4号機からの燃料移送が全体の半分を超えるも、新規事項の記載がなくても、さまざまなトラブルが発生していることが分かるこの日の日報
4月30日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
4号機プールからの燃料移送が全体の半分を超える
今週は水曜日の更新でした。
※4号機の使用済燃料プールから共用プールへの燃料移動については、4月29日に、移動を予定している1,533体の約半分となる770体の移送を完了。引き続き、安全を最優先に移動作業を進めていく。
使用済核燃料が保管される共用プール建屋の線量計3台が欠測していた件の続報
共用プール建屋に設置されている3台のエリアモニタ(雰囲気線量:放射線業務従事者などが作業する現場の空間線量を測定する装置)が欠測していることが、4月22日午後1時45分頃判明。4月19日から4月21日の3日間、1日1回の線量当量率の測定が行われていなかった。
発覚後の措置として、4月22日、手サーベイ(人間が直接現場に入って測定したということか)で当該エリア周辺の測定を行った。
欠測の原因は、制御盤改造工事のために当該エリアモニタの二重化された電源(A・B系)のうち、A系の電源を停止した際、B系の電源も一緒に停止していたとすでに報告されている。なぜA系の電源停止でB系まで停止したか、その原因について本日の日報に記載。
A系の電源を停止した際、B系の電源が一緒に停止した原因は、平成24年6月にエリアモニタB系を復旧した際、誤ってA系の電源を接続していたことによるものであると判明。引き続き調査を行っていく。
A系・B系と多重化した意味がありません。それより心配なのは、電源接続のミスが平成24年6月だったということ。ほぼ2年間にわたってそのままの状態だったわけです。その間、欠測はなかったのでしょうか? なかったというのならずっとA系のみの運用だったということになりますが。
4号機プールからの燃料取出しが全体の半分を超え、作業の進捗を労いたいその当日、関連する重要施設についてのあまりにお粗末なインシデントリポート発表。まったく間が悪い話です。
事故原発の収束を目指す作業は、たまたま偶然の幸運と、現場作業員の犠牲(インシデントやアクシデントが発生するたび放射能を浴びることになる)の上に辛うじて進められている、ぎりぎりの綱渡りなのだということが、改めてよく分かります。
1号機,2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
4月30日午後2時6分起動(起動後の温度:23.3℃)
4月28日午前6時34分の停止時温度は19.7℃。55時間32分間での温度上昇は3.6℃。
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
※ エリアモニタの件は冒頭に記載したからここでは新規事項としての記載なしということでしょうか。わからないでもありませんが、納得できないものも感じます。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ ALPSはいまも苦しい調整作業が続いているのですよね。
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では0.6cmの上昇、工作建屋では0.1cmの上昇。引き続き監視を継続。
4月30日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ18.2cm(4月14日移送停止後と比較し、0.6cm増)
・工作建屋:深さ5.1cm(4月14日移送停止後と比較し、0.1cm増)
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
4月29日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
4月28日に初めて採取した海水の調査地点、福島第一1号機取水口 (遮水壁前)の測定結果は以下のとおり。
<1号機取水口(遮水壁前):4月28日採取分>
・セシウム134:4.8 Bq/L
・セシウム137:13 Bq/L
・全ベータ:71 Bq/L
その他については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年4月30日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: