福島第一原発敷地内の土壌データは高止まり傾向

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福島第一原子力発電所内の土壌について、放射線核種(ガンマ線核種)の分析結果が発表された。土壌中のガンマ線核種、ストロンチウム、プルトニウムについて東京電力が定期的に行っている公表の一環。今回の発表でサンプルが採取された場所は、原発事故以降定点観測が行われてきた「グラウンド」「野鳥の森」「産廃処分場近傍」の3カ所で、サンプルの採取日は2014年10月13日、11月10日、12月8日だった。

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日
www.tepco.co.jp  

10月13日、11月10日、12月8日採取分(分析機関:株式会社 化研)

「福島第一原子力発電所構内における土壌中の放射性物質の核種分析の結果について(続報4)|東京電力 平成23年4月22日」(経産省のページ)より
「福島第一原子力発電所構内における土壌中の放射性物質の核種分析の結果について(続報4)|東京電力 平成23年4月22日」(経産省のページ)より

GoogleMapに位置を落とし込むと、下のような場所に該当すると考えられる。

上の図をGoogleMapに記載
上の図をGoogleMapに記載

いずれの場所も1・2号機の排気塔(Stack)から500メートルほどの距離とのこと。

ガンマ線核種で検出されているのは、セシウム-134とセシウム-137

「福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日」より
「福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日」より

今回の発表では2014年10月から12月までの土壌サンプル分析結果が示されたが、いずれの回でも検出された放射性物質は、セシウム-134(半減期約2年)とセシウム-137(半減期約30年)のみだった。

ちなみに原発事故後初めて発表されたガンマ線核種の土壌分析結果では、表示されるすべての放射性核種で数値が計測されていた。

2011年3月21日・25日・28日の「土壌ガンマ線核種分析結果」(http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110406v.pdf)より
2011年3月21日・25日・28日の「土壌ガンマ線核種分析結果」(http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110406v.pdf)より

放射能が検出された放射性核種は、ヨウ素-131、ヨウ素-132、セシウム-134、セシウム-136、セシウム-137、テルル-129、テルル-132、バリウム-140、ニオブ-95、ルテニウム-106、モリブデン-99、テクネチウム-99m、ランタン-140、ベリリウム-7、銀-110mの15種類に上った。

放射性物質が半分になるまでに要する半減期はセシウム134の約2年、セシウム-137の30年に比べて他の核種は数時間から数百日と比較的短いため、原発事故から4年近くが経過する中で、検出限界未満まで数値が下がってきたものと考えられる。

2014年10月~12月の土壌セシウム濃度

しかし、セシウム-134とセシウム-137は半減期が長い上に放出された量も多かったために現在でもかなりの量が検出されて続けている、と一般的に考えられている。

定点として観測されている3カ所のセシウム濃度を一覧表にした。東京電力発表の資料では、たとえば「8.5E+4」などと表記されているが、これは「8.5×10の4乗」の意味なので、通常の数値に置き換えた。単位はBq/kgで、サンプルは乾燥土壌とのこと。

「福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日」より
「福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日」より

セシウム-134の半減期は約2年なので、事故から4年近くの間に4分の1強の数値まで自然に減少していることが考えられる。それぞれの定点・サンプル採取日でセシウム-134とセシウム-137(こちらは半減期が30年と長いので、自然減衰はあまり考えなくても差し支えないだろう)を比較すると、概ね1対3.5~3.9程度の値になっているので、半減期の差によるセシウム-134の減少を示していると考えてよさそうだ。

しかし問題は、同じ定点での数値のばらつきが大きい点だ。野鳥の森の10月と11月を比べると、セシウム-134、137ともに約3倍の数値になっている。産廃処分場近傍の11月と12月を比べるとほぼ35%に減少している。同じ場所での変動率がほぼ同じということは、サンプリングのために実際にスコップなどで掘った場所によって、数値に大きなばらつきが生じる可能性を強く示唆している。

東電の発表資料によると「過去のサンプリングが重ならないよう隣接地を採取」しているという。すでに掘ったところから採取しては数値に差が出るという配慮だろうが、とはいえ何十メートルも離れた場所を掘っているとも考えにくい。

それが何を意味するか。「グラウンド」「野鳥の森」「産廃処分場近傍」といった一定のエリアの中でも、土壌に含まれる放射性物質の量には大きな差があるということだ。事故原発から500メートルの場所でも、この3カ月のデータで比較しただけで3~4倍のばらつきがある。(のみならず、事故直後のデータと比べても高い場合すらある)

このようなばらつき、あるいは依然として高い値が測定されているのはなぜだろう。原発の敷地の外側でも汚染程度のばらつきが大きいとされるが、関連はあるのだろうか。

私たちは原発で何が起きたのか詳細に知っているわけではない。たとえば、原発事故で放出された放射性物質がどのように飛散していったのかということですら、今後、より真実に近い新説が登場しないとも限らないのだ。

原発事故前のセシウムの数値

東京電力の発表には、表の下に評価が記されている。その内容は下記の通り。

2.評価
平成21年度に福島県で測定した土壌のガンマ線核種分析結果は以下の通りである。これと比較して高い濃度の放射性物質が検出されており,今回の事故による影響と考えられる。

<H21年度福島県による土壌分析結果>
Cs-137:ND~21Bq/kg・乾土, その他:ND

福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成27年2月5日

原発事故が発生する前は、セシウム-137について、検出限界値未満~最高で1キログラムあたり21ベクレル検出される程度。他の核種は検出限界値未満だった。

原発事故から3年半以上が経過した平成26年10月から12月までの3回のデータでは、セシウム-137の値は最小で9万4千、最大では54万ベクレルだ。

事故から4年が経過しても、汚染の程度は極めて高いままだ。そして、この発表はガンマ線核種についてのみのものだということも忘れてはならない。

◆過去約1年の「土壌中のガンマ線核種分析結果」。むしろ、以前の方が低かった??

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成26年11月28日
www.tepco.co.jp  

7月7日、8月14日、9月8日採取分(分析機関:株式会社 化研)

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成26年10月17日
www.tepco.co.jp  

4月14日、5月12日、6月11日採取分(分析機関:株式会社 化研)

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成26年8月20日
www.tepco.co.jp  

4月15日、6月10日、8月12日採取分

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成26年5月22日
www.tepco.co.jp  

2月10日、3月10日採取分(分析機関:株式会社 化研)

 福島第一原子力発電所 土壌中のガンマ線核種分析結果|東京電力 平成26年5月20日
www.tepco.co.jp  

H25年10月14日、12月16日、1月13日採取分(分析機関:株式会社 化研)

【まとめ】今日の東電プレスリリース「ここがポイント」
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