こどもたちと未来を。「こども∞感ぱにー」田中雅子さん(ケロちゃん)

iRyota25

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この場所に来て、ケロちゃんが石巻に残る決心をした理由がよくわかりました。

黄金浜ちびっこあそび場のスタードームの中で
黄金浜ちびっこあそび場のスタードームの中で

黄金浜ちびっこあそび場。

ここはこどもたちが自由にのびのびと遊ぶ場所。
保護者や地域の人たちやケロちゃんこと田中雅子さんたちスタッフが一緒になって楽しんでいる場所。

広場の入り口近くでは「家を建てる」とこどもたちがスコップやトンカチを駆使して建設中の家(といっても現状は柱だけ)が成長中。

その向こうではスタッフのナオちゃんが小学生と馬跳びしてる。あ、大人なのにこどもの背中を跳んじゃった、なんて言って頭を掻いてる!その笑顔はまさに、昔こどもだった少女そのもの。

そして、広場の中でひときわ目立つテントのドームの中は、浜風ぴゅーぴゅーの屋外とは打って変わってぽかぽかの別世界。ごっこ遊びや保護者達の情報交換といった、まったりとした時間が流れていくのです。

風の強い日だったけど、そんなことお構いなし。こどもたちの建築現場は活気に満ちてる
風の強い日だったけど、そんなことお構いなし。こどもたちの建築現場は活気に満ちてる
影がこんなに長く伸びる時間になっても、こどもたち(元・こども含む)の遊びはなかなか終わりそうにない
影がこんなに長く伸びる時間になっても、こどもたち(元・こども含む)の遊びはなかなか終わりそうにない

こんなにカラフルで、きれいな「基地」だから、どこかの企業に買ってもらったのかと思ったら、黄金浜ちびっこあそび場のこどもたちと保護者、そしてスタッフたちによる手作り!

「頂きものの竹を使って、地域のみなさんと一緒に建てました。ここは海が近くて、しかも津波で建物が減ったからいつも強い風が吹いていて大変だったけど、外側のシートも自分たちでデザインして貼り付けたんですよ」

ぽかぽかのドームの中で、こどもたちと遊びながらケロちゃんが教えてくれました。

 スタードームのページ
www.stardome.jp  

北九州市をベースに活動する九州フィールドワーク研究会(野研)によるページ。スタードームは竹などの素材を星形に組んでつくるドーム。愛・地球博にも出展したほか、全国に活動の輪が広がっている。

――竹の接ぎ目のところにカエルのマークがあるのって、ケロちゃんってことですよね?何のためのマークなんですか?

こどもが膝の上に乗っかって身動きがとれないケロちゃんが、首をひねるようにして、

「ああ、それね。竹をどういう風に組み合わせるかの目印なんです。そこに設計図もありますよ」

ぬいぐるみや玩具をしまう場所のそばに、
なにげにしっかり残されているこれは、たしかに設計図!

シートの色の組み合わせは、こどもたちが決めたのだとか。

すごい!

でももっとすごいと思ったのは、こどもだけじゃなくて、大人もさりげなく参加していること。設計図への無数の小さな書き込みが、たくさんの大人の手が支えたことを物語っているでしょう。

黄金浜のスタードームは、こどもたちと元・こどもたちのコラボレーションでできたお城なのです。

こどもの笑顔が大人には必要なんだ

め組JAPANのスタッフとして石巻に入ったケロちゃんは、彼女の「いま」に直接つながることになる出来事を牡鹿半島の先端部の浜、鮎川で経験したそうです。

牡鹿半島は震災による地形の変動が最も大きかった場所として知られています。それだけ被害も甚大でした。

「漁師の元締め的な方がどんどんやつれていくんです。船は流される。港は地盤沈下で使えない。家族を失った人もいる。この先、どうやって生きていくか希望が持てない状況でした。きっといろいろなことを背負い込んでいたんだと思う。会うたびにどんどん小さくなって」

日々しおれていく海の男のリーダー。彼がケロちゃんにふとつぶやいた言葉。それは、

「こどもたちの声が聞きてえな」

という一言でした。

その言葉がきっかけとなって、ケロちゃんは関東のアーティストからの呼びかけを鮎川につないで、子どもたちを対象とした出前アートパフォーマンスをお膳立てしました。

「どんな突拍子もないようなことでもいいから、子どもたちからアイデアを出してもらって、みんなで話し合ってテーマを決めて、みんなで作る。そんな趣向のイベントでした。子どもたちは段ボールを使って映画館をつくって、実際に上映するところまで持って行ったんですが、おとなたちが何をしていたかというと、バーベキュー用のテーブルセットを持ち出して、こどもたちの様子を幸せそうに眺めているんです。漁師のリーダーは、ビールを飲みながらつぶやきました。こどもがはしゃぐ声はいいな。こんなうまいビールはないなって」

一呼吸おいてケロちゃんは続けます。

「その時、わたしも同じように思いました。この雰囲気の中でのむビールは本当に美味しいなあって。こどもの笑顔や歓声はおとなを幸せにしてくれるものなんだと実感したんです」

震災の直後は、あまりにも大変なことがたくさんありすぎた。しかし、こどもたちをサポートしていくことが地域全体の支援につながる――。もともと保育士だからということもあるでしょう。でも、震災を機にケロちゃんは、こどもたちと未来をつくっていくことの大切さを、あらためて確信したようです。

こどもの遊び場に「土管」は必須!
こどもの遊び場に「土管」は必須!
このタイヤ跳びもこどもの手によるもの。もちろん穴掘りから!
このタイヤ跳びもこどもの手によるもの。もちろん穴掘りから!

ケロちゃんたちはこの4月、め組JAPANから黄金浜ちびっこあそび場の運営を引き継ぎました。新たに「こども∞感ぱにー(こどもむげんかんぱにー)」を立ち上げて、石巻でこども支援活動を続けていくことにしました。

仲間は3人。ケロちゃん、ナオちゃんともう1人はかっちゃん。そう、め組JAPAN「南浜ひまわりプロジェクト」の桝谷和子さんです。

かっちゃんは、こども支援をがんばってやってきたケロちゃん、ナオちゃんの二人を事務方としてサポートする!と張り切って活動中です。

ケロちゃんがこっそり教えてくれました。「こども∞感ぱにーって名前は、かっちゃんが徹夜で考えてくれたんですよ」。

彼女たちのまわりにはいい話がたくさんあります。たとえば役所に推薦状をもらいに行った時のこと。実績のない新しい団体だから難しいかもと思っていたけれど、「誰にだって最初はあるんだもんね」と応じてもらえたことなんかもそうです。小さな話も大きな話もいろいろあるけど、どれもフレッシュな彼女たちの躍動感を物語るものです。

とはいえ――。

被災した地域でのこどもの遊び場問題や放課後の居場所問題は深刻です。
新しい団体として門出したケロちゃんですが、その前途は多難です。

でも3人ともカッコいいんです。

先行き不透明な「大人の問題」が山積する中、こどもたちと素敵に関わっていく彼女たちの姿を、これからも追いかけていきたいと思います。

こどもも大人もご一緒に!
こどもも大人もご一緒に!
 雪の石巻に咲いた真夏のひまわり
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●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)

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