5月20日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※タービン建屋地下滞留水の移送は停止中
2号機 増設廃棄物地下貯蔵設備建屋から2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施。タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送先を切り替え(現在の移送先は高温焼却炉建屋)
1号機と同じ4項目に加え、
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送実施(2015年5月18日午前10時51分~5月19日午後2時59分)
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年5月19日午後3時53分~)
※タービン建屋地下滞留水の移送は実施中
3号機 タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送再開(移送先は高温焼却炉建屋)
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年5月19日午後3時40分~)
※タービン建屋地下滞留水の移送は実施中
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・原子炉から使用済燃料プールへ燃料移動中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~通算64回目となる海洋への排出を終了。排出量は1,748トン
5月19日午前10時10分より海洋への排水を開始。(既出)
同日午前10時13分に漏えい等の異常がないことを確認。同日午後5時13分に排水を停止。排水停止状態に異常のないことを確認。排水量は1,748m3。
地下水バイパス揚水井分析結果(5月18日採取分)
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
5月19日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<H4周辺地下水E-1の全ベータ値>
4月21日採取 15,000Bq/L
4月22日採取 8,300Bq/L
4月23日採取 5,800Bq/L
(中略)
5月11日採取 5,800Bq/L
5月12日採取 6,800Bq/L
5月13日採取 6,800Bq/L
5月14日採取 6,500Bq/L
5月15日採取 6,900Bq/L
5月16日採取 悪天候により採取中止
5月17日採取 6,800Bq/L
5月18日採取 6,700Bq/L
5月19日採取 5,200Bq/L
5月20日採取 2,100Bq/L
H4エリア周辺地下水 E-9で全ベータが20,000ベクレル
<過去最高値>H4エリア周辺地下水 E-9
全ベータ:20,000 Bq/L(5月20日採取分)
前回5月18日採取分は 1,200 Bq/L
これまでの最高値:14,000 Bq/L(2014年10月8日採取分)
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<H6周辺地下水G-1のトリチウム値>
3月17日採取分で過去最高値 3,400Bq/Lを記録して以来、それまでの週1発表から毎日発表になっている。
3月17日採取 3,400Bq/L
(中略)
4月25日採取 980Bq/L
4月26日採取 2,000Bq/L
4月27日採取 760Bq/L ※雨は降っていないのに大きく増減
4月28日採取 1,000Bq/L
4月29日採取 550Bq/L
(中略)
5月11日採取 210Bq/L ※減少傾向は見られるものの変動幅が大きい
5月12日採取 120Bq/L
5月13日採取 200Bq/L
5月14日採取 160Bq/L
5月15日採取 140Bq/L
5月16日採取 悪天候により採取中止
5月17日採取 ND(検出限界値:110Bq/L)
5月18日採取 160Bq/L
※ 3月10日(最高値の前回測定)の値は 480Bq/L
3月3日はND(検出限界値:10Bq/L)
<H6周辺地下水G-2のトリチウム値>
4月20日採取 380Bq/L
4月21日採取 2,500Bq/L ※大幅に上昇
4月22日採取 2,000Bq/L ※若干減少
4月23日採取 310Bq/L
4月24日採取 300Bq/L
(中略)
5月12日採取 210Bq/L
5月13日採取 340Bq/L
5月14日採取 210Bq/L
5月15日採取 180Bq/L
5月16日採取 悪天候により採取中止
5月17日採取 260Bq/L
5月18日採取 230Bq/L
※G-2のトリチウム値は、タンクからの汚染水漏れが発生から約1か月後の平成26年3月24日・25日に記録した7,000ベクレルがこれまでの最高値だが、27日には660ベクレルまで減少していた。
<H6周辺地下水G-3のトリチウム値>
漏洩タンクから最も遠いG-3もトリチウム値が上昇
4月27日採取 400Bq/L
4月28日採取 200Bq/L
4月29日採取 310Bq/L
4月30日採取 320Bq/L
5月1日採取 280Bq/L
(中略)
5月12日採取 350Bq/L
5月13日採取 440Bq/L
5月14日採取 330Bq/L
5月15日採取 370Bq/L
5月16日採取 悪天候により採取中止
5月17日採取 390Bq/L
5月18日採取 390Bq/L
1~4号機タービン建屋東側 2号機取水口・港湾中央の2地点で海水中のセシウム濃度が過去最高値
日報の記載に新規事項なし
<過去最高値>2号機取水口(遮水壁前)
セシウム-134:13Bq/L
これまでの最高値:12 Bq/L(2014年9月8日)
セシウム-137:45Bq/L
これまでの最高値:40Bq/L(2014年9月8日)
<過去最高値>港湾中央
セシウム-134:6.7 Bq/L
これまでの最高値:3.6 Bq/L(2014年11月10日)
セシウム-137:19 Bq/L
これまでの最高値:15 Bq/L(2014年11月10日)
※ いずれの地点で全ベータも高いレベル
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路 ~極めて高濃度の汚染を示す1号機放水路立坑の測定結果(5月18日採取分)
【1号機放水路】
◆採取日 (5月11日)→(5月13日)→(5月15日)→最新(5月18日)
<1号機放水路立坑水(上流側)>
セシウム134: 11,000 Bq/L → 8,200 Bq/L → 8,100 Bq/L → 8,700 Bq/L
セシウム137: 41,000 Bq/L → 29,000 Bq/L → 29,000 Bq/L → 31,000 Bq/L
全ベータ: 49,000 Bq/L → 37,000 Bq/L → 38,000 Bq/L → 35,000 Bq/L
トリチウム: 320 Bq/L → 250 Bq/L → 300 Bq/L → 250 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)>
セシウム134: 990 Bq/L → 1,000 Bq/L → 920 Bq/L → 980 Bq/L
セシウム137:3,600 Bq/L → 3,600 Bq/L → 3,500 Bq/L → 3,700 Bq/L
全ベータ: 6,100 Bq/L → 6,400 Bq/L → 6,600 Bq/L → 5,400 Bq/L
トリチウム: 1,500 Bq/L → 1,500 Bq/L → 1,600 Bq/L → 1,800 Bq/L
1~3号機放水路(項目名変更:1号機放水路の状況→1~3号機放水路の状況)
※1~3号機放水路については、1号機放水路上流側立坑において、セシウム137の濃度が上昇したことから定期的に水質調査を実施。
<最新のサンプリング実績>
5月13日に採取した2号機放水路立坑水の全ベータの値およびトリチウムの値が前回値と比較して大幅に高い濃度であることを確認。その後の分析結果は以下の通り。
5月18日採取 5月19日採取
セシウム134: 110Bq/L 580Bq/L
セシウム137: 310Bq/L 2,100Bq/L
全ベータ : 45,000Bq/L 6,400Bq/L
トリチウム : 1,700Bq/L 分析中
分析結果については、5月18日からの降雨により5月19日採取分の全ベータ放射能は低下し、セシウムは表層汚染の流れ込み等により上昇していることを確認。なお、5月18日採取分のトリチウム濃度は前回値(5月17日採取分:1,700Bq/L)と比較して変化なし。引き続き、同立坑の監視強化を行うとともに、上昇原因について調査を実施する。
2号機放水路の発表フォームが変更され、上流側・下流側でデータが公表される
5月13日~20日の発表データを貼り合わせてみた。
書体や罫線がガタガタなのは東京電力が発表したフォームの異なる4つの書類を貼り合わせたため。5月19日のデータでセシウム-134、セシウム-137が急上昇し、逆に全ベータとトリチウム(H-3)が減少しているのが分かる。
※ 事故原発の近隣の気象庁観測ポイント「浪江」では、5月19日に1日で34.5mmのかなりの雨量を観測している。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年5月20日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
最終更新: