3月12日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
地下水との戦いが正念場を迎える。「汚れた雨水」が堰の外に流出した近傍の地下水観測孔(地下水バイパス揚水井への影響を調べる目的で設置された測定ポイント)で、全ベータなどの放射能が急増。E-9では約30倍上昇し11,000Bq/Lに。汚れた雨水の測定値8,300Bq/Lよりもさらに高い値
H4エリア周辺地下水観測孔の分析結果において、3月11日に採取したH4エリア地下水観測孔E-9の全ベータ放射能分析結果が、前回3月9日の370Bq/Lから30倍程度上昇し11,000Bq/Lであることを確認。
H4・H4北・H4東エリア外周堰内に溜まった雨水の水位低下による影響の可能性があることから、E-9について今後1週間程度を目処に監視を強化する。
水位低下に鑑み、監視を実施しているH4エリア地下水観測孔E-11およびE-12の全ベータ放射能の分析結果は、以下のとおりであり、有意な変動は確認されていない。これら2箇所についても今後1週間程度を目処に監視を継続する。
<H4エリア周辺地下水観測孔E-11>
全ベータ放射能濃度:170Bq/L(3月11日採取)
25Bq/L(平成26年2月12日に採取した前回分析結果)
<H4エリア周辺地下水観測孔E-12>
全ベータ放射能濃度:25Bq/L(3月11日採取)
17Bq/L未満(平成26年2月12日に採取した前回分析結果)
建屋周辺のサブドレン(井戸)水の海洋排出どころか、すでに50回以上実施されてきた地下水バイパスにも影響が及ぶ可能性も。
地下水との戦いは正念場。
原子炉の海側では、高濃度汚染水が溜まったトレンチ(地下トンネルと立坑)を塞ぐ作業が進む。2号機立坑Cから滞留水をタービン建屋(汚染水処理の起点となる貯留場所)へ移送
※2号機海水配管トレンチについては、海水配管トレンチの閉塞作業のため、2号機立坑Dにグラウトを充填する工事を予定している。グラウト充填工事に先立ち、2号機立坑Dと海水配管トレンチで繋がっている2号機立坑Cの水位を低下させるため、
3月12日午前10時8分、2号機立坑Cから海水配管トレンチ内の滞留水を2号機タービン建屋に移送開始し、同日午前10時23分移送終了。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月2日午前10時25分~)
※滞留水移送は稼働
◆3号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月11日午前10時48分~)
※滞留水移送は稼働
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~通算53回目となる海洋排出を開始
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日3月1日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
3月12日午前10時7分、海洋への排水を開始。同日午前10時15分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
3月11日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、一部実施できない箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
H4エリア ~汚れた雨水が流出した近傍の測定ポイント(地下水観測孔)では、E-9以外でも、これまで測定値が低かった複数の測定で全ベータが過去最高値
<最新のサンプリング実績>
地下水観測孔E-9を除き、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<E-8>過去最高値
全ベータ: 36 Bq/L
前回までの最高値は 26 Bq/L(平成26年6月11日)
<E-11>過去最高値
全ベータ: 170 Bq/L
前回までの最高値は 110Bq/L(平成26年2月5日)
E-1の全ベータ値
2月27日採取 14,000Bq/L ※前日までの動きとは桁違いに上昇
2月28日採取 4,100Bq/L ※一昨日のトレンドに戻る
3月1日採取 4,300Bq/L
3月2日採取 44,000Bq/L ※前日から10倍規模の上昇
3月3日採取 16,000Bq/L
3月4日採取 21,000Bq/L
3月5日採取 19,000Bq/L
3月6日採取 9,200Bq/L
3月7日採取 7,500Bq/L
3月8日採取 7,500Bq/L
3月9日採取 18,000Bq/L
3月10日採取 38,000Bq/L ※前日から2倍以上に上昇
3月11日採取 34,000Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
G-2のトリチウム値
2月25日採取 200Bq/L
2月26日採取 170Bq/L
2月27日採取 1,200Bq/L ※前日までとは桁違いに上昇
2月28日採取 610Bq/L ※前日から約半減
3月1日採取 220Bq/L ※急上昇以前の状態に近づく
3月2日採取 2,000Bq/L ※地下水バイパスの運票目標値をはるかに上回る
3月3日採取 1,600Bq/L
3月4日採取 1,700Bq/L
3月5日採取 900Bq/L
3月6日採取 960Bq/L
3月7日採取 4,800Bq/L ※前日までとは桁違いに上昇
3月8日採取 480Bq/L ※前日の10分の1に
3月9日採取 3,600Bq/L ※前日までとは桁違いに上昇
3月10日採取 1,100Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年3月12日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: