越喜来はきらいですか? いえ、大好きです!

iRyota25

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岩手県大船渡市越喜来。知らなきゃ読めない地名ですが「おきらい」と読みます。
その越喜来でずっと気になっていた、まるでおもちゃ箱のようなこの施設。掲げられた手描き看板には――。

ここがオキライですか? いいえ地名はオキライでも、だ~い好きです!

場所は、道の駅三陸前の国道の坂道を下りきり、交差点を右折して少し行ったところ。三陸鉄道の三陸駅の東側、越喜来小学校があった場所の向かい側、海からは約300m。

建物などが撤去され平らな土地が広がるこの場所に、まるでプレイパークのように、まるでこどもたちの秘密基地のようにそびえるこの建物、いったい何なのでしょう?

建物には「復興拠点」「大津波資料館」「潮目」とさまざまな看板が掲げられ、さらには、「公開中、ご自由に」との表示も。

お言葉に甘えてアルミサッシの引き戸を開けて中に入ると、津波の浸水域と津波以前の町並みのマップや、想定外の被害に見舞われる前の町の様子のパネル展示など、壁一面に町の記憶、震災の記憶の数々がまるで刻み込まれるような雰囲気で掲示される。

さらにこの展示スペースの天井近くには、秘密の出入り口があって、屋根裏は子どもたちのプレイスペース!
(上の左の写真の黄色い掲示の左上の穴。外の滑り台にもつながっているらしい)

カラフルな塗料でペイントされた建物は、ポップでどこかサイケデリックなアートの匂いまで感じさせる。でもそこに薄っぺらな印象はない。

建物の周りにはさらにすごいものがあった。
あえて作品と呼ばせてもらいたくなるものたちが「展示」されていた。

見た通り、黒板です。
でも、どうしてここにあるのか。
拡大して読んでいくと、この施設の向かいにあった越喜来小学校への卒業生や親たちの想い、さらにそこからは町の現状やこれからの町への想いといったものまでが、透けるようにして見えてきます。

見た通り、グランドピアノのボディ部分です。
見た通りってことはないか。このピアノも越喜来小学校にあったもの。校舎を解体する前にこのピアノをレスキューしてほしいという地元の声があったにも関わらず、校舎もろとも重機で「解体」されてしまったものを地元有志が引っ張り出して、現在のこの場所に据え置かれたのだという。

そして、こちら。これは津波から小学校のこどもたちの命を救った避難通路。

高台に向かって上り坂になっている県道を背にして建っていた越喜来小学校は、2階や3階の教室から避難所へ避難するには、いったんグラウンドまで下りた後、海側から坂道を上り返して行かなければならなかったのだとか。
(記事の一番下のGoogleMapには、解体前の越喜来小が写っています)

※注:GoogleMapの画像が差し替えられて、校舎のあった場所には盛土が積み上げられています。(2015年1月現在)

一刻を争う津波で、下って上り返してしかも遠回りでは命に関わる。そこで校舎2階から直接県道に避難できるように設置されたのがこの緊急避難通路。しかも設置は震災前年の11月!

「命を救った貴重な遺構」として保存のための調整が続けられる中、ピアノのように間違って解体されては大変と、地元の有志がクレーンで吊ってこの場所に避難させたというエピソードまである避難通路だ。

「潮目」の前には、いまも越喜来小学校の門柱が。倒れてはいても、小学校の存在を身をもって証明している。まるでおもちゃ箱のように見えたこの施設、詰まっていたのはこの土地に生き、この土地で地震と津波を経験した人たちの、言葉では言い表せないくらいたくさんの想い。

ひとつひとつ、エピソードを知るにつれ、気持ちが近づいていく。

越喜来はきらいですか? いいえ地名はオキライでも、だ~い好きです!


(つづく)

 時論公論 「生死を分けた学校の避難経路」 | 時論公論 | 解説委員室:NHK
www.nhk.or.jp  

越喜来小の避難用通路は震災直後メディアでも数多く取り上げられた。こちらはNHKの詳報です。しかし、避難路や防災意識の大切さを語るために、大川小を引き合いに出すなんて、東京のマスコミは残酷ですね。

 ガレキと呼ばないで(2013年6月4日・岩手県大船渡市越喜来)
potaru.com

鉄筋コンクリート造のため、建物の外構は残ったものの内部が大変なことになった中央公民館の様子を紹介するぽたるページ。越喜来地区では79人の方がたが命を落とされたそうです。

大津波資料館「潮目」

越喜来小学校前

写真と文●井上良太
追記:大津波資料館「潮目」に置かれた品々ひとつひとつのエピソード、「潮目」に関わって来られた人たちのこと、教えてくれた方のことなど、少しずつ紹介させていただきたいと考えています。(デスマスと言い切りがごちゃまぜの文章で失礼しました)

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