5月13日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
5号機原子炉内の燃料が、制御棒が引き抜けても臨界しない配置になったと発表
※5号機の燃料集合体を原子炉内から使用済燃料プールへ移動する作業を2015年4月22日より行っていたが、5月13日午後1時10分、原子炉内の燃料配置が全市松模様の配置*となった。
*燃料集合体が格子状に規則的に並んだ炉心状態であり、全ての制御棒が全引き抜きされたとしても、再臨界にならない状態
福島第一原子力発電所では、1978年11月の3号機(5本)、79年2月の5号機(1本)、80年9月の2号機(1本)、98年2月の4号機(34本)と複数回にわたって制御棒が抜け落ちる事態が発生したとされる。そのうち78年11月の3号機は日本で初めての「最臨界事故」になったと言われるが、公表されたのは29年後の2007年3月のことだった。
日本では制御棒引き抜けによる再臨界事故は、1999年6月に北陸電力の志賀原発(石川県)にも発生している。
燃料移動時には原子炉圧力容器の蓋も、格納容器の蓋も取り外されているため、無防備な状態であるため、連鎖反応が起こりにくい燃料配置にしたものと理解できる。
1号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水の移送を停止
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水を移送実施(2015年5月12日午前11時47分~5月12日午後2時53分)
※滞留水移送は停止中
2号機~6号機
新規事項なし
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年5月11日午後2時32分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年5月11日午後2時38分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・原子炉から使用済燃料プールへ燃料移動中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス ~海洋への排水を開始(通算63回目)
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日5月1日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
5月13日午前10時13分、海洋への排水を開始。同日午前10時38分に漏えい等の異常がないことを確認。
地下水バイパス揚水井分析結果(5月11日採取分)
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
5月12日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<H4周辺地下水E-1の全ベータ値>
4月21日採取 15,000Bq/L
4月22日採取 8,300Bq/L
4月23日採取 5,800Bq/L
4月24日採取 5,400Bq/L
4月25日採取 4,700Bq/L
(中略)
5月6日採取 5,900Bq/L
5月7日採取 6,500Bq/L
5月8日採取 6,500Bq/L
5月9日採取 5,800Bq/L
5月10日採取 5,800Bq/L
5月10日採取 6,200Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<H6周辺地下水G-1のトリチウム値>
3月17日採取分で過去最高値 3,400Bq/Lを記録して以来、それまでの週1発表から毎日発表になっている。
3月17日採取 3,400Bq/L
(中略)
4月21日採取 990Bq/L
4月22日採取 1,500Bq/L ※かなりの上昇
4月23日採取 1,500Bq/L
4月24日採取 2,100Bq/L
4月25日採取 980Bq/L
4月26日採取 2,000Bq/L
4月27日採取 760Bq/L ※雨は降っていないのに大きく増減
4月28日採取 1,000Bq/L
4月29日採取 550Bq/L
4月30日採取 360Bq/L
5月1日採取 270Bq/L
5月2日採取 250Bq/L
5月3日採取 300Bq/L
5月4日採取 320Bq/L
5月5日採取 320Bq/L
5月6日採取 180Bq/L ※減少傾向は見られるものの変動幅が大きい
5月7日採取 210Bq/L
5月8日採取 180Bq/L
5月9日採取 180Bq/L
5月10日採取 120Bq/L
5月11日採取 210Bq/L
※ 3月10日(最高値の前回測定)の値は 480Bq/L
3月3日はND(検出限界値:10Bq/L)
<H6周辺地下水G-2のトリチウム値>
4月20日採取 380Bq/L
4月21日採取 2,500Bq/L ※大幅に上昇
4月22日採取 2,000Bq/L ※若干減少
4月23日採取 310Bq/L
4月24日採取 300Bq/L
4月25日採取 330Bq/L
(中略)
5月6日採取 250Bq/L
5月7日採取 190Bq/L
5月8日採取 160Bq/L
5月9日採取 240Bq/L
5月10日採取 200Bq/L
5月11日採取 300Bq/L
※G-2のトリチウム値は、タンクからの汚染水漏れが発生から約1か月後の平成26年3月24日・25日に記録した7,000ベクレルがこれまでの最高値だが、27日には660ベクレルまで減少していた。
<H6周辺地下水G-3のトリチウム値>
漏洩タンクから最も遠いG-3もトリチウム値が上昇
4月27日採取 400Bq/L
4月28日採取 200Bq/L
4月29日採取 310Bq/L
4月30日採取 320Bq/L
5月1日採取 280Bq/L
5月2日採取 320Bq/L
5月3日採取 350Bq/L
5月4日採取 370Bq/L
5月5日採取 360Bq/L
5月6日採取 280Bq/L
5月7日採取 290Bq/L
5月8日採取 370Bq/L
5月9日採取 330Bq/L
5月10日採取 290Bq/L
5月11日採取 350Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆採取日 (5月4日)→(5月6日)→(5月8日)→最新(5月11日)
<1号機放水路立坑水(上流側)>
セシウム134: 14,000 Bq/L → 13,000 Bq/L → 13,000 Bq/L → 11,000 Bq/L
セシウム137: 49,000 Bq/L → 48,000 Bq/L → 45,000 Bq/L → 41,000 Bq/L
全ベータ: 58,000 Bq/L → 57,000 Bq/L → 53,000 Bq/L → 49,000 Bq/L
トリチウム: 360 Bq/L → 370 Bq/L → 380 Bq/L → 320 Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)>
セシウム134: 950 Bq/L → 930 Bq/L → 1,000 Bq/L → 990 Bq/L
セシウム137:3,400 Bq/L → 3,500 Bq/L → 3,800 Bq/L → 3,600 Bq/L
全ベータ: 6,000 Bq/L → 6,300 Bq/L → 5,400 Bq/L → 6,100 Bq/L
トリチウム: 1,600 Bq/L → 1,700 Bq/L → 1,500 Bq/L → 1,500 Bq/L
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成27年5月13日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
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