新しい復興ツーリズム「もっと自然に東北へ」

iRyota25

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8月29日土曜日の日経新聞が夕刊トップで宮城の復興ツーリズムを特集していたので、概要をご紹介。

記事で紹介されたのは「南三陸町観光協会」による津波避難や避難所生活を体験する防災キャンプ、「名取市環境物産協会」が進めるメガネ型ウェアラブル端末で震災後と現在の被災地の変化を体験できるプラン、「気仙沼観光コンベンション協会」の復興工事現場や水産加工会社の見学ツアー、「南三陸ホテル観洋」が取り組んできた従業員による被災地バスツアーなど。

観光客数は石巻で36%減、気仙沼では45%減

紹介されたツアーなどの内容もさることながら、被災地観光の現状が記された部分があらためて響いた。

震災後に沿岸部を訪れる観光客は減っている。石巻市周辺は14年の観光客数が震災前の10年と比べ36%落ち込み、気仙沼市周辺も45%減少した。

震災の教訓 訪ねて体感 宮城で復興ツーリズム | 日経新聞2015年8月29日 夕刊

石巻市では震災以前からシャッター通りだった町の中心部に、県内外から移住してきた若者たちによる団体や店舗が立ち上げられ、人を呼び入れるためのさまざまなイベントも行われている。正直なところ、以前より来訪者が増えているのではという印象さえあった。しかし観光客が36%減少というのが現実なのだ。人に来てもらうことの難しさを改めて思い知らされた気がする。

どうして観光客が離れてしまったのか、その理由として日経の記事は「犠牲者が出た土地を観光することに尻込みする県外の人も多いとみられる」と指摘する。辛い現実や重たい話は気が引けてしまう……。そんな本音は無視できない。震災後しばらくの間はボランティアや「被災地を見てみたい」という人も少なくなかったが、それでも震災以前の、つまり普通の観光客には数の上で遠く及ばなかったということだ。

来てもらうためのメニューを増やすべき

記事は村井嘉浩宮城県知事と地元の人の言葉を次のように紹介して締めている。

しかし宮城県の村井嘉浩知事は全国に向けて「家族で被災地を訪れ、震災の悲惨さや復興に向かう現状を実感してほしい」と来県を呼びかける。

被災者の一人は「私たちの反省点を知ってもらい、各地で今後起きる可能性がある災害に備えてほしい」と強調している。

震災の教訓 訪ねて体感 宮城で復興ツーリズム | 日経新聞2015年8月29日 夕刊

たしかにそれはその通りなのだが、この言葉は震災の1年くらい後から繰り返し言われてきたことだ。震災1年が区切りとなってボランティアが大幅に減少した。被災された人たちにとって「なんとかしてほしい」ニーズも変化した。地元の経済を建て直すためにも、外からやってくる人を増やしたい。そのためには観光だ! 知事の言葉はそう聞こえる。「自分たちが経験した辛い思いを、もう誰にも味わってほしくない」そんな心情も込められているだろう。

しかし、被災した町に観光客に来てもらうためには、それだけではないアプローチも必要なのではないか。震災の悲惨さを学ぶという一枚看板ではなく、もっと多彩なメニューがあった方がいいのではないか。

4年半たっても、被災した地域全体を眺めると、まだ震災によるマイナスがゼロ、つまり再建に向けての準備段階がようやく整いつつある状況だ。私事ながら、遅々として進まぬ現状を伝えるお手伝いをしようと、自分なりに少しは努めてきたつもりだが、「じゃあ東北に行ってみよう」と思ってもらうことの難しさを実感することもしばしばだ。

JR女川駅と女川温泉ゆぽっぽ

JR女川駅と女川温泉ゆぽっぽ

そんな折り、新しく生まれかわった女川駅に行ってみて、考えが少し変わった。

秋元康プロデュースの女川町の再開発には、当初は若干の違和感があったが、新しい女川駅と駅舎の中の温泉施設ゆぽっぽの完成で町の雰囲気が一変したのを見て、これもひとつのアプローチだということが理解できた。

造成工事や建設工事が行われている町の中心部に美しい駅が建ったことで、町に「真ん中」ができた。そこに立つことで、工事現場の未来が想像できるようになった。女川駅を訪ねた人は、おしゃれな駅に感嘆の声をあげる。展望デッキから町を眺めると、広大な工事現場にしか見えない場所に過去と未来の物語があることが自然と入ってくる。

女川駅の展望デッキから海へ向かうプロムナード。建物はまだほとんどないが…
女川駅の展望デッキから海へ向かうプロムナード。建物はまだほとんどないが…

その上で、駅前の屋台の人や待合室で隣り合った人と話をすれば、旅先の町との関わりがきっと深まるはずだ。(あえて言いいます)町が持っている物語に厚みがあればあるほど、旅人はその土地での人々との出会いにカタルシスを覚えるものだ。

いきなり「悲惨な状況を学びに来てください」では引いてしまうかもしれないが、
「新しく美しく生まれ変わった町を見に来て」とアピールすれば、行きやすくなるかもしれない。その上で、町が持っている物語に自然体で触れあってもらえばいい。町の歴史や自然も物語だ。震災で起きた現実も当然含まれる。未来に向けての希望の話もあるだろう。

ふだん書いたり考えたりしていることとは真逆な話になったが、被災地には訪れてもらうためのメニューの多彩さこそが大切なのではと思う今日この頃なのだ。

 【関連ページ】女川駅「ゆぽっぽ」入湯記
potaru.com
 【関連ページ】中心ができると町の雰囲気が一変する【女川発】
potaru.com

秋の東北・旅リンク

◇秋の東北で風になる。出会いがある。仲間ができる。また来たくなる

 ツール・ド・東北 2015
tourdetohoku.yahoo.co.jp  
 ツール・ド・三陸 サイクリングチャレンジ 2015 in りくぜんたかた・おおふなと
www.tour-de-sanriku.com  

◇杜の都・仙台が音楽に埋め尽くされる

 定禅寺ストリートジャズフェスティバル in 仙台 | 音楽、希望への架け橋
www.j-streetjazz.com  

◇三陸の魂をふるわすアートフェス

 「三陸国際芸術祭」を中心にさんりくの魅力を発信するWebサイト|サンフェス
sanfes.com  

◇メニューの多彩さという点では南三陸町はすごい

 南三陸町のツアー・プログラム | 南三陸町観光協会公式ホームページ
www.m-kankou.jp  

◇そして、日経の記事にあった南三陸町の防災キャンプ企画

 防災キャンプ そなえ | 南三陸町観光協会公式ホームページ
www.m-kankou.jp  

◇生まれかわる女川の町の中心線(センターライン)

 女川温泉ゆぽっぽ
onagawa-yupoppo.com  

◇東北といえばやっぱり祭り。秋祭りも多彩

 東北の秋祭り
www.tohokumatsuri.jp  

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