福島第一原子力発電所の高濃度汚染水タンクの周辺に設置された、水漏れ防止用の堰の外側に、全ベータ(ベータ線を出す放射性核種の合計)が極めて高い「水」が漏えいした。
ストロンチウム約100ベクレル超の「雨水」
3月10日付「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」に、こんな記載がなされていたのには驚いた。
<当該外周堰内雨水>
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:11Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17Bq/L)
ストロンチウム90:約100Bq/L超過(簡易分析)
「雨水」として発表された溜まり水のストロンチウム濃度が簡易分析で約100Bq/L超過とある。1リットルあたり100ベクレルを超える「水」が「雨水」であるというのである。
全ベータ8,300ベクレルの「雨水」
東日本大震災から4年となる3月11日には、さらに驚くべき事実が「日報」に記載される。なんと、全ベータが8,300ベクレルの「雨水」が見つかったというのだ。
全ベータとはベータ線を出す放射性核種の合計のことで、測定に時間がかかるストロンチウム-90の濃度を推量するために計測・発表されている。
1リットルあたり8,300ベクレルでも、東京電力では「雨水」と呼ばれる。常識的に考えて、雨水とは空の雲から降ってくる液体状態の水のこと。地表に雨水が溜まればそれは水溜り、溜まり水と呼ばれる。
まさか、東京電力福島第一原子力発電所では、空から8,300ベクレルの雨が降るというのだろうか。このような表現は風評被害を招きかねないので速やかに改めてほしい。
「雨水」であれば、もしも海に流れても不可抗力?
3月13日、「福島第一原子力発電所構内排水路のサンプリングデータについて」という書類が報道配布資料として公開された。資料には事故原発構内の太い排水路と構内を縦横に走る側溝や枝管の配置が示されている。薄い青のラインが排水路で、濃い青のラインは側溝や枝管とのこと。
東京電力の日報では、「建屋周辺に観測井を設置し、フォールアウトの影響について確認する」(平成26年2月26日付)など、フォールアウトなる言葉が時々登場する。フォールアウトとは通常「死の灰」という意味で使われる英語である。原子炉の爆発で噴き上げられた放射性物質が、事故原発の構内に降り積もっているというイメージだと考えられる。
そのような場所に雨が降る。仮に放射性物質が混ざっても、網の目のように張り巡らされた側溝から排水路に流れ込んで、最終的には海まで流出してしまいかねない。
東日本大震災から4年目に発表された8,300ベクレルの「雨水」と、この排水路網を重ねあわせて考えると震撼せずにはいられない。
8,300ベクレルでも「雨水」と呼ぶのであれば、事故原発に降る雨のすべてを汚染水として処理する必要があるのは、ごくごく常識的な論理の帰結するところであろう。
最終更新: