ロンドンオリンピックで銀メダルに輝いた『なでしこジャパン』。U-20ワールドカップで銅メダルを獲得した『ヤングなでしこ』。女子サッカー界が大きな注目を集めている今、更に一つ下の世代に『リトルなでしこ』と呼ばれる17歳以下の日本代表の存在があります。 2012年9月22日からアゼルバイジャンでFIFA U-17女子ワールドカップが開催されました。今回は予選グループリーグ第二戦、日本VSニュージーランドの対戦レポートをお届けします！  

日本のシステムは4-2-3-1。DFは左から清水、乗松、松原、石井。初戦からDF2人を入れ替えてきました。ボランチは隅田と成宮という攻撃的な2人がコンビを組みます。3枚の攻撃的MFは左に籾木、中央に杉田、右に伊藤を配置して、1トップに増矢という布陣で挑みます。対するニュージーランドのシステムは5-3-2。大量5点でブラジルに勝利した日本の攻撃力を警戒してか、ディフェンスラインを深めに取り、ゴール前に守備のブロックを築いてディフェンスを固めます。

勝てば決勝トーナメント進出が決定的となる日本。何としても先制点を奪いたいところですが、序盤はニュージーランドの固い守りに苦戦します。左サイドの籾木と右サイドの伊藤が得意のドリブルでサイドラインを切り崩しますが、フィジカルの強さと長いリーチを持つ相手DFの足にかかって潰されてしまいます。ニュージーランドは人とスペースのマークを徹底し、ボールにアタックに行く選手とカバーに入る選手を連動させて組織的な守備を図ります。バイタルエリアにスペースが生まれない為、日本は2列目から後方の選手が前線で上手くサポートに入れず、選手間の距離が開いて攻撃陣が孤立してしまい、攻撃が単発に終わってしまいます。

日本は後半から右サイドハーフに長谷川唯を投入して停滞したムードを一変させます。それまではサイドからの単独突破に終始していましたが、長谷川が右サイドで巧みにボールをキープすることでボランチとサイドバックにオーバーラップする時間が生まれ、バイタルエリアに2～3列目の選手が飛び込むことで相手DFのマークがずれ始めます。センターバックが前方に引き出されてディフェンスの裏にスペースが空いたことで、ボランチの隅田やサイドハーフの成宮がワンツーやミドルシュートでゴールを狙います。後半14分、日本は左コーナーキックのチャンスを獲得。ペナルティエリア内でDFとの競り合いから生まれたこぼれ球に長谷川が反応して右足一閃。地を這うような強烈なミドルシュートはGKの腕を弾き飛ばしてゴール左隅に突き刺さります。

左に成宮、中央に長谷川、右に籾木を配置することでドリブルとパスのバランスが調和した日本。動きを封じられていたFW増矢もフリーでボールを受ける機会が増えてフィニッシュに絡みます。後半33分、バイタルエリアから隅田とのパス交換で中央に抜け出したのはまたしても長谷川唯。ゴール手前20メートル付近から放たれたロングシュートはGKの頭を超えて豪快にネット揺らします！ロスタイムにはペナルティエリアに飛び出したボランチの隅田がDFに倒されてPKを獲得。これを隅田が自ら決めて3点目を奪います。途中出場した長谷川唯の活躍で3-0の勝利を収め日本は決勝トーナメント進出へ王手をかけました。

リトルなでしこの攻撃の鍵を握るプレーヤーは成宮唯と長谷川唯の『ダブル唯』。ヤングなでしこで例えるなら田中陽子と柴田華絵のような存在で、中盤でタメを作りながら攻撃のリズムに変化を付けられるプレーメーカーです。ニュージーランドのようにディフェンスラインを引いて守備を固めくるチームには、個人の突破でディフェンスを崩し切ることは難しく、2～3列目の選手がアッタキングサードに飛び出してDFを揺さぶる動きが必要です。フィールドをワイドに使いながら味方のサポートを引き出すには、中盤にキープ力に優れたパサーの存在が不可欠です。

成宮は所属チームではボランチですが、U-17では攻撃的なポジションを取るべきでしょう。U-20の田中陽子もボランチを本職にしていますが、得点力があって決定的なスルーパスを出せる選手は前線で起用した方が怖さがあります。ボランチにはパス能力に長ける隅田凛がいるので、後方からのゲームコントロールには問題がありません。成宮唯と長谷川唯という得点力のあるゲームメーカーを攻撃的なポジションで起用することが、リトルなでしこの躍進の鍵になると思います。

2試合を通して攻守に安定感を示したリトルなでしこですが、予選グループリーグでは弱小国との対戦が多いことが気がかりです。決勝トーナメントでいきなり強豪国と対戦したとき、そのギャップにどう対処するのかが大きなポイントになってくると思います。