動画で見ると一目瞭然だが、1月時点での流量は鉛筆2~4本なんてものではない。もっと滔々と流れているように見えるし、水の色も5月の映像では淀んだ錆色だったのに比べて透明度が高いように感じる。時間経過で水の量が減ったのか、あるいは水漏れの場所が他にもあるのか。線量が高い場所ではあるが、さらなる調査を希望したい。
根本的な疑問。水の出どころはどこなのか?
何より疑問なのは、主蒸気配管から漏れだしている水がどこから流れてきているのかという問題だ。
東京電力が資料等で示唆しているように、主蒸気配管Dの格納容器貫通部からの水漏れであれば、たしかにストーリーとしてはシンプルかもしれない。しかし、設計時点から弱点として意識されていたはずの配管貫通部(しかも主蒸気配管)が破損していたとすれば、その意味するところは極めて重篤だ。
さらに問題は、水漏れ箇所が格納容器貫通部と限定されたわけではないことだ。配管そのものが破損した可能性に注目すると、次のような問題が浮かび上がってくる。
6月10日に東京電力が公表した「福島第一原子力発電所の状況」によると、3号機への注水状況は「炉心スプレイ系:約2.3m3/h」「給水系:約2.0m3/h」でともに淡水を注入中とされている(1日に合計100トン強の注水量)。炉心スプレイ系というのは、圧力容器の上部から燃料棒がある(あった)場所にシャワーのように上から水を掛ける冷却系。給水系はお風呂に水を溜めるように圧力容器に水を入れる冷却系だ。
主蒸気配管のところで説明したように、主蒸気配管は圧力容器の上部に開口している。その場所はスプレイ系が設置されている場所よりも高い場所にある。ということは、スプレイ系の水が直接主蒸気配管に入ってきているとは考えにくい。もちろん圧力容器の下部に水を溜める給水系の水が、主蒸気配管の開口部まで上ることもありえない。
ということは、格納容器の中のどこかで主蒸気配管が破損していて、そこから炉心冷却水の一部が流れ込んでいる可能性を疑う必要が出てくる。
たとえ4本ある主蒸気配管の1系統だけからの漏水であっても、流れ出る水の量が鉛筆数本分の太さほどしかなかったとしても、格納容器内部で配管が破壊されている可能性が高いということだ。
原子炉の中のどこがどのように壊れているのか。燃料デブリはどのような状態でどこにあるのか。肝心のことはまったく分かっていない。辛うじて、格納容器の外側に水が漏れている場所が数カ所発見された。それが事故から3年3カ月近く経過した現在の状況だ。廃炉を進めるための道のりは長く険しいと言わざるをえない。
文●井上良太
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