東北、この一枚。(9)避難指示解除準備区域内にオープンしたコンビニ

iRyota25

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8月26日、福島県楢葉町の6号線沿いに「セブンイレブン 楢葉下小塙仮設店舗店」がオープンしたというニュースを聞いて、翌日さっそく出かけてきた。

「避難指示解除区域」というのは、かつて警戒区域や計画的避難区域とされていたエリアが見直された新たな区分けのひとつ。放射線の年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域で、日中のみ立ち入りが認められている。

宿泊はまだできないが、
昼間の活動は許されているので、
除染作業や、家の片づけなどを行って、
帰還できるその日に向けてがんばりましょう!

というエリアだ。
しかし、昼間の立ち入りが許されたと言っても、住んでいる人がいないから、
お店屋さんもほとんどやっていない。
デッキブラシや手袋、マスクなど、除染に使いそうな道具を扱う金物屋さんが、
何軒かシャッターを開けているくらい。

そんな状況の中でオープンしたのがこのセブンイレブン。
お弁当もお菓子も飲み物も軍手も洗剤もゴミ袋も扱っているコンビニだから、
住居周りの片付けにやってくる住民たちにとって強い味方になるものと
大いに期待されてのオープンだ。
前日のニュースによると、オープニングには副知事も参列したという。
それだけ注目度が大きいということだ。

うーん、今のところは現業の人がほとんどですね。

「昨日開店だったんですね。おめでとうございます」

商品を並べていた店長さんに声を掛けてみた。

「ニュースで見ましたけど、地元のお客さんはいらしてますか?」

ちょっと苦笑しながら店長さんが答えてくれるには、

「いやぁ、これからですね。いまはご覧のとおり現業の人がほとんどです。でも、町の人たちにも早く来てほしいですね」

たしかに。
昼過ぎの時間帯だったのだが、
店内のお客さんは、作業服をバシッと決めた人ばかり。

それでも、店長さんの笑顔がとても前向きに思えた。
戻ってくるための作業をしにやってくる地元の人たちを応援したいと、
本当にそう願って店を開けたんだろうと感じた。インスピレーションのようなものでしかないのだけれど。

「原発に一番近いコンビニ」は特別な存在だ。原発を鎮めるために毎日作業に通っている人たちにとって、最前線のコンビニは、その日の昼食や飲み物など、日常(こちらがわの世界)につながる物を入手できる最後の最後の場所だからだ。
原発の北側の検問があった南相馬市・大甕(おおみか)には、検問所のすぐそばにコンビニがあった。早朝6時過ぎにそのコンビニに行くと、お弁当のたぐいが陳列棚からはみ出すくらいに大量に並べられていたのだが、その2時間後の8時過ぎに同じ店を訪ねると、陳列棚は空っぽ。完全に空っぽ。原発の作業員が店中の商品を毎朝まるごと買い取っていたのだ。その消費の凄まじさに驚かされたのは1年以上前のこと。

でも、この前日にオープンした楢葉下小塙仮設店舗店には、
そこまで激烈な物々しさは感じられない。
たぶん、原発出勤時の朝の混雑は大変なものだろう。
しかし、この店にはお弁当だけではなく、
ふつうのコンビニ店舗に置かれている商品が、
ふつうの顔をして並んでいた。

原発作業員御用達の特別な店、ではなく、
いろいろな人に来てもらいたい店として営業されている、
その雰囲気を、店内の様子と店長さんの笑顔に感じた。

立入できない場所に人々が自由に出入りできるようになるまでに、
どれだけの時間がかかるのか分からないが、
「最前線のコンビニ」のふつうの頑張りに期待したいと思う。

 東北、この一枚。
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セブンイレブン 楢葉下小塙仮設店舗店

避難指示解除準備区域内にオープンしたコンビニ

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●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)

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