原子炉の内部にしかないはずのマンガン54が、海から20数メートルしか離れていない井戸で過去最高値
11月12日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を読み進めます。
※関連記事を作成し、リンクを追加しました。
建設中のJ4タンクエリアの発電機から火の粉
J4タンクエリア、火の粉発生現場の位置は上記を参照。正門や敷地境界にかなり近い場所だったことがわかる。(Google Mapのキャプチャ画面に東京電力が発表した資料の地図を合成)
※ 11月12日午前5時23分頃、構内のJ4タンクエリアに設置されているエンジン発電機から火の粉が発生していることを、協力企業作業員が発見。
このため、速やかにエンジン発電機を停止し、消火器による初期消火を行い、同日午前5時26分頃、火の粉の発生が止まっていることを確認。
なお、同日午前5時43分に双葉消防本部に連絡。
プラントデータ(炉注水流量、燃料プール水温等)の異常、モニタリングポスト指示値の有意な変動およびケガ人の発生は確認されていない。その後、富岡消防署による現場の確認結果により、同日午前8時41分に「火災ではない」と判断された。
東京電力では同日付で現場写真と状況を説明する参考資料を発表した。(左写真の消防服の人物は、防火服に東電のロゴが見えるので自主消防のスタッフと思われる)
極めて高濃度の汚染を示している1号機放水路立坑の測定結果。11月10日採取分
日報ではなく参考資料としての発表
<1号機放水路立坑水(上流側)11月4日採取分>
セシウム134:9,000 Bq/L
セシウム137:29,000 Bq/L
全ベータ:45,000 Bq/L
トリチウム:370Bq/L
<1号機放水路立坑水762,000 Bq/L
セシウム134:760 Bq/L
セシウム137:2,400 Bq/L
全ベータ:3,800 Bq/L
トリチウム:810 Bq/L
前回発表の数値は以下のとおり
<1号機放水路立坑水(上流側)11月4日採取分>
セシウム134:11,000 Bq/L
セシウム137:35,000 Bq/L
全ベータ:45,000 Bq/L
トリチウム:360Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)11月4日採取分>
セシウム134:2,000 Bq/L
セシウム137:6,200 Bq/L
全ベータ:8,800 Bq/L
トリチウム:760 Bq/L
1号機カバー解体工事に使用中の大型クレーンで作動油のにじみ発生
日報ではなく参考資料としての発表
福島第一原子力発電所 1号機原子炉建屋カバー解体工事
750tクローラークレーン(1号機)作動油のにじみの確認について
■概要
本日朝、1号機原子炉建屋カバー解体工事に使用する750tクローラークレーンの始業前点検を実施した際、油圧系統の配管からの作動油のにじみを確認した。
■対応
作業安全に万全を期す観点から、本日、750tクローラクレーンを使用する作業は中止した。今後、にじみ箇所の配管を交換、点検実施ののちに、750tクローラクレーンを使用する作業を再開する予定。
現時点では、にじみ箇所の配管の交換および点検実施は11月17日(月)の予定。
福島第一原子力発電所 1号機原子炉建屋カバー解体工事750tクローラークレーン(1号機)作動油のにじみの確認について|東京電力 平成26年11月12日
クローラークレーンとは、履帯(キャタピラ)で移動できるクレーンのこと。750トンは鉄道や橋梁の建設用以外ではかなり大きい部類らしい。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止
◆2号機
1号機と同じ4項目
※滞留水移送は停止
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~通算33回目となる海洋排出を開始
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日11月3日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、(既出)
11月12日午前9時57分、海洋への排水を開始。同日午前10時2分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月11日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~原子炉内で作られたマンガン54の値が海から20数メートルのウェルポイントで過去最高値を記録
※11月10日に採取した1,2号機ウェルポイント汲み上げ水について、マンガン54および全ベータの分析値が、前回値と比較して高い値で検出され、過去最高値となっている。当該汲み上げ水については、測定値の変動が大きい傾向にあることから、再度サンプリングを行い、異常のないことを監視していく。
<今回(11月10日)採取分>
・マンガン54:54 Bq/L〔前回分析値(11月3日採取):5.0 Bq/L)〕
・全ベータ :210万 Bq/L〔前回分析値(11月3日採取):23万 Bq/L〕
<参考:過去最高値>
・マンガン54:8.5 Bq/L(平成26年4月28日採取分)
・全ベータ :190万 Bq/L(平成25年9月23日採取分)
マンガン54は、鉄が中性子で照射されて生じる人工的につくられる放射性物質。軽水炉では配管や配管内の水に含まれる鉄から作られる。東京電力の古い資料(平成19年5月の「第48回「柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会」の説明資料)には、下記のように説明されていた。
マンガン 54、コバルト 58、コバルト 60
いずれも人工放射性物質(核種)であり、原子炉水中の不純物(鉄、ニッケル等の金属材料)の中性子照射による放射化生成物。マンガン 54 の半減期は約 312 日、コバルト 58の半減期は約 71 日、コバルト 60 の半減期は約 5.3 年。
今回検出された放射性物質の核種および半減期を考慮すると発電所に起因するものと推定される。
柏崎刈羽原子力発電所敷地内における環境試料(松葉)からの極微量な人工放射性物質の検出に 伴う追加調査結果について|東京電力 平成19年5月10日
核分裂で発生する中性子の照射によって生成される放射性核種なので、元々は原子炉内部内部にあったものと考えるほかない。そんなマンガン54が、何らかの経路で地下水にしみ出しているということだ。
210万ベクレルもの全ベータが計測されていることとも心配だ。かつて原子炉内部にあった核種が建屋地下に溜まり、それが護岸近くの地下水に流れ込んでいることは間違いなく、計測値の上昇傾向が続くようであれば、タービン建屋東側の地下水に対して、大量に汲み上げて処理するなど抜本的な対策が必要になる。
そうでなければ、事故原発の汚染をコントロールしていることにはならない。
<最新のサンプリング実績>
その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※リンクを追加しました。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月12日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: