【防災週間】被災地支援に駆けつけるボランティアの受け入れ訓練

たとえ地図があったとしても町名や番地だけで目的地にたどり着くのは至難です。現場までの目印など念入りに説明してもらいましょう。どうしても分かりにくい場所だったりすると、ボラセンの人に案内してもらったり、前日などに近辺で活動した人とチーム人員をトレードしたりということもあります。

もうひとつ問題なのが交通手段。現地までどうやっていくのか。撤収はどうするのか。徒歩や自転車から、自家用車、ボラセンの人に送迎してもらう、あるいはバスによる送迎まで、交通手段もケースバイケースです。不安のないようにしっかり打ち合わせしておきましょう。

出発前に資機材の貸し出し

ここまでの事務的な手続きが完了したら、スコップや1輪車、軍手、土のう袋、場合によっては建設機械などの資機材の貸し出しを行います。マッチングの際に使ったシートに必要と思われる資機材が記載されている場合もありますし、状況によってはリーダーがチームやボラセンの人と相談して、追加したり減らしたりという場合もあります。他のチームの活動にも配慮しながら、資機材を借り受けてください。(とはいえ、行ったことのない現場での作業となると、どんな道具がいるか想像もつきませんよね。そんな時は同様の作業を経験した人をつかまえて聞いてみる。それでも現地で何かが足りなかったりした時には、チームのみんなの創意工夫で乗り切る。そんな現場力を発揮するのもボランティアの醍醐味のひとつです)

準備ができたら出発です。今日も1日、ご安全に!!

ニーズはどうやって集めるのか

ここまでは、被災地に支援にやってきたボランティアの側からボラセンを見てきましたが、活動する上で絶対に欠かせない「ニーズ」は、どこからやってくるのでしょう。

実はニーズは努力して集めるもの。空から自然に降ってくるものではないのです。

ボランティアセンターを立ち上げる社会福祉協議会や自治体とはいえ、すべての職員・スタッフが日常的に地域住民との関わりを持っているわけではありません。災害が発生した時には、住民からの要請を直接受けるほか、町内会や民生委員、警察や消防、地域を巡回する役場スタッフなど多彩なチャンネルから、どの地域、どこのお宅にどんなニーズがあるか、情報を吸い上げます。

ニーズとは、その地域、あるいはその人が「困っていること」です。しかし、困っていても「手助けしてください」と言えない人が多い、たいへん多いのです。

状況はほとんど良くなっていないのに、ニーズの件数が減ってしまい、せっかくボランティアが集まっているのに作業がないという状況も起こりえます。ニーズが枯渇しそうになった時には、ボランティア活動を休止する日を設けて、ボラセンのスタッフが総出で町をまわり、困ってるのに我慢している人たちのニーズを掘り起こすケースもあるくらいです。現場で作業をしていると、「ボラセンで事務仕事をしている人たちも肉体労働に駆り出せばいいのに」という人もありますが、地元のいち早い復旧のために、ボランティアを効率よく配置するというたいへん大切で、かつ困難な仕事にボラセンのスタッフは取り組んでいるのです。

作業終了⇒撤収⇒報告、そしてお疲れ様!

現地での作業が終了したら、依頼主さんに署名をもらいます。また作業が完了したか、継続して作業が必要か、その他の要望などを聞き取り、あるいは記入してもらいます。ここで依頼主さんとうまくコミュニケーションをとって、「実はボラセンには言ってなかったんだけど、こんな困ったことがあるの」とか、「うちはもう大丈夫だけど、3軒先のお宅は83歳のおじいちゃんの一人暮らしなのよね」といったニーズを聞き出すことができれば、ボラセンと連携してさらに活動を深めていくことができます。経験豊富なボランティアリーダーになると、活動のかたわら、休憩時間などに近所の聞き取りをして回る人もいます。「せっかくボランティアに来ているのだから少しでもその地域の役に立ちたい」という気持ちが、地域やボラセンのスタッフたちに届いて、うまく回るようになってくると、ボランティアとしての達成感は並大抵のものではないみたいですよ。世の中には「ボランティアのプロ」と呼びたくなるようなカッコいい人たちがたくさんいるのです。そんな人達と出会えるのも実はボランティアの喜びなのです。

作業を終了し、ボラセンに戻り、資機材を返却したら、最後の仕事は報告書の提出。報告書といっても堅苦しいものではなく、作業を進める上での問題点や、継続活動の場合の課題(スコップが足りなかったとか、人数が多すぎたとか)、新たに聞き取りしたニーズなどをボラセンのスタッフの人たちにバトンタッチしていく作業です。スタッフの人から「貴重な話をありがとう」と言ってもらえるとうれしいものですよ。

ボランティアの1日の作業はこれでほぼ終了です。あとは宿舎に帰るなり自宅に向かうなり、仲良くなった仲間と食事をするなりアフターの過ごし方はさまざまでしょう。ただ、覚えておいてほしいのは、ボランティアのみなさんが帰路についた後、ボラセンのスタッフたちは、翌日の作業内容を調整したり、適正な人数、資機材の配分について話し合ったり、ニーズのシートを作成したり、夜遅くまで作業を続けているということです。午前様も珍しくないと聞いたこともあります。

災害ボランティアに参加したら、被災した人たちのために働くのはもちろんのことですが、ボラセンの人たちを少しでもサポートできるように活動できたらいいな。

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日本列島全体が被災してしまうようなスーパー大災害でも発生しないかぎり、どんなに大きな災害であっても被災者より被災していいない人、つまり支援者になる可能性がある人の方がはるかに多いのです。

災害が発生した時には、自分自身やご家族など大切な人たちの安全を守ることが第一です。しかし、安全が確保・確認できて、人助けの余裕があったなら、ぜひ困っている人や地域の支援というアクションをとってほしいと思います。

それにしても――。訓練とはいえ、状況を想像しながら、出来るだけリアルな訓練になるよう努めていた三島市の災害ボランティア本部の方々には頭が下がる思いでした。きっと訓練の後も、延々と反省会議を続けたんだろうな……