽しみな場所になる。
蛤浜へ、ぜひ!

牡鹿半島でいちばん小さな蛤浜

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【ぽたるページ】夏の終わりの Cafe はまぐり堂
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Cafe はまぐり堂のオープンテラスからの海の景色
Cafe はまぐり堂のオープンテラスからの海の景色

●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)

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