会の本部。遠くにワシントンタワーも
美しい緑の公園にそびえるワシントン記念塔のオベリスク。森の木々の向こうに見える白亜の建物。リフレクティング・プールの向こうに鎮座するリンカーン記念館。議会議事堂やホワイトハウスが立ち並ぶアメリカ合衆国の政治の中心は広々とした公園の中にある。その公園はナショナル・モール。議事堂からリンカーン記念館まで3キロ以上もある広大な緑地だ。
海外からの旅行者はもちろん、おそらくその数倍もの数の国内旅行客を集めるナショナル・モールで一番人気の施設といえば、スミソニアン協会が運営する『国立航空宇宙博物館』だろう。日本では一般的に「スミソニアン博物館」と呼ばれることが多いが、スミソニアン協会が運営する博物館群は、日本美術のコレクションで知られるフリーア美術館、古代オリエントの作品群を集めたアーサー・M・サックラー・ギャラリー、国立自然史博物館など19にも上る。国立航空宇宙博物館はそのひとつに過ぎないが、同時に“世界で最も入館者が多い博物館”でもある。
スミソニアンの国立航空宇宙博物館がすごいのは、歴史にその名を刻んだ航空機や宇宙船の“実機”が展示されていることだ。
・1903年、ノースカロライナ州キティホーク近郊のキルデビルヒルズで、ライト兄弟が人類初の動力飛行を実現したライトフライヤー号(Wright Flyer)。
・チャールズ・リンドバーグがノンストップで大西洋横断単独飛行に成功したスピリット・オブ・セントルイス号(Spirit of St. Louis)。
・人類を初めて月面に送り出したアポロ11号の司令船(Command Module, Columbia)。
・2004年6月21日、世界で初めての民間企業による有人宇宙飛行を実現したスケールド・コンポジッツ社のスペースシップワン(Space Ship One)。
とくにスペースシップワンは飛行成功の翌年2005年には、国立航空宇宙博物館の表彰を受け、すぐに展示を開始。スピリット・オブ・セントルイス号と、世界初の超音速機・ベルX1の間にディスプレイされた。この破格の扱いは、スペースシップワンの成功が日本で報道された以上に高く評価されたことを示すものと言える。
なぜなら、個人の夢が、空や宇宙というフロンティアで人類史上に輝く快挙を生む――。そんなアメリカンドリームそのものだからだ。そういえば、ライト兄弟の初飛行も、リンドバーグの大西洋横断も、個人や企業の力で成し遂げられたものだった。
世界中のヒコーキファンが憧れる国立航空宇宙博物館。そこは、貴重な実機に出会えるだけでなく、フロンティアスピリットの片鱗に触れることもできる場所なのだ。
☆追加の情報
・“実機”の展示にこだわりを見せる国立航空宇宙博物館だが、スタートレックに登場する宇宙船「U.S.S.エンタープライズ NCC-1701」も展示されている。もちろん実機ではないが、撮影には実際に使われたもの。ということはやっぱり実機と言えなくもないか…。
・月の石も展示されている。国立航空宇宙博物館の月の石は、なんと手で触ることができる!
・実機へのこだわりから(と思われる)、スティーブン・F・ウドヴァーヘイジー・センターを2003年にオープン。ナショナル・モールの本館よりはるかに大きな展示スペースにはコンコルド(エールフランス塗装)、B29原爆投下機「エノラ・ゲイ号」、B29の援護に活躍したP51戦闘機、その好敵手だった川西・紫電改、さらにマーズパスファインダーなどが、広い展示スペースに所狭しと並べられている。
・エノラ・ゲイの展示については、原爆投下の背景の説明を行うとの博物館側の方針に退役軍人会が反発、当時の博物館長が辞任するという騒動があった。別館のオープンとともにエノラ・ゲイの展示は実現したが、背景説明はなし。しかも歴史的な機体を破壊から守るため、おびただしい数の監視カメラが設置されているのだとか。
●本館(The National Air and Space Museum building on the Mall)
Independence Ave. at 6th Street, SW Washington, DC 20560電話:202.633.2494
●別館(The museum's Steven F. Udvar-Hazy Center)14390 Air and Space Museum Parkway Chantilly, Va(ダレス空港のお隣)
電話:703-572-4118 20
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