熊本県の健康福祉政策課のある県庁行政新館は、物資集積のため1階入口が閉鎖されていた。本館の受付で、途中階の渡り廊下を通って本館から新館に行けると丁寧に教えてもらった。
[熊本大地震]堂々たる県庁舎の中で見たのは
しかし、その渡り廊下は地震のために段差ができてズレていた。
写真の印象よりもずっと大きくズレていた。躊躇した。受付で「通れます」と言われていなければ、渡るのをやめただろう。
渡っている間も、なんだか少し揺れるような感じがして恐ろしかった。早足になった。でも、走ると衝撃で落ちるかもしれないなどと考えて、足がすくみそうにもなった。県庁なんだから建設の専門家がちゃんとチェックしているはずだと思っても、もしも大きな地震があったらどうしようと考えずにはいられなかった。
階段の飾り石も落ちていた。
真剣な面持ちで打ち合わせをしている人たちの姿が、館内のあちこちで見られる。ネクタイ姿の人はほとんどいない。職員はほぼ全員が作業着姿だ。グレー、クリーム色、濃紺などさまざまな色の作業服。県庁職員だけでなく、国の中央省庁から派遣された人、さまざまな自治体から応援に来た職員も多いようだ。災害対策会議の開催を告げる放送が流れる。飾り石が落ちた階段を駆け上がったり、駆け下りたり、人の動きが激しくなる。
おそらく建物自体の安全は確認されているのだろうが、館内のさまざまな場所にダメージはあるはずだ。飾り石とは言え、落下して頭に当たれば大怪我してしまう。
駐車場のトイレのタイルも割れていた。タイルが割れるということは、建物そのものが歪んだということだ。
一見だいじょうぶそうに見える建物でも、内部にはかなりのダメージがある。歪が蓄積しているかもしれない。外からではうかがい知ることのできない被害。次に大きな地震があれば、どんな事態になるのかわからない恐ろしさ。
…たった一秒先が予知出来ない人間の限界…
建物の中に入ろうとしない人々の気持ちが少し理解できた。
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