3月27日(木曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
多核種除去設備(ALPS)のA系でトラブルです。B系トラブルと同様の現象が発生した可能性が考えられるトラブルが報告されました。
処理を再開したばかりのALPS、A系で白濁水
※多核種除去設備(ALPS)では、汚染水処理設備にて処理した廃液を用いた試験(ホット試験)を行っており、A系については3月25日午後4時3分に運転を再開し、C系については同日午後4時5分に運転を再開したが、
本日(3月27日)午前10時28分、A系のブースターポンプ*1の出口側で採取した水が白濁していることを確認。
このため、A系について同日午前10時42分に処理運転から循環待機運転に切り替えを実施。
*ブースターポンプ:鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ
高濃度の汚染水を出したことで停止中のB系、その原因は前工程で沈殿させて取り除くはずのストロンチウムが、機械の不具合で後工程に流れ込んだことでした。
今回A系で見つかった白濁水は、前工程から後工程へ処理水を送り込むブースターポンプ。B系で起こったと考えられることが、A系でも起きた可能性が疑われます。
14基の吸着塔を汚染した上、ALPSの外まで汚染水が流れ出したB系に比べれば、吸着塔が並ぶ後工程の入口で問題発生を把握できただけでも大きな成果と言えるでしょう。
しかし、B系のみならず、A系でも同じトラブルが発生したのだとすると、ALPSの信頼性そのものを揺るがす重大な事態です。
詳細な原因解明と、同じトラブルを起こさないためのALPSの改造を急いでほしいと願います。
※ ALPSは放射性物質を除去する装置ではなく、特定の元素を化学反応によって分離するものです。
たとえばストロンチウムを例に挙げるなら、ウランが核分裂して生まれるストロンチウム90のみならず、天然にもっとも多く産出するストロンチウム88も、ストロンチウム87も86も84も、さまざまな同位体をぜんぶひっくるめて、ストロンチウムとしてのの化学的性質を利用して分離します。
化学についての知識やスキルを持つ技術者や、プラントの専門家、レアメタルなどの精錬についての知識を有する研究者、フィルタやポンプなどプラントを動かす機械系の技術者などの知恵を結集して、ALPSの信頼性を回復するための意義ある改造・改良を一日も早く成し遂げてほしいものです。
報道関係各位一斉メールで、ALPS、A系の続報
東京電力は報道関係各位一斉メールで、出口水の全ベータの分析結果と現場調査の内容について公表しました。
多核種除去設備(ALPS)A系のブースターポンプ1の出口側で採取した水が白濁していたことに関する続報です。
系統水の分析結果については、以下の通りです。
[3月27日採水]
・A系の系統出口水:全ベータ 5.0×10^2 Bq/L
・C系の系統出口水:全ベータ 2.7×10^2 Bq/L
A系の系統出口水の全ベータの値は、昨日(3/26)の分析結果(2.0×10^2 Bq/L)と比較しても、通常の変動の範囲内でした。
現場を調査したところ、A系の一部のクロスフローフィルタ(CFF)出口水において、白濁が確認されており、クロスフローフィルタから炭酸塩スラリーが透過している可能性があることから、引き続き原因調査を行います。
なお、現在処理運転中のC系の系統水については、白濁は確認されておりません。
以 上
炭酸塩沈殿処理でのクロスフローフィルタが原因である可能性が高まっています。確認されればB系と同じトラブルということになります。
※ スラリーとは、鉱物や泥などが混ざってどろどろした懸濁体(けんだくたい)。上澄みだけを後工程の吸着塔に送るべきところ、沈殿物が混ざってしまった可能性を示しています。
多核種除去設備(ALPS)サンプルタンクから漏えいした水の分析結果
3月24日にA,C系で浄化運転を開始した約6時間後、処理水をいったん貯蔵するサンプルタンク(C)側面のマンホールから水漏れが発見された件で、漏えいした水の分析結果が公表されました。
サンプルタンク(C)側面のマンホールから漏えいした水の分析結果は以下のとおり。
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.6×10^1Bq/L)
・セシウム137:2.7×10^1Bq/L
・ルテニウム106:7.3×10^1Bq/L
・アンチモン125:9.5×10^1Bq/L
・全ベータ:1.2×10^4Bq/L
・トリチウム:7.7×10^5Bq/L
これらの数値のうち全ベータを取り上げて、3月17日に採取された水の分析結果と比較すると、桁で2ケタ、数値で50倍程度の高濃度になっています。
・A系出口:2.7×10^2Bq/L(採取日:3月17日)
・C系出口:2.2×10^2Bq/L(採取日:3月17日)
これは、B系からの汚染水(3月17日午前10時45分採取分で1.4×10^7Bq/L)が残っていたところを、A,C系の処理水で希釈している過程だったと考えられます。
ちなみにサンプルタンク(C)の水を水中ポンプでサンプルタンク(A)に移送し、水位を下げたことで、マンホールからの漏えいは止まったとのことです。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機
1号機と同じ4項目に加えて、
タービン建屋地下からの高濃度滞留水を移送を記載。
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月27日午前9時49分~)
3号機
新規事項なし
1号機と同じ4項目に加えて、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
4号機
新規事項なし
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※ 3月26日に天井クレーンが走行不能になったはずですが、その件についての続報はなく、「燃料は移動中」と記載されています。
5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
昨日に引き続き非常用ディーゼル発電機の回路確認作業を行うため、89分間にわたり原子炉の冷却を停止したことを新規記載。今回は非常用ディーゼル発電機A系。
※5号機原子炉水冷却は残留熱除去系原子炉停止時モード(SHC)により行っているが、非常用ディーゼル発電機A系の論理回路確認試験を行うため、3月27日午前10時18分にSHCを停止。その後、作業が終了したことから、同日午前11時47分にSHCを起動。なお、原子炉水温度は28.6℃から28.9℃まで上昇したが、運転上の制限値100℃に対して十分余裕があり、原子炉水温度の管理上問題はない。
6号機
新規事項なし
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
◆共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
◇多核種除去設備(ALPS)はB系停止中。A系も停止。C系のみの浄化運転中。
2月に発生したタンク天板からの漏えい事故に対応し、淡水化装置のソフトウエア改善のために淡水化装置、第二セシウム吸着装置を停止したことを記載。
※H6エリアタンク上部天板部からの漏えい(平成26年2月19日発生)の対策として、淡水化装置制御盤の制御系(ソフトウェア)改善を行うため、淡水化装置を3月27日午前7時12分~午前11時50分、第二セシウム吸着装置を3月27日午前8時17分~午後0時57分に停止。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
3月26日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
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