【重要】汚染滞留水の移送、制限水位を10センチも上回ってようやく気付くズサンさ
4月8日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
滞留水管理ができていないことを露呈。雑固体廃棄物減容処理建屋の滞留水水位が制限水位を超える。原因は杜撰な滞留水移送計画
4月8日午前7時の滞留水水位データを確認していたところ、雑固体廃棄物減容処理(以下、HTI)建屋の滞留水水位が2,861㎜に上昇していることが確認されたため、午前7時50分に実施計画III第1編第26条「建屋に貯留する滞留水」の表26-1で定める雑固体廃棄物減容処理建屋の滞留水水位の運転上の制限「T.P.2,754㎜以下」を満足できていないと判断。
なお、7時時点の当該建屋と周辺サブドレンの水位を比較したところ、周辺サブドレンの水位の方が高く、当該建屋水位補正後の水位差が3,909㎜あることを確認した。
7時59分に第二セシウム吸着装置を起動し、当該建屋の滞留水水位低下操作を開始した。
8時40分に雑固体廃棄物減容処理建屋の滞留水水位が低下傾向にあることを確認した。
高温焼却炉建屋の滞留水水位は、第二セシウム吸着装置の起動により、午後2時現在で「T.P.2,662mm」まで低下した。その後も低下が継続していることから、実施計画III第1編第26条「建屋に貯留する滞留水」の表26-1で定める高温焼却炉建屋の滞留水水位の運転上の制限「T.P.2,754mm以下」を満足していることを確認した。このため、午後2時30分に実施計画III第1編第26条に定める運転上の制限内への復帰を判断した。
なお、各建屋から高温焼却炉建屋への滞留水移送を停止したところ、高温焼却炉建屋の水位上昇が止まったことから、あらかじめ計画された各建屋から高温焼却炉建屋への滞留水移送によって滞留水水位が上昇したものと判断した。
各建屋から高温焼却炉建屋への滞留水移送計画が、高温焼却炉建屋の滞留水を処理する第二セシウム吸着装置の運転継続を前提として作成されていたが、第二セシウム吸着装置は、制御系点検後の試運転中であり、昨日の各建屋からの滞留水移送を開始した時点では、第二セシウム吸着装置が停止していたことから、高温焼却炉建屋の滞留水水位が計画以上に上昇したものと推定している。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
【整理】滞留水水位の運転上の制限「T.P.2,754mm以下」を超える「2,861mm」であることを確認。制限水位よりも「107mm」も超過しての対応とは驚くばかり。
建屋地下の滞留水の水位が上昇し、建屋周辺の地下水位より高くなると、建屋内の高濃度滞留水が地下水に漏れ出してしまうため、滞留水の水位は厳しく管理されているはずだった。(地下水位の方が高かったのは不幸中の幸い)
原因は滞留水移送計画のミス。しかも極めて初歩的なミスだ。建屋内の滞留水を第二セシウム吸着装置(サリー)で処理して減らしながら、1~4号機各建屋からの滞留水を移送するはずが、サリーが運転停止していたため水があふれるように水位上昇したのだという。
そもそも、アウトプット側を止めた状態で水を注げば水位が上がるなど、保育園のこどもでも分かることだ。
滞留水移送は現在自動化されているが、計画そのものが杜撰なものであれば、安全を確保するのは困難と言わざるをえない。有能な社員が揃っている東京電力で、このような考えられないミスが起きるとは、何か極めて重大な背景があるのかもしれない。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
・1号機原子炉建屋地下から集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
◎日報に新規事項の記載なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施
水処理設備および貯蔵設備の状況 第二セシウム吸着装置を「運転中」
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
その他の項目に新規事項の記載なし
・セシウム吸着装置運転中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備停止中
・高性能多核種除去設備停止中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクEから海洋排水を実施。排出量は721トン
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクEの分析結果[採取日3月31日]について、運用目標値を満足していることを確認。4月7日午前9時50分より港湾内への排水を開始。なお、排水状況については、同日午前10時に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、午後2時46分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は721m3。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクFから海洋排水を実施。排出量は665トン
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクFの分析結果[採取日4月1日]について、運用目標値を満足していることを確認。4月8日午前10時3分より港湾内への排水を開始。なお、排水状況については、同日午前10時22分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、午後2時36分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は665m3。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクGからの排水準備が進む
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクGの分析結果[採取日4月4日]について、運用目標値を満足していることを確認。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
※ 一時貯水タンクは浄化後のサブドレン・地下水ドレン水を海洋排出前に一時貯水するもので「サンプルタンク」とも呼ばれる。
サブドレン・地下水ドレン 集水タンクの分析結果(4月1日採取分)※トリチウム濃度が1,100Bq/Lに上昇
※ 集水タンクはサブドレン・地下水ドレンから汲み上げた水を浄化施設に送る前に貯えておくタンクのこと。
【注目】4月1日採取の集水タンクNo.2のトリチウム濃度が「1,100Bq/L」に上昇。東京電力の運用目標は1,500Bq/Lとなっている。
サブドレン・地下水ドレン 排水の分析結果(4月6日採取分)
地下水バイパス
◎日報に新規事項の記載なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月7日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
南放水口・排水路 原発構内の高台、タンクエリアへ排水路が流入する「B排水路ふれあい交差点近傍」の分析結果
◆H4エリア
◎日報に新規事項の記載なし
○H4エリア周辺地下水E-1<全ベータ>
4月06日採取分: 6,000Bq/L
4月05日採取分: 6,900Bq/L
4月04日採取分: 8,900Bq/L
4月03日採取分: 8,100Bq/L
4月02日採取分:11,000Bq/L
4月01日採取分:12,000Bq/L
3月31日採取分: 8,900Bq/L
3月30日採取分:14,000Bq/L
3月29日採取分: 7,800Bq/L
3月28日採取分: 6,500Bq/L
これまでの最高値:710,000Bq/L(2013.11.10)
◆H6エリア
◎日報に新規事項の記載なし
1~4号機タービン建屋東側 地下水観測孔No.1、No.1-14でストロンチウム-90が過去最高値
◎日報に新規事項の記載なし
<過去最高値>地下水観測孔No.1
ストロンチウム-90:17,000Bq/L(2016.03.01)
これまでの最高値:16,000Bq/L(2016.01.01/02.02)
<過去最高値>地下水観測孔No.1-14
ストロンチウム-90:79,000Bq/L(2016.03.01)
これまでの最高値:65,000Bq/L(2016.02.02)
地下貯水槽地下貯水槽漏えい検知孔、前回値との間で10%以上の変動
<最新のサンプリング実績>
4月6日に採取した地下貯水槽観測孔、地下貯水槽ドレン孔、地下貯水槽漏えい検知孔の水を分析した結果、地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側の全ベータ放射能が、前回値(3月30日採取)87Bq/Lに対し、8,100 Bq/Lに上昇していることを確認。その他の分析結果については、有意な変動は確認されていない。
4月7日、当該漏えい検知孔およびその周辺の地下貯水槽観測孔・ドレン孔について、試料の採取・分析を行う。
引き続き、地下貯水槽観測孔について監視を強化するとともに、全ベータ放射能が上昇した原因を調査していく。(既出)
4月7日に採取した地下貯水槽観測孔の水における全ベータ放射能を分析した結果、前回値(4月5日採取)と比較して有意な変動は確認されていない。
地下貯水槽観測孔の東側(海側)に位置する海側観測孔から採取・分析した水の全ベータ放射能についても、前回値と比較して有意な変動は確認されていない。
また、地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側において全ベータ放射能の上昇した件について、4月7日に採取した地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側、地下貯水槽i(ドレン孔水)南西側、近傍の地下貯水槽観測孔(A17)の水における全ベータ放射能を分析した結果は以下の通り。
・地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側 9,300 Bq/L
(前回値(4月6日採取)8,100 Bq/L)
・地下貯水槽i(ドレン孔水)南西側 検出限界未満(24Bq/L)
(前回値(3月25日採取)検出限界未満(20Bq/L))
・地下貯水槽観測孔(A17) 検出限界未満(26Bq/L)
(前回値(4月6日採取)43Bq/L)
また4月6日採取した地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側の水におけるトリチウム分析結果については、前回値(3月2日採取)検出限界未満に対し、3,100Bq/Lと上昇していることを確認。
4月7日に採取した地下貯水槽i(ドレン孔水)南西側、その他の観測孔および海側観測孔の測定結果に変動が無いことから、周辺環境への影響は無いものと考えている。
なお、地下貯水槽i(漏えい検知孔水)南西側は当面毎日、地下貯水槽i(ドレン孔水)南西側は週1回のサンプリングを継続していく。
引き続き、地下貯水槽観測孔について監視を強化するとともに、全ベータ放射能が上昇した原因を調査していく。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
※ 「有意な変動は確認されていない」とするものの、前回値との間で10%以上の変動が見られる。
1~3号機放水路
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月8日
構内排水路
関連データ(東京電力以外のサイト)
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