大船渡の魚市場近くにあるサン・アンドレス公園。異国情緒が感じられるネーミングは1611年にスペインの探検隊が大船渡を訪れたことにちなむという。タワーが印象的なこの公園は東日本大震災の津波をもろに受けたものの、タワーは生き残った。大船渡の町の変化を見渡すことができる貴重な場所のひとつだったが、周辺のかさ上げ工事でもう2年ほど前から入れなくなっていた。
10月に開催された復興現場の見学会のメニューのひとつに、サン・アンドレス公園周辺の防潮堤の見学があったので楽しみにしていた。参加してみると公園の敷地に入れるだけでなく、タワーの展望台にも上ることができたので、公園の様子とタワーから見た大船渡の町を写真でご紹介。
タワーの壁面には東日本大震災での津波高さを示すパネルが設置されている。タワーの1層目は完全に津波に呑み込まれていたことがわかる。
10.5メートルもの津波に耐えたタワーだが、展望台への螺旋階段の途中には構造材のサビ、割れたガラスブロック、階段に今も残る海砂など、津波の記憶が刻まれていた。
展望台からは工事が進む大船渡の海辺が見渡せる。遠くには町のシンボルでもあるセメント工場の大煙突。
まるでフィヨルドみたいに深く切れ込んだ大船渡湾の対岸の防潮堤も、タワーからはよく見える。大船渡湾の沿岸はぐるりと同じ高さの防潮堤(標高8.34m、T.P.7.5m)で囲われるのだという。
タワーの足下では、まさにその防潮堤工事が進行中。岩盤に達するまで鋼管を埋め込んだ上に鉄筋コンクリート製の防潮堤が設置されている。
設置が完了した防潮堤の壁面には過去の津波高さを示すプレートも付けられていた。下から「寛政三陸地震津波:4.4m」「昭和三陸地震津波:4.5m」「チリ地震津波:5.6m」「明治三陸地震津波:6.3m」
東日本大震災の津波高さが示されていないのは、新しく造られる防潮堤の高さよりも今回の津波の方が高かったからだという。
陸地側に目を転じると、BRTの専用道路の土手の向こう側には新しい店舗。そして斜面に立ち並ぶ住宅。丘の上には加茂神社の津波警報塔も見える。
見学を終え螺旋階段を下っていくと、タワー1層目の悲惨な状況が鮮やかに飛び込んでくる。サン・アンドレス公園は大船渡の町の未来を遠望することができる場所であると同時に、震災の現実を思い出させてくれる場所。
大船渡市の計画によると、サン・アンドレス公園は復興を祈念する公園の一部としてこれからも残されることになるようだ。それまでの間おそらくしばらくは、公園もタワーも再び閉ざされることになるだろう。
公園が生まれ変わって再オープンするのは、新しい大船渡の町開きが行われる頃だろう。その頃、大船渡の町はどんな姿になっているのだろう。賑わいや笑顔があふれる場所になっているだろうか。
サン・アンドレス公園は大船渡の地元デュオLAWBLOWの『家に帰ろう』PVにも登場している。興味のある方はぜひ。
家に帰ろう / LAWBLOW 【NHK いわてみんなのうた】【歌詞&英語字幕付き】
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サン・アンドレス公園
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