「いぬとわたし」にまつわる話を綴ります。
◆静電気の女
歳をとるとともに肌がカサカサしてしまいます。そうなると静電気もひどくなります。カサカサ予防に保湿クリームを塗ろう、その前に手を洗おうと水道のコックをひねり手を差し出すと、その流水と指先とでビリッと来たことさえあります。わたしは一体どうすればいいのでしょう。
さて、子どもの成長の様子を見ながらいつか犬を飼おうと決めています。それまでは近所のいぬに遊んでもらいます。すぐ近くに門扉の中で自由にしているかわいい雑種犬がいて、私たち夫婦はそこを通るたび柵越しにその犬を触ってはなごんでいました。
しかしあるとき、先日妻がいつも通り手を差し出すと、ビリッ!妻の指先と犬の鼻に静電気が走りました。 びっくりした犬はク~ンと鳴いて小屋へ入ってしまったそうです。あんなに仲良くしていたのに、それ以来その犬は妻の顔を見るとそそくさと逃げるようになってしまったそうです。
へーかわいそうに、なんて面白がっていた私が近づくと、これまで通りにしっぽを振って近寄ってくるではありませんか。「やっぱりかわいいな、この子」と思ったら、犬は何かを思い出したように踏みとどまり、後ずさりして近寄ってこないのです。
その時はたまたまかと思っていたのですが、それ以来その犬は私にも近づかなくなってしまいました。 どうやら 「そういえばこの男はあの静電気の女の仲間だ」 ということを覚えているらしいのです。 私も悪の一味になってしまったというわけですね。
一方的に見ているだけでじゅうぶんかわいい犬というのはそこらじゅうにいるのですが、いったんスキンシップを取れるようになった犬に「フラれる」というのはさびしいですね。静電気の女とその仲間はいったいいつ許してもらえるのでしょうか。
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