3月22日(土曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
1号機~6号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3月14日午前6時48分、1号機使用済燃料プール代替冷却系について、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等を実施するため、冷却を停止(停止時プール水温度:12.0℃)。なお、停止期間は3月24日までを予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.066℃/hで停止中のプール水温上昇は約16.5℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題なし。
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆3号機
2号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
※ ABCの各系とも停止しているはずのALPSが、日報の上では今日も動いていることになっています。実際に動かしているとしたら、処理水をどこに移送しているのか、教えていただきたいものです。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
パトロールで、H4北エリアのH4-A-No.3タンクのマンホールのボルト1カ所に錆を発見。測定したところ高線量であったことを新規記載。
H4-A-No.3タンクは過去の東京電力のリリースを検索したところ、初出である可能性が高いと思われます。錆の原因がなんなのか、今後の発表内容には注視が必要です。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、同様の構造のタンクの監視、および詳細な調査を継続実施中。
<最新のパトロール結果>
3月21日午前中のパトロールにおいて、H4北エリアのH4-A-No.3タンクのマンホールのボルト1箇所に錆があることを協力企業作業員が確認。その後、当社社員により70μm線量当量率の測定を実施したところ、高線量箇所であることを確認。測定結果については、以下のとおり。
<H4-A-No.3タンク>
・70μm線量当量率(ベータ線): 150 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.15 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置
また、タンク目視点検において、当該箇所に漏えいは確認されておらず、当該タンクの水位監視においても、水位変動がないことを確認。
なお、それ以外の箇所において新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。
また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。
また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
「線量当量率」とは?
「線量当量率」という言葉について、東京電力の「電気・電力辞典」は次のように説明しています。
線量当量率
(せんりょうとうりょうりつ)
人間が単位時間当たりに受ける放射線によって現れる影響の度合いを現す単位です。この数値が大きくなれば、体に与える影響が大きくなります。 単位としては、Sv/h,mSv/h,μSv/hなどが用いられます。たとえば、1時間で1ミリシーベルトの被爆に相当する程度の放射線による影響の度合い(線量当量率)は、1mSv/hと表せます。
この説明だけでは「70μm線量当量率」「1cm線量当量率」についてよく分からないので調べてみると、次のページに詳しく解説されていました。
平成25年8月23日、H4タンクエリアで発生した汚染水漏えい後に実施された原子力規制委員会による「第4回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」の現地調査についての資料の10ページで、「1cm線量当量率」と「70μm線量当量率」をしっかり分けて考える必要があると強調されています。
◇1cm 線量当量は、がんや遺伝的影響など全身の「確率的影響」を防ぐ目的で、おもにガンマ線を測定するもの
◆70μm 線量当量は、皮膚障害、白内障などの「確定的影響」を防ぐ目的で、おもにベータ線を測定する。
対応する線量限度は、
◇1cm 線量当量:100mSv/5年かつ50mSv/年
◆70μm 線量当量:眼の水晶体 150mSv/年 皮膚 500mSv/年
1cm線量当量は「実効線量」、70μm線量当量は「等価線量」と呼ばれます。
※ 今回測定された数値が極めて高いこと、とくに70μm線量当量(等価線量)では1時間で線量限界に達するほどの高い線量だったことが理解できます。
東京電力では、新たな汚染源が発見された際には実効線量・等価線量による測定結果をまず公開しているようです。これは作業の安全性を確認する上で妥当だと考えます。
また、H4、H6エリアのサンプリング実績についても新規事項として記載。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
※H6エリアC1タンクからの漏えいを受け、H6エリアタンク周辺のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
最新のサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
最新のサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月22日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: