――では、世界を親子で旅されてきた森さんから「子育てに必要な力」について、読者の皆様へメッセージをお願いします。
以前、兄弟で鍛冶屋職人をしているお爺さんを仕事で取材したことがありました。小学校も満足に通えぬまま丁稚奉公に出されて以来ずっとカンコンカンコン毎日刃物を作ってきた彼らが、すごく幸せそうに「他に職業を選択?考えたこともない」「休むと具合が悪くなるから休まない」と笑って答えられたのが印象的でした。人は時代の中で、そうせざるを得ない状況というものに直面することもある。小さな頃から「あなたが好きなことを選択していい」と親が言わなくても、誰かの思惑では変えようのない、その子が持つ力や状況の中で人生を選択していくんだと思います。英語教育はもちろん大切ですが、まずは日本語を話す、書く、読む、が基本。物の考え方を作り、アイデンティティーを構築するのは日本語体験だと、旅を通して痛感しているんです。日本語のボキャブラリーを増やすと、心の表現が増え、自分の考えや、自分がどんな人間かもわかってくると思うんですよね。
編集後記
――ありがとうございました!森さんの親子旅推奨は、頭でっかちになりがちな子育てに陥りがちな時代へ一石を投じる、とても深いことを提示されている気がします。話し始めると前のめりになって聴き入ってしまうおもしろさは天性のものでしょう。文字だけでも熱い風を感じますが、ライブで聴けるとまた、心で感じることが多々あるはず。これからの活動も楽しみにしています!
取材・文/マザール あべみちこ
森優子が司会をつとめるトーク・イベント 【旅人の夜】。
4月開催のテーマは、難民や空爆報道が絶えないシリア。
平和だった頃と内戦勃発後、それぞれを知る二人の写真家をゲストに招きます。
『かつて美しかった国シリアに起こったこと~2009年と2012年の間~』