ロンドンオリンピックで銀メダルに輝いた『なでしこジャパン』。U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得した『ヤングなでしこ』。女子サッカー界が大きな注目を集めている今、更に一つ下の世代に『リトルなでしこ』と呼ばれる17歳以下の日本代表の存在があります。今回はU-17女子ワールドカップで活躍した攻撃的ミッドフィルダーの長谷川唯選手のプレーの魅力に迫ります!
古典的なゲームメーカーであり、現代的なプレーヤー
U-17女子代表のなかで長谷川唯は中盤の司令塔であり、そのプレースタイルは古典的な10番タイプのゲームメーカーです。単純にパスの出所になるだけでなく、オフザボールの動きに優れており、ボールをスペースで貰うのが上手い選手。バイタルエリアから前方に飛び出すと、DFとDFの間に割って入る絶妙なポジショニングで決定的なパスコースを作り出します。パス&ランを基本としたムービングタイプのパサーで、強引にドリブル突破を仕掛けたり、無駄にキープし過ぎてボールを失うようなことはありません。現代サッカーは中盤からバイタルエリアにかけて使える時間とスペースが限られているので、長谷川のようにボールタッチの少ないプレーメーカーの存在は不可欠です。
右足のキック精度は日本随一、キラーパスでアシストを連発
U-17のゲームメーカーには成宮唯の存在がありますが、ドルブルを主体に仕掛けるプレーを得意とする成宮が『動』だとしたら、パスを主体として周りを動かすプレーが得意な長谷川唯は『静』という存在。『154cm・40kg』という小柄な体型ですが、重心が低く腰の強さ持った強靭なフィジカルの持ち主です。少々のコンタクトプレーで体勢を崩すことはなく、広い視野とで抜群のキック精度で自在にゲームをコントロールします。
多彩なパスの引き出しが特徴で、巧みなキープからDFの裏に送るスルーパス、戦況を一変させるサイドチェンジ、ペナルティエリア内にピンポイントで合わせるアーリークロス、味方のフリーランを引き出す鮮やかなダイレクトパス。戦況に応じて速攻と遅攻を使い分ける優れた判断能力を持ち、前方にスペースがなければ中盤でタメを作りながら味方の攻撃参加を引き出し、チャンスと見ればアタッキングサードから一気にペナルティエリアに飛び出してフィニッシュに持ち込みます。
破壊的なミドルシュートでゴールを脅かす
パサータイプのゲームメーカーはアシスト能力の高さに比べると、フィニッシュの精度に欠けたりシュート意識の低い選手も多いのですが、長谷川は得点力の高さもストロングポイントの一つ。特に右足から放たれるミドルシュートは強力で、ニュージーランド戦で決めた2得点は世界に鮮烈を与えました。1点目はコーナーキックのこぼれ球をペナルティエリア外から右足一閃!インステップでジャストミートされた高速ボールは地を這うような弾道で、GKの手を弾き飛ばしてサイドネットに突き刺さります。
2点目はDFとDFと間に瞬間的にシュートコースが空いたところを見逃さず、インフロントキックでドライブ回転をかけた技ありのロングシュート。ボールはGKの手を越えて鋭く斜めに落ちながらゴールネットを揺らします。状況に応じてキックの種類を使い分ける技術を持ち、スナイパーのように正確にゴールを打ち抜くシュート精度を誇ります。
中盤ならどのポジションでも一流のプレーを魅せる
長谷川はサイドハーフとトップ下を本職としていますが、中盤ならどのポジションでも優れたプレーを発揮します。パサータイプにも関わらず、縦に速いドリブル突破を武器にしており、緩急をつけた一発のフェイントでDFと身体を入れ替えて抜き去る技術を持ちます。トップ下ではDFに背を向けた状態でボールをキープする力を持ち、巧みなボールさばきでポストプレーも安定します。
パスセンス、キープ力、得点力を兼ね備えた万能タイプのミッドフィルダーなので、攻撃的なボランチとしてプレーさせても十分に機能すると思います。男子日本代表選手に例えるなら、本田圭佑や小笠原満男にプレースタイルが似ており、上手さと強さを兼ね備えた中盤の背骨となるプレーヤーです。
総括
リトルなでしこでは成宮唯と同じく日本の女子サッカーの未来を背負う逸材の1人です。2年後のU-20女子ワールドカップではエースとなる選手でしょう。年齢的には体力面でも伸びしろが十分にあると思います。A代表の『なでしこジャパン』にも早い段階でデビューさせておきたい選手の1人です。
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