地下水バイパス揚水井No.10のトリチウム濃度が上昇傾向(福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果による)
10月15日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
燃料デブリが臨界するのを防止するためのホウ酸水タンクの移設を開始
※原子炉圧力容器・原子炉格納容器内の臨界(核分裂反応)を防止する、または未臨界にするために設置している1~3号機のほう酸水注入設備のうち、ほう酸水タンクA,Bについては、現在アスファルト上に直接設置している。
万が一ほう酸水タンクに漏えいが発生した場合、貯蔵しているほう酸水が地下に浸透する可能性があることから、地下への浸透を防止する対策として、当該タンクに隣接するエリアにコンクリート製の堰(耐薬品性の塗料を塗布)を設置。
今後、ほう酸水タンクA,Bを順次、設置した堰内へ移設するが、この移設作業に伴い、ほう酸水タンクAに貯蔵しているほう酸水を、ほう酸水タンクB(予備)に移し替える作業を、10月15日午後0時44分に開始。
ほう酸水の移し替え作業時においては、特定原子力施設の保安第1編第23条に定める運転上の制限「ほう酸水タンクの水位及び温度が管理範囲内にあること」を一時的に満足できない状態となることから、
特定原子力施設の保安第1編第32条第1項(保全作業を実施する場合)を適用し、計画的に作業を実施する。
なお、堰内へほう酸水タンクA,Bの移設作業が終了する11月中旬頃、ほう酸水タンクBに移し替えたほう酸水を、ほう酸水タンクAに戻す作業を実施予定。
どうもよく分からない。少なくとも、新設した堰内に新たなタンクを設けてホウ酸水を移すという方法ではないらしい。
前日、報道配布資料として発表された資料を読んで、やっと納得できました。
【概要】
■1~3号機の原子炉の注水設備に燃料デブリが臨界に至った場合、または臨界の可能性がある場合に備えてホウ酸水タンク2基を設置している。
■水質汚濁防止法(環境省)の改定に伴い、ホウ酸水タンクに漏えい時の地下浸透防止対策として新たに堰(防液提)を設置する。
■ホウ酸水タンクの隣接地にコンクリート製の堰(防液提)を作り、タンクを順番に移設して順次ホウ酸水を移し替える計画。
■ホウ酸水の移し替え作業期間中は保安規定で定めるホウ酸水の水位および温度を一時的に維持できなくなることから、あらかじめ定めた安全措置を講じて作業を行う。
【スケジュール】
※現場作業の進捗等により、スケジュールの変更の可能性あり
■ 1回目:平成26年10月15日にホウ酸水の移し替え予定
■2回目:平成26年11月12日にホウ酸水の移し替え予定
10月15日に、タンクA→タンクBの移し替え。その後タンクAを移設して、
11月12日に、タンクB→タンクAの移し替え、ということらしい。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時46分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時5分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス ~揚水井No.10のトリチウム濃度が過去最高値
新規事項なし
揚水井の分析結果でNo.10のトリチウム濃度が過去最高の460Bq/Lを記録している。
継続して濃度が高めのNo.12、やや高めのNo.11と並ぶNo.10の濃度上昇は気になるところだ。
※東京電力によるトリチウム濃度の運用目標値は1,500Bq/Lで、濃度の低い他の井戸から汲み上げた地下水とブレンドしているので、地下水バイパスの一時貯留タンクのトリチウム濃度は低くなる。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月14日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
10月13日に採取された地下水観測孔No.1-6の分析結果で過去最高値が検出され、海洋への汚染の広がりが心配されるが、15日には該当する護岸の海水についての分析結果は発表されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年10月15日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: