●9月某日、東京・新宿。


　ボクは、某メンズエステ店に来ていた。

●その日、ボクは家でダラダラしていた。

今年は海で泳ぎたいなー（冷たいお茶ｺﾞｸｺﾞｸ）
　　　　　　　　　　　（雑誌ﾍﾟﾗｰ）

『男は中身だと思うけどー、
　第一印象はどうしても見た目だよねー』
（雑誌より抜粋）

『とりあえず、チビでデブな男はありえないよね（笑）』
（雑誌より抜粋）

↑身長159cm

…………。（お腹ﾁﾗｯ）

（なんてことだ……なんてことだ……）

大手O&Aサイトです

■質問者
『彼氏にしたい男の条件を教えてください』

矛盾してねぇ？

回答者A
『世の中見た目じゃないとは思いますが……、
　やっぱり男性の体型は気にしてしまいます』

あなたの身体を見てみたいものです

回答者B
『背が高いに越したことはありませんが、
　チビは我慢できます。でもメタボはちょっと。
　自己管理が出来てない印象を受けてしまいます』

↑身長159cm、最近太り気味

（女なんて……女なんて……）（TVのスイッチON）

「茅ヶ崎の海水浴場から中継でーす！！」

「背が高くてイケメンの彼氏が欲しい～～～～～」

「細マッチョな彼氏に抱かれたい～～～～～」

----------------------------------------------------------------------------------------■登場人物

【 ボク 】低身長な26歳。容姿に自信が持てない。学生時代までは普通の体型だったが、社会人になってからは腹が急成長してきた。「低身長な上に太るのはヤバい」と、一応危機感は抱いている。
----------------------------------------------------------------------------------------

うわあああああああああああん（ﾊﾟｿｺﾝｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ……）

『メンズエステ お試し体験コース 1,000円～』

これだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！！

あああああああああああああああ

ああああああああ

あああ

…………………………

●予約時刻は17時。
　受付でアンケートを記入して待っていると……、

失礼します～

はい？

こんにちは☆
本日担当させて頂きます、ナカヤマ（仮名）と申します

（美人…………！）

----------------------------------------------------------------------------------------■登場人物

【 お姉さん 】僕が訪れたメンズエステのスタッフさん。手の小さな小柄美人。タカラヅカが大好きらしい。
----------------------------------------------------------------------------------------

●同世代くらい？小柄でかなりの美人が登場！
　まずはカウンセリングルームでカウンセリングを受けることに。

どういった点が特に気になっていますか？

（ゲッ、説明すんのかよ！）

えー……と、お腹まわりが気になってて……その……

（なんやこれ、むっちゃ恥ずい……！）

そうなんですね～、パッと見た感じはそれほどですけどね～

はぁ、自分でも外見はそこまで酷くないと思うんですけど……

（初対面の女性に自分の身体について説明するとか……、
　どんな罰ゲームやねん！）

ちなみに今回は、このあと結婚式とかご旅行とか、
ご予定はありますか？

ゆ、友人と会います。

へぇ～彼女さんですか？？

いえ、大学の先輩集団と……

（なんか色々聞いてくる……！('A`)）

●なんだか色々と聞かれるカウンセリングが終了。
　打ち解けるためなのか？契約に結び付けるための情報収集なのか？
　とにもかくにも、いよいよ施術へ……

それでは、ここに紙パンツとガウンがありますんで、こちらに着替えて待機してくださいね。

（紙パンツ！？）ワカリマシタ……

■着替え
紙パンツ　⇒　すき間が出来やすそうなトランクス型、紺色で微妙に透けてる。
ガウン 　⇒　今まで着たことがない。

………………。

（なんだか、いろいろ未知すぎて怖くなってきた……）

●まずは身体測定。体重以外にもいろいろ計れそうな体重計に乗る。
　紙パンツ一丁、自信の無い身体の僕。さっき会ったばかりの白衣の美人スタッフ。
　そして個室ブース。なんなんだ。なんなんだ、これは……。

はい、グッと深呼吸して、このバーを持ち上げてください

ふっ…………！

（ピピ）

わっ、やっぱり！！

……ボクさん、体重も皮下脂肪も全く問題ないです。

ただ……“内臓脂肪がちょっとタイヘン”です！！

…………！？

ボクさん、普段は鍛えていると仰ってましたし、実際に“筋肉質”です。それに食事も野菜中心と仰っていたとおり、食生活が原因の“皮下脂肪もそれほどありません”。

……なのに、“肥満”なんですか？

いや、まったく“肥満ではありません”。
でも、“内臓脂肪だけ極端に数値が大きい”です。
正直……“生活習慣病予備軍”ですね！

んんん…………？？？

●最初は理解できなかったが、お姉さんはていねいに説明してくれた。

　ボクの場合、いわゆる【指でつまめるたるんだ脂肪＝皮下脂肪】は人並み程度。
　つまり、肥満ではないそうだ。

　しかし、【内臓の周りを覆う脂肪＝内臓脂肪】が極端に多いらしい。
　いわゆる、“メタボ”だそうだ。

　ボクは「肥満＝メタボではない」ことを、ここで初めて知った。

“内臓脂肪は、内臓を冷やさないためにできる脂肪”なんです。

内臓を冷やさない？

つまり……、

ボクさん、冷たい食べ物とか大好きじゃないですか？

あ、はい。冷たい麦茶とか、寝る前によく飲んだりします

あぁ、やっぱり……。

正直、それが最悪です。内臓を冷やすから、内臓に脂肪ができてしまうんです。食事は健康的、毎日運動もしているボクさんがメタボ予備軍なのはそれが原因だと思います。

うええええ、マジっすか……！！

（知らなかった……！）

人間は睡眠中も内臓が活発に働くんです。でも、そうして内臓を冷やしてしまうと、全体的に内臓の機能は落ちてしまうし、代謝も悪くなるんです。そういったところから生活習慣病になったりもするんですよ……。

そ、そうなんですか……

（可愛い顔して、目がマジすぎるから怖い……）

●「どうせ、不安を煽るだけ煽って契約に持ち込むんでしょ？」……なんて思って
　いたのだが、ボクの状態はそういう“駆け引き”を抜きにしても酷いのではない
　だろうか。そんな不安が押し寄せてきた。

　それより何より、店員さんと客という関係とは言え、女性に身体のことを指摘
　されるのはけっこう堪える……('A`)

ボクさん、服を着た状態だと普通の見た目なんですよね。だから、たぶん内臓脂肪型だと思ったんですが……（苦笑）

（プ……プロが苦笑している……）

（そんなに酷いのか……）

つまり、筋肉の下に内臓脂肪があるんです。

“握りこぶしで7個分”ですよ！

だからほら、お腹がとてもカタいんです（ﾋﾟﾄｯ）

（えっ、普通にお腹触ってくるの……！？）

（ﾄﾞｷｰﾝ！）

●ショックを受けたり、緊張したり……。何かと忙しい。
　それもこれも、メタボ宣告されたボクのお腹が原因だった。

そうですねェ、まずこの内臓脂肪を燃やすためにゲルマニウム温浴をしましょう。

（お腹ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ）

……ｹﾞﾙﾏﾆｳﾑ……

（ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ……だと……？）

はい！物を燃やすには酸素が必要ですよね？内臓脂肪も一緒で、体内に酸素が無いと燃えないんです。ゲルマニウムは体内の酸素量を増やし、血液を浄化する作用があるんですよ！

（お腹ﾌﾆﾌﾆ）

なるほど…………

（ﾌﾆﾌﾆ……だと……？）

※決してそういうお店ではありません。

●さて、ボクの事前の測定結果はこんな状態

　　身長 　　　　　159.0cm
　　体重 　　　　　 58.8kg
　　体脂肪率　　　 18.8%
　　内臓脂肪レベル LV.11

　体脂肪率は適性の範囲内。ただし「内臓脂肪レベル」が高いらしい。
　いやはや、どうなるのでしょうか……。

●まずはゲルマニウム温浴

　お姉さんに案内され、ゲルマニウム温浴スペースへ。女性スタッフが多いものの、
　男性スタッフもちらほら。スタッフさんはみんな愛想が良いのだが、僕はガウンに
　紙パンツという「安っぽいプロレスラー」みたいな恰好なので若干恥ずかしい。

ではここに腰かけて頂いて、こちらを向いてください

はい

ここで15分間、ゲルマニウム温浴をしてもらいます。ボクさんの身体の場合、栄養や血液の流れが全部お腹まわりで悪くなってしまうんです。だからメタボの人は生活習慣病になりやすいんですよ

なるほど……

ゲルマニウム温浴では、腕と足を浸けて頂いて身体の外側から効果を促していきます。内臓脂肪が少ない方だと全身から汗が出るんですけど、ボクさんの場合、もしかするとお腹からは汗が出ないかも知れません。

そういうモンなんですね……

（なんか、情けないな……）

●お姉さんに腕と足を消毒してもらったあと、15分間、ゲルマニウムの粉が溶けて
　いるというお湯に腕と足を浸け続ける。

　一般的には「ゲルマニウムの効能については科学的根拠がない」とされているそう
　だが、実際に腕と足を浸けているとめちゃくちゃ気持ち良いし、なんだか身体に
　効いている気がする。

どうしても熱かったら手足を出してもらっても大丈夫ですよ
（ﾆｯｺﾘ）

は、はい……

………………、

（この店のスタッフ、美男美女しかおらへんな……）

（そりゃそーか。美容業界やし……）

（ピピピピ！）

お疲れ様でした～！

●こうしてゲルマニウム温浴が終了。けっこう汗をかいたのだが、お姉さんが言った
　とおり、お腹まわりからはほとんど汗が出ていなかった。

どうでした～？

いやっ、気持ち良かったですけど……、お姉さんが言ったとおり、お腹からは全然汗が出なかったです。

あちゃー、やっぱりそうでしたか。こうしてエステでかく汗って、“身体によくない毒素がいっぱい出る”んですけど、結局内臓脂肪が邪魔しちゃうんですよね。継続すれば、お腹から汗も出るようになると思いますよ。（ﾆｯｺﾘ）

たしかに、そんな気がしてきた……

●続いてリンパマッサージへ。お姉さんに促されるまま、紙パンツ一丁で、ベッドの
　上にうつぶせに寝転がる。情けない姿だと思うが、正直、悪い意味で慣れてきた。

リンパって聞いたことありますよね？簡単に言うと、“人間にとって良くない毒素や老廃物を流す道みたいなモノ”なんですけど……、ボクさんの場合、これが内臓脂肪のせいで流れが悪くなるんです。

こうなると、最悪、“糖尿病”や“高血圧”といった“生活習慣病になる可能性が出てくる”んですね。リンパマッサージはその流れを外から良くしていくマッサージです。

なるほど……。

（わかったような、わからないような……）

じゃあ、始めますね☆

●オイルらしきものを手に取ったお姉さん。リンパマッサージとやらが始まった。
　正直、この情けない身体をベタベタ触られてしまうなんて、羞恥以外の何者でも
　ない。

（無心だ……、無心になるのだ……）

（無心……、修行僧だ……）

（脇腹ﾓﾐﾓﾐ）

ｎブはっ！？（ﾋﾞｸｯ）

どうしたんですか！？

●脇腹が弱いボクはなんとか耐えながら、今度は仰向けに。マッサージ自体は気持ち
　良かったが時々痛くもある。痛いときはそこの血行が良くないらしい。

だいぶ柔らかくなってきましたね、お腹。（ﾌﾆﾌﾆ）

お、おぉー
（↑自分のことなのに、どうリアクションしていいかわからない）

これも続けていけば、かなり柔らかくなると思いますよ。脂肪が固いと本当に痩せにくくなるんで。

（ここまでしてもらって1,000円だと安いなぁ……）

そういやさっき、別のスタッフがボクさんの数値を見て驚いてましたヨ

ふえ？

すみません、私から見せたわけじゃなかったんですけど、ボクさん見た目は普通なのに、内臓脂肪の数値が大きめだったんで。『えー！これさっきの人ですか！』って。

（スタッフ内で身体のデータが一人歩きしてるやん……）

●こうしてリンパマッサージも終了。オイルと汗とで身体がベシャベシャになったが、
　「ここから更に汗をかきますよ～」とお姉さん。

次はコレです！

あ、なんか見たことがある……かも。

電気マッサージとかやったことあります？コレは“テクトロン”といって低周波治療器ですね。もっと色々手でやろうかと思ったんですけど、あたしの力じゃ厳しそうなので機械に頼っちゃいます☆

な、なんかスゴそうですね……

（ちょっと残念な自分がいる……）

●テクトロンを身体に装着。ここから電気を流すことで“運動では鍛えにくい
　インナーマッスルを鍛える”らしい。

インナーマッスルは深層筋とも言って、いわゆる身体の内側の筋肉ですね。ここに電気を流して運動させます。

“この筋肉が鍛えられていると、代謝が活発になって太りにくく痩せやすい身体になる”んです。今回はそれを刺激したいと思います。（ﾆﾔﾘ）

へぇ～

ボクさんがふだんされている、腕立て伏せや腹筋といったトレーニングは身体の外側の筋肉を鍛えているんです。だから今は引き締まっているんですけど、少しでも衰えると一気にユルユルな身体になっちゃうんです。だから身体の内側の筋肉を鍛えましょう！

（ピピッ）

そうなんでｓ……グふッ！？

(((ﾋﾞｸﾋﾞｸﾋﾞｸﾋﾞｸ……)))

あっ、大丈夫ですか？

一応これ、12段階の レベル１ なんですけど（ﾆｯｺﾘ）

が……ハっ……Maじdeathか……ッ

(((ﾋﾞｸﾝﾋﾞｸﾝ)))

じゃあ、まずはこれで10分ほど続けてみましょうか！（ﾆｯｺﾘ）

あ……ｷﾞ……わかり…ま舌ッ……

(((ﾋﾞｸﾝﾋﾞｸﾝ)))

●しばらくはテクトロンから流れる電気に悶えていたものの、段々と平気になって
　きた。ちなみに、このテクトロン15分で刺激されるインナーマッスルの運動量は、
　マラソン7～8時間分相当だとか。

※ ↑ うろ覚えです！！スミマセン！！

どうですか～？慣れました？

はい……、なんとか。

じゃあ、少し出力を上げましょうか（ﾆﾔﾘ）

（ピピピ）

へ……ふッﾂﾞｯﾂｨ！？？

(((ﾋﾞｸﾝﾋﾞｸﾝ)))

ふふふ♪

さっきが １ だったんですけど、これでいくらかわかります？

ぁ……ゃ、これわ ４ くらイ逝っ℡んぢゃないdeath蚊……？

(((ﾋﾞｸﾝﾋﾞｸﾝ)))

残念、まだ ２ なんですよ♪（笑み）

（この人……Ｓやろ……）

●そんなこんなでテクトロンを続けつつ、お姉さんは布団のようなものでボクを
　包み始めた。

これも継続すると出力 ７ くらいまで平気になりますけど、今日は ２ で止めておきましょうか。

……………………（ｺｸｺｸ）

ではこれから身体を温めますね。

汗をかくと思いますが、頑張ってください（ﾆｯｺﾘ）

……………………（ｺｸｺｸ）

●……と、いうワケで、一連のコースが終了。最後はいわゆる「蒸し」の行程のよう
　で、かなりの量の汗をかいた。ベッドの上にはビニールが敷いてあったが、もう
　とにかく汗がビショビショ！ココまでやれば効果はありそうだ。

じゃあ、これで全部終了です～。シャワー室で汗を流したら、待合室で待っててくださいね。準備ができたらもう一度測量しましょう！

わかりました。。

●結果は……

　　身長 　　　　　159.0cm
　　体重 　　　　　 57.9kg（-0.9kg）
　　体脂肪率　　　 17.8%（-1.0%）
　　内臓脂肪レベル LV.10 （-LV.1）

⇒ どうやら、少しは効果アリ！？

わぁ、けっこう減りましたね～～～！

おおぉ～～～！！！

（……とか言いながら、予定調和な気もするけど……）

でも、“内臓脂肪の根本的な問題は生活習慣”ですからね～。

これはあくまで一時的な結果なんで、注意してくださいね。

（メンズエステ……、悪くないなぁ）

●……と、実はこんな感じで、ちょこちょこと「続けることに意味がある」という
　お話から、勧誘を受けていた。実際、通いたくなるくらい、気持ちの良い施術と
　接客だったのが正直なところ。

　ただ！やはりこうなると気になるのはお値段！

　お姉さんはボクのためにプランを組んでくれるそうだけど……。

　そして……、

----------------------------------------------------------------------------------------ボクさんへ♡

5回コースA　11,000円×5＋OP＝55,000円～（通常エステ+オプション）
　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣
5回コースB　15,000円×5＋OP＝75,000円～（通常エステ、サプリ付+オプション）
　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣

一緒に頑張って、カッコイイ身体になっちゃいましょう♡


※金額の部分もお姉さん手書きのかわいいハートで囲んである。
----------------------------------------------------------------------------------------

（た……た……たか～～～～～！！！）

できれば、マメに通っていただければと思うんですけど。（ﾆｺﾆｺ）

ハ……ハイ

ボクさん、遠方からお越しなんで、まずは少ない回数から……
（ﾆｺﾆｺ）

ハ……ハイ

でも、けっこう遠方のお客様いらっしゃるんですよー。

山梨とか、栃木とかお仕事ついでだったり。

（ソンナ人、イマノぼくニトッテハ雲ノ上ノ存在デス……）

一番遠いお客さんだと台湾の方がいましたね！

商社の方だそうで、月１で日本に来られるそうで。

（エリート商社まんナンテ参考ニナリマセン……）

もしよろしければ、分割払いも可能ですし

（）

――――――――――。

（）

――――――――――



―――――



――



●こうしてボクは、格差を思い知った……。

●メンズエステはたしかに効果があると思う。おそらくそれは間違いない気がする。

　けれど、今のボクには到底通えるレベルではなかった。

　健康もお金で買う時代。

　悲しいけど、これ、現実なのよね。

（内臓脂肪が生活習慣病の原因って言ってたし……、

　健康あっての人生だもんな……。）

……………………………、

（今の倍以上稼がなきゃ、
　休日も返上して働かなきゃ、
　寝る間も惜しんで働かなきゃ、

　もっともっと頑張って、
　そしてエステに通えるようなレベルにならなきゃ……。）

……………………………、

（…………それもなんかオカシクねぇ？）

●こうしてボクは、

　少し柔らかくなったお腹をさすりながら、お店をあとにした……。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　完